上 下
26 / 43

アメリア視点

しおりを挟む
 学園を卒業するまでにあと一週間となった頃、第二王子殿下から知らせが来た。他の貴族連中はあらかた片付いたので、ここもトドメを刺すらしい。

「メアリー、メアリーはいるか!」
「はい~、ここにいますよ、お義父様~」
「メアリー、第一王子との関係は良好か?」
「はい~、以前、プロポーズをされました~」
「そうか、そうか。これで俺も…ぐへへへ」

 この私の目の前にいる気持ちの悪い笑いをしているのが、ブルーム男爵家当主です。男爵のくせに隣国に唆されて、非現実的な夢を持ってしまった哀れな男です。もうそんな夢が叶うことはないというのに、ほんと、可哀想な人。まあ、どうでもいいのですけどね。

「それにしてもローズ家は厄介だな。早く第一王子が潰してくれないものか…」
「…そんなことできるわけないじゃないですか。本当に愚かな人ですね」
「なっ、メアリー、どういう…」
「動くな」

 影の先輩方がブルーム男爵家当主を囲む。喉にはナイフが突きつけられている。こんな状況なのに、彼はまだ怒鳴る元気があるみたいですね。

「メ、メアリー。こいつらは誰だ!」
「影ですよ。王族直属の。あなたも知っているでしょう?」
「何を。それにその喋り方はなんだ。まさか!お前、裏切ったのか!」
「裏切ったとは心外ですね。あなたは第二王子殿下を味方だと思っていたのかもしれませんが、あの腹黒王子はあなたのことなんて信用していませんでしたよ。残念でしたね」
 
 第二王子殿下とこの男が取引していた内容は、私を養子とする代わりに、私が第一王子と付き合うことができれば、相応しい家柄を用意するということでした。
 二つ返事で了承していたのですが、もちろん、この取引には裏がありました。

 一つ目は私が学園に貴族として入学できること。これは私が第一王子との恋仲を発展させ、ソフィア様から婚約を解消させること。
 そして、二つ目はこのブルーム男爵が隣国とのきな臭い取引がされている証拠を掴むこと。商人をいくら捕まえても、大本を捕らえないと意味がないため、内側から調査すること。

「アメリア、お疲れ様です。今日までよく耐えましたね」
「先生…ダメですか?」
「ダメですよ。彼にはいろんなことを話してもらわないといけないのですから」
「…わかりました。私はこれからどこへ行けばいいのですか?」
「私と一緒に来てもらいます。次はそこでお仕事です」
「わかりました」

 これでようやく私の仕事は終わりました。あとはあの腹黒王子がなんとかするのでしょう。

 次は直接ソフィア様に関われる仕事がしたいです。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:683

待ち遠しかった卒業パーティー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,166pt お気に入り:1,287

お飾りの妻が幸せなわけありませんよね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:791

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:15,904pt お気に入り:935

【完結】やり直そうですって?もちろん……お断りします!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:169

羊の皮を被っただけで

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:220

魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,776

処理中です...