純愛夢見エロス 〜夢の中で、ヤりましょう〜

秋風いろは

文字の大きさ
31 / 52

19.公園

しおりを挟む
「桜ちゃん? もしかして、甘いの苦手?」

 しまった。沈黙しすぎた。
 心配そうに聞かれてしまった。

「ううん! 大好きだよ。ごめん、感動しすぎて泣きそうになっちゃった。そう言えば、料理するって言ってたもんね。お菓子も作れるなんて尊敬する」

 彼はホッとしたようにカップケーキを取り出して、私に手渡してくれた。

「大したことないよ。家にある材料で作った、普通のカップケーキだし。3つあるから、ここで1つ食べてく?」
「うん、食べる! すごいよ、十分。3つあるなら斉藤くんも一緒に食べよ?」

 私だけもぐもぐするのは、ちょっと恥ずかしい。

「俺は1つ食べてきたし、全部あげようと思ったんだけど」
「それなら、あと1つ食べたら2つずつだよ? 斉藤くんより多いのは気が引けるし、一緒に食べたいな。お腹いっぱいなら私、もらっちゃうけど」

 斉藤くんは、うーんと悩む素振りをした後に、「じゃ、食べよっかな」と言って、もう1つ取り出した。

「じゃぁ、いただきます」

 そう言って、パクリとかぶりつく。
 ふわりと滑らかな舌触りで、甘くて美味しい。

「しっとりふわふわ、すっごく美味しい。幸せすぎて、もう人生に悔いなしだよ」

 もうこの世に満足して、成仏してしまいそうなほど、私の心もふわふわしている。

「まだまだ人生長いのに、何言ってるの」

 愛おしい人を見るような目で笑いながら、私の口の少し下に手を伸ばされる。
 人差し指で拭うようにされた後、指についたカップケーキの欠片を、パクリと彼が食べた。

 食べカスがついてたんだー!!!
 恥ずかしい。
 その上、それを取って、食べちゃうとか。

 バカップルだ!
 バカップルでしょ!
 紛うことなき、バカップルでしょ!
 ヤバい。
 このままバカップル道を、突き進んでしまいそう。

 嬉しくてドキドキする気持ちと、まさか自分がバカップルのような行為をするとはという気恥ずかしさと、それすらも幸せに感じてしまう頭のおかしさに身悶えしてしまう。

 ここは冷静にならなくてはと「ありがとう」と小さく言って、もう一口食べてふと前を向くと、知り合いと目が合った。

 か、か、か、楓だーーーー!!!

 公園の入口近くから、固まったようにこちらを見ていた。
 ボーイッシュな服に、癖っ毛な髪がうねっている。どう見ても、楓だ。

 そう言えば、楓はこの団地に住んでるんだった……。

 今のイチャイチャ、見られたかなと焦りながら、手を振ってみる。
 ハッとしたようにワンテンポ置いて、手を銃の形にしてこちらをバンと撃つ真似をしてから、バイバイと手を振って立ち去っていった。

「楓に見つかっちゃったね」
「柚木さん、この辺なの?」
「うん、この団地に住んでるよ」

 大体の方向を指差す。

「そっか、同じ中学の奴も結構住んでるのかもな。他にも見られたかも」
「嫌だよね、やっぱり」
「いいや。見られてたほうが、気分いいな」
「気分いいの?」
「もちろん。牽制になるだろ? 女子だったとしても、他の男子に言っといてくれるかもしれない」

 あっははと笑って、残りのカップケーキを食べる。
 ずっとずっと、これからもずっと、こんな会話ができる関係でいたい。

「同じ中学だった友達から、見かけたよーって、付きあってんのって聞かれたら、なんて言うの?」

 またずるい質問をしてしまった。
 ずるすぎて、自分にうんざりする。

「そうだな。付きあってるって言っちゃうかもな。他の奴の可能性は潰しておきたい」
「なんか、顔こわいよ?」
「ワンチャンあるかもと思われるケースを想像したら、ムカついたんだよ」
「そんな風に思われるほど、モテないって、私」

 何がどうしてどうなって、こんなに好かれたんだろう。

「でも、楓に見られたってことは、明日付きあってるのって聞かれるかもなぁ。なんて答えたらいい?」

 また、ずるい質問だ。
 ゆっくりと仲良くなりたいって言ってくれたのに、関係性を決めさせようとしている。

「いいよ、付きあってるって言って」
「いいの?」
「どうせ言うなら、他の男に聞こえるように言って」
「あっはは、また言ってる。私、モテないから大丈夫なのに」

 いつの間にか、2人ともカップケーキを1つずつ食べ終わってしまった。

 彼は、私の手からカップケーキを包んでいた薄い紙を抜き取ると、別のビニール袋に入れて、携帯用の小さなウェットティッシュを私に渡した。

「い……至れり尽くせりだね。斉藤くんと仲良くなる女子、みんな斉藤くんを好きになっちゃいそう。今、危機感を感じたよ」
「他の子には、やらないって」
「いやいや、ナチュラルにやっちゃいそう。ちょっと結婚の予約しといていいですか?」
「ははは」

 くすくす笑いながら、「ハイ」と残りのカップケーキが1つ入った紙袋を手渡される。
 今日の逢瀬は、もう終わってしまう。テスト勉強という現実に戻らなければならない。

 どちらともなく立ち上がり、手をつなぎたいなと思ったら、手を差し出された。

 街中でイチャつくカップルを見て、恥ずかしいなと思っていたけれど、気持ちが分かってしまった。

 2人きりで会える日は限られている。
 愛情だって、いつまでも続くなんて保証はない。
 だからこそ、できるだけ側にいて、触れていたい。
 そんなものなんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...