刺朗

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三次元のエピローグ③

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今井の豹変に驚いた伊藤は
「どうされたんです?」
と思わず問いかけた。
ゆっくり頭を上げた今井は
「彼が【その子】なんですよ」
と、隣の中井を見て言った。
「え?」
伊藤は時間の経過を感じた。
この青年が?
「じゃ、川田が言っていた少年はやはりここにいたんですか?」
伊藤の問いに
「そうです、彼、中井知之こそが河川敷にいた少年なんです」
と今井は応えた。
「しかし今井さん、あなたは当時の彼にしつこいくらい確認したと言いましたよね?」
と、伊藤が聞くと今井は
「それは本当です。そして彼が心当たりがないと言い続けたのも本当です。ただ、今になって…」
「今?何があったんです?」
「彼が告白を始めたんですよ」
そう言って中井を見る今井の視線に、伊藤の視線が重なった。
ふたりの視線を受けた中井は、メモ用紙に
(申し訳ありませんでした。私が真実を言えなかったばかりに事件は時効になってしまいました。本当にすみません)
と書いて差し出し、唇をギュッと結んだ。
「真実?」
伊藤の言葉に、中井は頷いた。そしてメモに筆記した。
(怖かったんです。私は河川敷で見たあの凄惨な光景と、その時の川田の冷めた眼、その後の川田の脅す声に怯えました。私が言葉を失ったのも、その怯えが原因でした)
「ではあなたは、河川敷でやはり川田の犯行を見たんですね?」
伊藤と中井の問答が続いた。
(はい、川田は我が子を殺しました)
「確かですね?」
(はい。私が悪いんです。可愛さのあまり、あの子の頭を掴んでしまったから。
私は不器用なんです。頭を撫でてやるべきなのに、撫でられないんです。掴むしか出来ないんです)
「掴んだことが何を起こしたんですか?」
(川田の狂気を呼んでしまったみたいなんです)
「話を戻しますが、あの日、あなたは河川敷に行ったんですね?」
(はい、行きました。あそこが好きだったんです)
「景色が?」
(景色…違いないですが私は、あそこには親子連れが多い、そんな光景が好きだったんです)
「それはなぜ?」
(親に疎まれていたから)
そこで今井が言葉を挟んだ。
「彼のような子供は、親がとことん守るか疎んじるかのどちらかなんです。彼の場合は残念ながら後者で、ですから彼は、この施設で寝起きしていました。親が言わば育児放棄したんですね。ですから私は、彼を自分の子供として育てて来ました。ただ彼はどこまでも実の親を慕っていたんですね。だから親子が多いあの河川敷に通ったんだと思います」
今井の話の間、中井はずっと下を見ていた。
「中でも川田の奥さんと、その子供にとても惹かれたようで、いつの間にか親しくしてもらっていたようです」

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