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再会と暗雲
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エッタとιは、王都の冒険者ギルドにきていた。
応接室に通されると、そこには貴族の令嬢のような赤いドレス姿のεが恥ずかしそうに立っていた。
「普段は侍女の格好をしてるのだけど、友人に会うと言ったら、無理やりおめかしされちゃった……」
淡いピンクに彩られた艶やかな唇から、εは言葉を発した。
口調こそ昔のままだったが、かなり躾けられたのだろう、その姿と身のこなしは淑女そのものだ。
エッタとιはしばし、その美しさに見惚れていた。
「と、とりあえず、座ろうか」
εはそう言うと、優雅にソファーに座った。
エッタとιも我に帰り、ソファーに座った。
エッタが口を開いた。
「まず、私から説明させて。
その前に、ε、本当に御免なさい。
私ひどいことしちゃったよね……もう会ってくれないと思ってた。
今回は会ってくれてありがとう」
そして、エッタは、ηの伝言と今の状況、ιと一緒にいる経緯などを話した。
ιが口を開いた。
「ε、もし、サキュバスと戦ってる理由が、アタシとηと合流するためのものだったら、すぐにやめていいんだよ。
アタシ心配だよ。何度も危険な目に遭ってるのでしょ?
もういいの、無理しなくて。
アタシはそれを直接伝えたくてエッタについてきたの」
εが答える。
「ありがとう、ι。
確かにきっかけはそうだったけど、今はこれが天職だとおもってる。
だから俺はこれからもこのまま冒険者を続けるつもりだよ」
「そっか、εがそう言うのなら、アタシはもう大丈夫。
でも、何かあったらいつでもアタシの移動民族の姉妹を頼ってね。
εならいつでも大歓迎だからね。
アタシはεのこと妹だって思ってるから。
でも、ユニコーンに乗れることが条件だから、気をつけてね」
「うん。そのときはよろしく。
でも、大丈夫、まだ頑張れるから。
ιも困ったことがあったらいつでもいいから俺を頼ってね
俺もιのこと姉だって思ってるから」
「わかった、ありがと。
あとは、エッタのことだね」
「……」
エッタは気恥ずかしそうに黙っていた。
「もう、焦ったいんだから、早く言っちゃいなよ」
「ん?」
εが不思議そうにした。
エッタは意を決した様に口を開く。
「……あの……あのね…私……その……εと一緒にいたいの。
今までのことは許してもらえるとは思ってない。
でも、貴女の一番近くにいたいの。
もう、貴女とはなれたくないの……一緒にいさせてくれる?
……その、……こい……相棒として!」
エッタは真っ赤な顔をして俯いてしまった。
ιはニヤニヤしていた。
εは不思議そうにエッタを見つめていた。
エッタが続けた。
「だめ……かな?」
εは何かに納得した様に言った。
「相棒か、エッタなら大歓迎だよ。俺も一人だといろいろ大変だったし。
でも、普段は宮廷暮らしだから息が詰まっちゃうかも。
それでもいい?」
エッタは感極まって泣きそうになりながら言う。
「うん……ほんとに私でいいの?」
「うん、もちろんだよ。頼りにしてる」
「ありが……とう」
エッタは、号泣した。
ιがエッタを抱きしめながら言う。
「よかったね、エッタ。
思いは通じてない気もするけど……。
でも安心したよ。無鉄砲なεに信頼できる相棒ができて。
ε、エッタを大切にしなよ。
エッタを泣かせたら私が許さないんだから」
「わかった。大切にする。約束する」
その後、3人でたくさんの話をした。
ひと段落つくとιが言った。
「アタシは、そろそろ帰らなくちゃ。姉妹達が心配してるからね。
くれぐれもユニコーンに乗れなくならない様にしてね!
