ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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アースバインダーの帰還#4

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────カル=ニシオ(ヒューマノイド、イサナミ自治区、九尾衆 二尾大隊直属 キヨスミ研究所・所長)


 生きとるうちに、こないなもん見られるとは思うちょらんかった。

 リシアさんところで、ホムンクルスの開発資料の再現に成功したらしい。

 あまりにも高度すぎて原理が理解できん領域がたくさんあったが、それはそういうもんとして言及せずに素直に見れば、なるほどよくできちょる。

 しかも心のケアを目的に開発されたもんだというのも納得した。

 精神状態の状態が安定しちょればホムンクルスの出生率が減り、不安定な場合は出生率が上がり社会全体の心のケアが手厚くなる仕組みじゃ。

 ラフィノス公国すら存在しなかったはるか大昔に天変地異が起きた際、先史時代の高度文明で開発されたシルフィードが異常な状態で起動されたせいで、精神状態が不安定な社会に追い打ちをかけるような擬似生命体と化したらしい。
 
 
 ウチらの仕事は、この技術を応用して人間の遺伝情報の修復方法を確立することじゃ。かなり前からコウメイに頼んどった案件がこの資料のおかげで大幅に進展するじゃろう。
 予想より大幅に早く実用化できそうだとよろこんどった。

 シルフィードの製造と評価は、ラフィノス公国で行うらしい。
 ラフィノス公国内部に建設済みの隔離施設に精神汚染された人間を大量に集めて、ホムンクルスの本来の性能を評価するそうじゃ。

 元老院にも別の依頼が来たそうじゃ。

 ウチらの住む世界は、本来の3分の1程度しかないそうじゃ。
 強力な結界を張って、空間を捻じ曲げることで、小さな球体状の世界と思わせられていたらしい。
 残り3分の2には、悪霊なるものが生息しちょるのじゃとか。

 ラフィノスで討伐を続けておるらしいが、とにかく人手が欲しいそうじゃ。
 もしハウントが残っておってもイサナミ使いには憑依しないらしいので、安心して結界の向こうで、悪霊狩りができるのじゃとか。
 しかも、悪霊を狩るとノル=バイナリーが入手できるので、それを報酬の代わりにしたいとのことじゃった。

 セイゲンの話では、悪霊はそれほど脅威ではないが大量におるのが厄介らしい。
 ただし、ノル=バイナリーが大量に確保できるのでかなりうまい仕事だといっておった。

 セイゲンが結界の向こうの世界に残されていた、先史時代の高度文明の遺産をいくつか持って帰ってきてくれだが、異なる自然法則で動作していたとしか思えない構造で、なんの役にもたたんかった。

 リシアさんが来た時に、質問してみたら、それらが動作していた時代の自然法則に関する資料を取り寄せてくれた。
 
 先史時代の高度文明が存在していた頃は、かなりの高次元空間だったことがわかった。

 大昔に起きた天変地異とは、この世界が低次元化したことらしい。

 当時は、人間以外の知的生命体もおったようじゃが、低次元化したことによって、存在できずに滅びてしまったようじゃ。
 
 ときどき視察にくるメイリンさんは、最近はいろいろなことを教えてくれるようになった。近いうちに全てを知らされることになるから、情報の開示制限がかなり緩くなったそうだ。

 とくにウチら学者には事前に知っておいて欲しいようじゃ。


 メイリンさんが話してくれた、彼女の生い立ちを聞いて腰を抜かしそうになった。
 イサナミ自治区の出身者で、初代清鳴シンメイじゃというのじゃ。
 生命体としての進化を続け、最高位次元世界へと到達したのじゃとか。
 もう、訳がわからんかった。

 この世界は、70に別れた大地の一部だそうで、現在は、再統合の準備が整い、最高位次元の世界へと再統合を実施している真っ最中なのだとか。

 この世界が統合されるのはまだ先だが、自然法則が大幅に変わるので、現状の機材はほぼ間違いなく破壊され役に立たなくなるんじゃとか。
 どちらの世界でも動作する機材の技術提供が近いうちに始まるそうじゃ。
 学者連中には、早めに基本原理を理解させた方がよいとのことじゃ。

 なるほど、ラフィノスからきとった連中は、その最高位次元の住人じゃったわけか。
 それでようやく納得できた。
 しかも、人間ではなく別の高次元生命体じゃったらしい。
 この世界に来るときは間に合わせの人間の肉体を作り遠隔操作していたそうじゃ。
 メイリンさんやリシアさんもそういうことらしい。

 ギアとよばれちょる最高位次元の世界は、人間が生身で生きるには厳しすぎる世界のようじゃ。
 うちらの世界は、全体をさらに強力な結界で覆い、人間ための特別区画となることが決まったそうじゃ。
 ギアで生活している人間も大量におるようで、その何割かはこちらへ移住するかもしれんらしい。
 詳細は不明じゃが、高次元種族へ生まれ変わる道も提供されるようじゃ。


 他の世界も含めて、近いうちに人間たちは大きな選択に迫られることになるじゃろな。

 人間の国家なんぞが何を言っても意味のない巨大すぎるバケモノの世界の仲間入りをさせられるのじゃ。

 人間の為政者どもは、是弱すぎる身の程を嫌という程、味あわさせることになるじゃろな。
 それ以前に既存の国家そのものが無意味になるかもしれん。


 ウチは立場上なんとなくきづいとったが、現実味を帯びて来ると、さすがに怖くなってきちょる。
 せめてもの救いは、今後も、イサナミ自治区は優遇されるっちゅうことじゃ。
 イサナミ自治区がなければ、この大地から人間が追い出されておっても不思議ではなかったらしい。
 
 人間は、戦争やいさかいなんぞやっとる暇はなかったっちゅうこっちゃ。
 理不尽なまでに強力で狡猾な種族を相手に生き抜く術を身につける努力をせにゃぁあかんかったんじゃ。

 先行開示されてくる情報を見るたびに、恐ろしくなるぞい。
 ウチらは強力な保護者に守られて生きとったってことが、身にしみてわかる。


 元老院の連中も、かなり混乱しちょるようじゃ。

 リシアさんやメイリンさんがくると質問ぜめじゃ。
 仕事にならんから、ラフィノス公国からすぐに大使が派遣されて来おったが、それでも混乱は治っとらんようじゃ。

 いまさら、混乱してもどうこうなるもんじゃなかろうに。
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