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何のために
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王族に近づかなかったと思う。その言葉はリリアの本心から来た言葉だった。
嘘偽りも取り繕いもなく、シェリアもリリアもお互いが真剣に、これからの国を、そこにいる自分について話し合っている。
「私は貴方に王妃になって欲しい。あなた以外に相応しい人は居ないと思っているわ。だからこそ、白紙の話が出た時に私が渋ってしまったの……ごめんなさい」
「……頭を上げてください」
正直、渋っているのは陛下か王妃様だとは思っていました。だからそれほど驚く事ではありません。
「ですが、婚約の白紙を渋っていたのは兄上も同じでは?」
「……あの子は妙に勘がいい時があります。もしかすると、自分の身が危ないと思ったのかも知れません」
いいえ、アレはそんなことを考えられるような頭も勘もありません。考えているのは向こうから拒否をすれば自分が有利になるということだけ……あれ? これでも賢い方なのでは?
「これからが本題です。リリア、アウレウスとの婚約を白紙にし、アインと婚約を結んでくれませんか?」
「私を王妃とし、王をアイン様にするということですか?」
「はい。この国のためにも、貴方のためにもこれが1番だと考えています。もちろん、貴方に変な噂が立たないよう、持てる権力の全てを使うと約束します」
この国のため……それだけなら分かる。アレを国王にしてはいけない。そんなことをすれば国庫はすぐに底を尽きるでしょう。そうすれば民は……1番の犠牲になるのは民です。それだけはあってはなりません。
しかし、王妃様は私のためとも言いました。それは本当に?
「私のためとおっしゃるのであれば、どうして2年前にこの事を話してくれなかったのですか? 2年前の私が理解できないと思ったからですか?」
「違うわ!」
そうですよね。私を教育したのは2人……お母様と王妃様なのですから。私の理解力なんてわかっているはずです。このぐらい理解していた事に……
「では! 私は何のために我慢してきたのですか! 会った日の5年間。そこに文句を言うつもりはありません。ですが、王妃様が私と距離を置いた2年間。その間にアレが何をしていたか、して来たか言えますか! その度に相手をしていた私の苦労がわかりますか! 城から出さないようにすることぐらいできましたよね!」
リリアはアレの事でシシリアに怒っているわけではない。外出を控えさせることは難しいのはわかっているし、いちいち構っていられるほど暇な方々ではないことも知っている。知ってはいるが、どうしても自分のためと言われると我慢ができなかった。
その前に出来ることがあっただろう、と。
「私は王妃様の教えを今でもよく覚えています。『国民のため、相手のためになる行動を心がけなさい。そうすれば、いつかは自分に返ってくるでしょう。ですが、それは難しいことです。自分が善かれと思ってしたとしても相手にとっては余計な事かもしれません。ですが、それでも行動しなさい。そうすれば貴方を見てくれる人がきっと貴方を助けてくれるはずです』そう言っていましたよね」
「ええ……」
「では王妃様は、王妃ではなくシシリア様として、アレの母親として、アレのために行動したことってなんですか? 2年間私のためと思って行動して来たことはなんですか?」
「……ッ!」
「申し訳ありません。出過ぎた真似を……。今回の件、少し考えさせてください。では失礼します」
リリアは固まっている2人に一礼をし、部屋から出る。今回は止めるものは誰もいなかった。
リリアがお城を出るまで、多くの使用人達とすれ違う。すれ違ったものは皆、今日のお茶会はリリアにとって良いものだったのだろうと思うだろう。それほどまでにリリアは笑顔を浮かべていた。
しかし、クリスティーナがここにいれば違う事を思っただろう。『お姉様が本気で怒っている』と。
嘘偽りも取り繕いもなく、シェリアもリリアもお互いが真剣に、これからの国を、そこにいる自分について話し合っている。
「私は貴方に王妃になって欲しい。あなた以外に相応しい人は居ないと思っているわ。だからこそ、白紙の話が出た時に私が渋ってしまったの……ごめんなさい」
「……頭を上げてください」
正直、渋っているのは陛下か王妃様だとは思っていました。だからそれほど驚く事ではありません。
「ですが、婚約の白紙を渋っていたのは兄上も同じでは?」
「……あの子は妙に勘がいい時があります。もしかすると、自分の身が危ないと思ったのかも知れません」
いいえ、アレはそんなことを考えられるような頭も勘もありません。考えているのは向こうから拒否をすれば自分が有利になるということだけ……あれ? これでも賢い方なのでは?
「これからが本題です。リリア、アウレウスとの婚約を白紙にし、アインと婚約を結んでくれませんか?」
「私を王妃とし、王をアイン様にするということですか?」
「はい。この国のためにも、貴方のためにもこれが1番だと考えています。もちろん、貴方に変な噂が立たないよう、持てる権力の全てを使うと約束します」
この国のため……それだけなら分かる。アレを国王にしてはいけない。そんなことをすれば国庫はすぐに底を尽きるでしょう。そうすれば民は……1番の犠牲になるのは民です。それだけはあってはなりません。
しかし、王妃様は私のためとも言いました。それは本当に?
「私のためとおっしゃるのであれば、どうして2年前にこの事を話してくれなかったのですか? 2年前の私が理解できないと思ったからですか?」
「違うわ!」
そうですよね。私を教育したのは2人……お母様と王妃様なのですから。私の理解力なんてわかっているはずです。このぐらい理解していた事に……
「では! 私は何のために我慢してきたのですか! 会った日の5年間。そこに文句を言うつもりはありません。ですが、王妃様が私と距離を置いた2年間。その間にアレが何をしていたか、して来たか言えますか! その度に相手をしていた私の苦労がわかりますか! 城から出さないようにすることぐらいできましたよね!」
リリアはアレの事でシシリアに怒っているわけではない。外出を控えさせることは難しいのはわかっているし、いちいち構っていられるほど暇な方々ではないことも知っている。知ってはいるが、どうしても自分のためと言われると我慢ができなかった。
その前に出来ることがあっただろう、と。
「私は王妃様の教えを今でもよく覚えています。『国民のため、相手のためになる行動を心がけなさい。そうすれば、いつかは自分に返ってくるでしょう。ですが、それは難しいことです。自分が善かれと思ってしたとしても相手にとっては余計な事かもしれません。ですが、それでも行動しなさい。そうすれば貴方を見てくれる人がきっと貴方を助けてくれるはずです』そう言っていましたよね」
「ええ……」
「では王妃様は、王妃ではなくシシリア様として、アレの母親として、アレのために行動したことってなんですか? 2年間私のためと思って行動して来たことはなんですか?」
「……ッ!」
「申し訳ありません。出過ぎた真似を……。今回の件、少し考えさせてください。では失礼します」
リリアは固まっている2人に一礼をし、部屋から出る。今回は止めるものは誰もいなかった。
リリアがお城を出るまで、多くの使用人達とすれ違う。すれ違ったものは皆、今日のお茶会はリリアにとって良いものだったのだろうと思うだろう。それほどまでにリリアは笑顔を浮かべていた。
しかし、クリスティーナがここにいれば違う事を思っただろう。『お姉様が本気で怒っている』と。
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