またね。いつでも遊びにきてね。二人とも、お幸せにー!」
そう言うと、ιは、それぞれとハグしてから、応接室から出て行った。
エッタはεのそばに寄り添う様に立つと、恥ずかしそうに手を握った。
「どうしたの? エッタ」
「これから、よろしくね。絶対二人で幸せになろうね」
「う、うん、よろしく……」
εが訝しげに答えた。
エッタはεの正面に片膝をつき、ε手を取ると、手の甲にキスをした。
「εのことは、私が絶対に守るからね」
εはワケがわからず絶句した。
エッタは立ち上がると、嬉しそうにεを抱きしめた。
……
魔界では、サキュバス・クイーンの会合が開かれていた。
まさかアロンダイトまで倒されてしまうとは予想外だったのだ。
大事な戦力を失ってしまったため魔王の機嫌も悪い。
今後、前線の兵士を召喚することはできないだろう。
「詰んだわね……」
「なに弱音を吐いてるのよ。状況を分析して仕切り直しましょう。
私たちの使命は、後方支援。
王国を裏から弱体化させること、それはよろしいかしら?」
「そんなことわかってるわよ」
「その点については、かなり成功してると考えていいと思うの」
「まぁ、たしかに。今でも国力の低下にはかなり貢献しているわよね。
でも、それがεを放置して良い理由になるの?」
「そうでなければ、今頃、みんな魔王様に切り捨てられてるはずよ。
評価はされているってことなの」
「なるほどね。でもこれ以上、効率はあげられないわよ。
εがいる限り」
「そうね。でもすぐに対処できる問題ではない。
それは魔王様もご承知でしょう。
私達がここまで苦戦しているのだから」
「それで?」
「まず、ε以外のことで、手付かずの領域を全てつぶしてしまいましょう」
「具体的には?」
「南部の中立地帯の遊牧民族達の強大な兵力を北上させることはできないかしら?」
「魔界に属さないサキュバス達の領域よね。彼女達は遊牧民族達と良い関係を保ってるって聞いたけれど?」
「まずそこを崩しましょう。成功すれば南北から王国を挟み撃ちにできるでしょ?」
「人心を惑わすことに頭が回らず、馬鹿正直に娼館を経営したり、純血を守ってその日暮らしの生活をしている連中なんて、簡単に崩せるでしょ?
王国にサキュバスを送りつづけてεに倒され続けるくらいなら、南部に送って、軍勢を北上させるほうがよっぽど建設的だと思うのよ。
南部なら冒険者ギルドも手が出せないし」
「たしかに。以前から計画だけはあったけれど、王国に手いっぱいで手が出せない状態だったわよね。試してみる価値はあるかもしれないわね。どうかしら?」
「そうね、同じことを続けていても、現状、解決策は見えていないワケだしね」
「では、そういうことで」
「「「ごきげんよう」」」
……
ιが移動民族の姉妹の元に戻って程なく、不穏な噂を聞く様になった。王国軍が南下して、砂漠地帯シャマールを王国に併合しようとしていると。
最近は柄の悪い王国からの旅行者も増え、都市国家の雰囲気がどこどなくピリピリし始めている様子だった。奴隷制の廃止、遊牧民族や移動民族の排斥・差別などを煽動するモノ達の中に、王国の兵士が混ざっているという噂もよく耳にする様になった。
いくつかの都市国家では、活動家に大量の武器が運び込まれているところを摘発した際、王国の兵士が多数関与していることが判明していた。
また、王国の南部国境付近では、関所が強化され、南部の民の出入りを拒否する例も増えていた。
王国軍の影が現実味を帯び始めてくると、都市国家だけでなく、遊牧民族達も、王国に対して警戒する動きがで始めた。
頻繁に首脳会議が開かれ、情報が共有されはじめると、さらに多くの事例が判明した。
戦好きの遊牧民族達は、すでにシャマールの北部に集結し始めていた。
先走らない様に、都市国家の首脳達が押さえつけている状況だが、もはやいつ戦端が開かれてもおかしくない状況にあった。
対する王国側は、万一に備えて、南部国境付近の防御を固めつつも、使者を派遣し、争う意志がないことを、丁寧に示して回っていた。
そんな時だった。
20名程度の遊牧民族の一団が、王国の南部国境の関所を制圧したあと、近郊にある集落で虐殺を行ったのだ。
そして、近くにいた王国軍の兵士がそこに駆けつけ、遊牧民族を撃退した後、南下して、近くのオアシスを制圧して住民を虐殺、火を放ち、水源に猛毒をまいた。
この事件を機に、遊牧民族は歯止めが効かなくなった。
王都への進軍を開始したのである。
……
サキュバス・クイーンの会合は、以前の緊迫した空気とは一転して和やかだった。
「思いの外、うまく行ったわね。こんなことならもっと早く実行すべきだったわ」
「そうね。しかも今回は最小限のサキュバスの煽動で済んでるから、煽動者を倒しても戦争は終結しない。εの出番なんてないわね」
「魔王様の評価も上々。遊牧民族は王都を目指して被害を広げながら順調に北上中。
王都が陥落したら褒賞が授与されちゃうかも?」
「絶好のチャンスだから、ついでに都市国家の調略を進めちゃいましょう。南部を手に入れれば大きなアドバンテージができるわよ」
「それと、王国軍の武器や兵糧を、遊牧民族と南部の都市国家に横流しさせるようにしましょう」
「では、そういうことで」
「「「ごきげんよう」」」
応接室に通されると、そこには貴族の令嬢のような赤いドレス姿のεが恥ずかしそうに立っていた。
「普段は侍女の格好をしてるのだけど、友人に会うと言ったら、無理やりおめかしされちゃった……」
淡いピンクに彩られた艶やかな唇から、εは言葉を発した。
口調こそ昔のままだったが、かなり躾けられたのだろう、その姿と身のこなしは淑女そのものだ。
エッタとιはしばし、その美しさに見惚れていた。
「と、とりあえず、座ろうか」
εはそう言うと、優雅にソファーに座った。
エッタとιも我に帰り、ソファーに座った。
エッタが口を開いた。
「まず、私から説明させて。
その前に、ε、本当に御免なさい。
私ひどいことしちゃったよね……もう会ってくれないと思ってた。
今回は会ってくれてありがとう」
そして、エッタは、ηの伝言と今の状況、ιと一緒にいる経緯などを話した。
ιが口を開いた。
「ε、もし、サキュバスと戦ってる理由が、アタシとηと合流するためのものだったら、すぐにやめていいんだよ。
アタシ心配だよ。何度も危険な目に遭ってるのでしょ?
