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リオン視点7

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 シェリア嬢の言う通り、アリシアには他の女性と分けるように呼んでいたのだが伝わっていなかった。

 その事に焦った私は思わず、愛称で呼ばせてほしいと頼んでしまう。その時の彼女の顔はとても暗い顔をしていた。
 違う、私はそんな顔をさせたいわけじゃないんだ。

 アリシアが申し訳なさそうに断ろうとしているのを遮る。王族としてはあり得ない事だとわかってはいるが、どうしても黙っていられなかった。

「私はアリシアの事をリーアと呼びたい。私だけの、特別な呼び方で呼ばせてほしい」

 その途中にシェリア嬢が乱入してくる。もしかして、この時を見計らっていたのではないのかと、疑ってしまいたくなるくらいだった。

 そういえば、アリシアにはどこまで伝わったんだ? 慌ててアリシアを見る。彼女は涙を流していた。

 私はまた何かを間違えたのか? 何かを言わなくては……だが、何を言えばこれ以上アリシアを悲しませずに済むのだろうか。
 そう考えていると、シェリア嬢達が心配している中、アリシアは涙を流しながら私を見る。

「リオン様、私……とっても嬉しいです」 

「「「「「……ッ」」」」」

 アリシアは、いや、リーアは泣きながら笑っていた。だが、その笑顔はあの時見た……アリーシャ殿に褒められた時と同じ、私が見惚れた笑顔だった。

 治療室にいる私を含めた五人は、リーアの笑顔に絶句してしまう。それほどまでに、彼女の笑顔に引き込まれてしまう。

 しばらく経った後、ようやく各々が動き始めた。

「……驚きました。アリシア様が泣かれていると思ったら、あんな……あんな笑顔を……私、忘れられそうにありませんわ」

「私も……ルーシア様と同じです。忘れられません」

 今回、リーアの笑顔を初めて見たためか、一番影響を受けた二人が感想を述べる。まぁ、当の本人はわかっていなさそうだが……

「あのー、殿下……そろそろ昼食時間が終わってしまうのですが……」

 治療室にいた担当医が頼み事を終え帰って来る。どうやら、ここで結構な時間を過ごしていたみたいだ。

「ああ、すまなかったな。みんなは先に戻っていてくれ。私は彼と少し話がある」

「……わかりましたわ。後で軽食でも買う事にしましょう。さぁ、みんな行きましょ」

 シェリア嬢が察してくれたのか、みんなをまとめて治療室から出て行く。
 みんなが出ていくのを見送り、レオスが扉を閉める。

「さて、ローア・メディカ……どうだった?」

 彼、メディカ子爵家の次男には、リーアに突撃して来た女の治療を頼んでいた。
 それは、万が一、リーアも彼女が治療室で鉢合わせしないようにするためともう一つ、彼女が私やリオンを狙う理由を知れるのではないかと考えたからだ。

「どうだと言われましても、彼女は何をしたんですか?」

「……突撃しようとして、転んだだけだよ」

「それはまた……お転婆と言うべきでしょうか……この学園でも平民のようにする子もいるんですね」

「それで、何もなかったのかい?」

「何も……リオン様から派遣されて来たと言えば喜んでいましたよ? やっぱり私の事を考えてくれているのね――みたいな事を言っていました。後は……私の顔をじっくりと見て名前を聞かれました」

「名前を?」

「はい。それでローアだと答えると、嘘……こんないべんと? なんて知らない――とかなんとか言った後に、やたらとベタベタして来て迷惑でした」

 本当に嫌そうな顔で答えるローア。嘘を言っても仕方がないが、もう少し取り繕うという事を覚えた方が良さそうだ。
 それにしても、私とレオスに近づいてくるのは、私たちの家柄を気にしているのかと思っていたが、子爵家である彼も狙うのは少々予想外だ。

「そうか、君にも来たか」

「君にも……もしかして、殿下はこうなる事を知っていたんですか!? やめてくださいよ。僕にはようやく婚約してくれた彼女がいるんですから!」 

「すまない。彼女が君に近づいたのは予想外だった。彼女は私やレオスに執着していると思っていたんだが、どうやら違うみたいだ」

「申し訳ありません、僕……」

「気にしなくていい。それに、今回は私が悪かった。巻き込んでしまってすまない。何かあったら、私の名前を使うといい。必ず助けになろう」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、私もそろそろ行くとしよう」

 治療室を出て、溜息をつく。

「アレが狙うのは後何人でしょうか?」

「わかるわけないだろ。それに、この国は一夫多妻でもなんでもないんだ。女一人に男が何人も一緒にいる理由が分からん」

 だが、レオスの言う通り、もうすぐ一年が過ぎる。そうすれば今度は下級生がやって来る。

「はぁ、リアム兄様が卒業すれば、その分も私に回って来るというのに、さらに下級生もか……早急に纏めれる人物を探し出さないとな……三年は頼むぞ、レオス」

「勿論です」

 丁寧に臣下の礼をするレオスを横目に、これからの事を考える。とりあえず、彼女には自由にしてもらっては困るな。今は彼女たちがついているが、やれやれ、どうなることやら……

 はぁ、二年になると忙しくなりそうだ。
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