もういいの、無理しなくて。
アタシはそれを直接伝えたくてエッタについてきたの」
εが答える。
「ありがとう、ι。
確かにきっかけはそうだったけど、今はこれが天職だとおもってる。
だから俺はこれからもこのまま冒険者を続けるつもりだよ」
「そっか、εがそう言うのなら、アタシはもう大丈夫。
でも、何かあったらいつでもアタシの移動民族の姉妹を頼ってね。
εならいつでも大歓迎だからね。
アタシはεのこと妹だって思ってるから。
でも、ユニコーンに乗れることが条件だから、気をつけてね」
「うん。そのときはよろしく。
でも、大丈夫、まだ頑張れるから。
ιも困ったことがあったらいつでもいいから俺を頼ってね
俺もιのこと姉だって思ってるから」
「わかった、ありがと。
あとは、エッタのことだね」
「……」
エッタは気恥ずかしそうに黙っていた。
「もう、焦ったいんだから、早く言っちゃいなよ」
「ん?」
εが不思議そうにした。
エッタは意を決した様に口を開く。
「……あの……あのね…私……その……εと一緒にいたいの。
今までのことは許してもらえるとは思ってない。
でも、貴女の一番近くにいたいの。
もう、貴女とはなれたくないの……一緒にいさせてくれる?
……その、……こい……相棒として!」
エッタは真っ赤な顔をして俯いてしまった。
ιはニヤニヤしていた。
εは不思議そうにエッタを見つめていた。
エッタが続けた。
「だめ……かな?」
εは何かに納得した様に言った。
「相棒か、エッタなら大歓迎だよ。俺も一人だといろいろ大変だったし。
でも、普段は宮廷暮らしだから息が詰まっちゃうかも。
それでもいい?」
エッタは感極まって泣きそうになりながら言う。
「うん……ほんとに私でいいの?」
「うん、もちろんだよ。頼りにしてる」
「ありが……とう」
エッタは、号泣した。
ιがエッタを抱きしめながら言う。
「よかったね、エッタ。
思いは通じてない気もするけど……。
でも安心したよ。無鉄砲なεに信頼できる相棒ができて。
ε、エッタを大切にしなよ。
エッタを泣かせたら私が許さないんだから」
「わかった。大切にする。約束する」
その後、3人でたくさんの話をした。
ひと段落つくとιが言った。
「アタシは、そろそろ帰らなくちゃ。姉妹達が心配してるからね。
くれぐれもユニコーンに乗れなくならない様にしてね!
またね。いつでも遊びにきてね。二人とも、お幸せにー!」
そう言うと、ιは、それぞれとハグしてから、応接室から出て行った。
エッタはεのそばに寄り添う様に立つと、恥ずかしそうに手を握った。
「どうしたの? エッタ」
「これから、よろしくね。絶対二人で幸せになろうね」
「う、うん、よろしく……」
εが訝しげに答えた。
エッタはεの正面に片膝をつき、ε手を取ると、手の甲にキスをした。
「εのことは、私が絶対に守るからね」
εはワケがわからず絶句した。
エッタは立ち上がると、嬉しそうにεを抱きしめた。
……
魔界では、サキュバス・クイーンの会合が開かれていた。
まさかアロンダイトまで倒されてしまうとは予想外だったのだ。
大事な戦力を失ってしまったため魔王の機嫌も悪い。
今後、前線の兵士を召喚することはできないだろう。
「詰んだわね……」
「なに弱音を吐いてるのよ。状況を分析して仕切り直しましょう。
私たちの使命は、後方支援。
王国を裏から弱体化させること、それはよろしいかしら?」
「そんなことわかってるわよ」
「その点については、かなり成功してると考えていいと思うの」
「まぁ、たしかに。今でも国力の低下にはかなり貢献しているわよね。
でも、それがεを放置して良い理由になるの?」
「そうでなければ、今頃、みんな魔王様に切り捨てられてるはずよ。
評価はされているってことなの」
「なるほどね。でもこれ以上、効率はあげられないわよ。
εがいる限り」
「そうね。でもすぐに対処できる問題ではない。
それは魔王様もご承知でしょう。
私達がここまで苦戦しているのだから」
「それで?」
「まず、ε以外のことで、手付かずの領域を全てつぶしてしまいましょう」
「具体的には?」
「南部の中立地帯の遊牧民族達の強大な兵力を北上させることはできないかしら?」
「魔界に属さないサキュバス達の領域よね。彼女達は遊牧民族達と良い関係を保ってるって聞いたけれど?」
「まずそこを崩しましょう。成功すれば南北から王国を挟み撃ちにできるでしょ?」
「人心を惑わすことに頭が回らず、馬鹿正直に娼館を経営したり、純血を守ってその日暮らしの生活をしている連中なんて、簡単に崩せるでしょ?
王国にサキュバスを送りつづけてεに倒され続けるくらいなら、南部に送って、軍勢を北上させるほうがよっぽど建設的だと思うのよ。
南部なら冒険者ギルドも手が出せないし」
「たしかに。以前から計画だけはあったけれど、王国に手いっぱいで手が出せない状態だったわよね。試してみる価値はあるかもしれないわね。どうかしら?」
「そうね、同じことを続けていても、現状、解決策は見えていないワケだしね」
「では、そういうことで」
「「「ごきげんよう」」」
……
ιが移動民族の姉妹の元に戻って程なく、不穏な噂を聞く様になった。王国軍が南下して、砂漠地帯シャマールを王国に併合しようとしていると。
最近は柄の悪い王国からの旅行者も増え、都市国家の雰囲気がどこどなくピリピリし始めている様子だった。奴隷制の廃止、遊牧民族や移動民族の排斥・差別などを煽動するモノ達の中に、王国の兵士が混ざっているという噂もよく耳にする様になった。
いくつかの都市国家では、活動家に大量の武器が運び込まれているところを摘発した際、王国の兵士が多数関与していることが判明していた。
また、王国の南部国境付近では、関所が強化され、南部の民の出入りを拒否する例も増えていた。
王国軍の影が現実味を帯び始めてくると、都市国家だけでなく、遊牧民族達も、王国に対して警戒する動きがで始めた。
頻繁に首脳会議が開かれ、情報が共有されはじめると、さらに多くの事例が判明した。
戦好きの遊牧民族達は、すでにシャマールの北部に集結し始めていた。
先走らない様に、都市国家の首脳達が押さえつけている状況だが、もはやいつ戦端が開かれてもおかしくない状況にあった。
対する王国側は、万一に備えて、南部国境付近の防御を固めつつも、使者を派遣し、争う意志がないことを、丁寧に示して回っていた。
そんな時だった。
20名程度の遊牧民族の一団が、王国の南部国境の関所を制圧したあと、近郊にある集落で虐殺を行ったのだ。
そして、近くにいた王国軍の兵士がそこに駆けつけ、遊牧民族を撃退した後、南下して、近くのオアシスを制圧して住民を虐殺、火を放ち、水源に猛毒をまいた。
この事件を機に、遊牧民族は歯止めが効かなくなった。
王都への進軍を開始したのである。
……
サキュバス・クイーンの会合は、以前の緊迫した空気とは一転して和やかだった。
「思いの外、うまく行ったわね。こんなことならもっと早く実行すべきだったわ」
「そうね。しかも今回は最小限のサキュバスの煽動で済んでるから、煽動者を倒しても戦争は終結しない。εの出番なんてないわね」
「魔王様の評価も上々。遊牧民族は王都を目指して被害を広げながら順調に北上中。
王都が陥落したら褒賞が授与されちゃうかも?」
「絶好のチャンスだから、ついでに都市国家の調略を進めちゃいましょう。南部を手に入れれば大きなアドバンテージができるわよ」
「それと、王国軍の武器や兵糧を、遊牧民族と南部の都市国家に横流しさせるようにしましょう」
「では、そういうことで」
「「「ごきげんよう」」」
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