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四章【九条ゆい】※R18含む
2 オッケーなんだ?
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エアコンの効いたカフェの窓際の席で、カツサンドに齧り付きながら商店街を行き交う人々をぼんやりと眺めていた。ハンカチで額の汗を拭きながら足速に過ぎるスーツ姿の人や、アーケードに入って日傘を畳みながら子供の手を引く女性。
真夏の炎天下を避けるために商店街に人が入ってきているようで、暑さにうんざりした表情の大人たちが窓の前を通り過ぎて行く。
学校が夏休みに入ったからか、小学生や中学生のグループも目につく。不思議なことに彼らは大人に比べて特に暑さを気にするふうでも無く、ぶつかり合うような距離感で戯れながら屈託なく笑い合っていた。
8月。お盆前の高い気温に、大学一年の自分はまだまだ音をあげたりしない。暑いのは確かだが汗をかくのは嫌いじゃない。
もしかして自分はまだ子どもだろうか、、。
3歳年上の宮城さんはどうだろうと思いを馳せたところで、タイミングよくテーブルに置いたスマホが宮城さんからのメッセージが来たことを告げる。
ーバイトのあとうちに寄れる?俺もうすぐ帰るよ。
夏休みだというのに、宮城さんは今日も朝から大学に行っている筈だった。本業に追われて落としそうな科目の課題の為に、夏休み返上でほとんど毎日学校へ行っているのだ。
いったい周りの友達にはどう誤魔化しているんだろう?特に不真面目そうなわけでもない彼が、頻繁に授業をすっぽかしたり課題提出が間に合わなかったりするのだから不思議がられているだろうに。
、、いや、そうでもないか。
そもそも宮城さんは周囲の人にとって謎だらけの不思議な存在だった。いかにも他人に打ち解けなさそうな雰囲気が詮索されることを拒んでいたし、“あの人はそういう人だから”と周りを納得させてしまうだけの要素を備えている。
ー今日16時あがりなので終わったら行きますね。
返信してから急いでカツサンドを頬張る。
夏休みは本屋も忙しいのだ。参考書やワークの類いがどんどん売れる。昼休憩でいつものカフェに来て休んでいるうちに戻るのが面倒になっていた俺は恋人の誘いに俄然仕事へのヤル気が出ていた。
「お邪魔しまーす」
通い慣れたマンションの部屋。勝手に鍵を開けて自分専用のスリッパを履いて入る。すっかり慣れた一連の動作なのにいつも少しだけこそばゆい。
リビングの戸を開ければ宮城さんが「おかえり」とか「おつかれ」と笑顔で迎えてくれるのが何度目でも嬉しくて堪らないからだ。
この日だって例外なく俺は幸せな気持ちになった。
「蒼くん、おつかれ。ごめんね急に呼んで」
キッチンに立っている宮城さんが、リビングに入って来た俺を振り返りざまに微笑んで言う。
「あれ?宮城さん、料理?めずらしいですね」
長袖のシャツの袖を半ばまで折り返して、サラダをお皿に盛り付けているらしい。細くて白い腕が水に濡れている。
「いや、買ってきたやつお皿に移してるだけだよ」
背後から手元を覗いて見れば、頬に触れる宮城さんの髪の毛からお風呂上がりの良い香りがして思わず背後から腕を回す。外では絶対に出来ない分、家で2人の時はたくさん触れたい。
「ぅわ、こら!」
「だめ?」
「ほら、いまコレやっちゃうからソファに座ってて」
言いながら宮城さんがさりげなく俺の腕から逃れようとする。
「え、何ですか?その反応。そういう反応されると手出しちゃいますよ?」
逃れようとする彼を背後から抱きしめて、細くて白い頸に口をつける。
「いやいや、今無理だから。あ、おい、その手!」
こんな事めずらしくもないのに、妙に慌てている宮城さんを不審に思いながら、片手で胸のあたりを、もう片手で股間のあたりをスルスルと撫でる。ウエストの隙間から直に侵入を謀る。
「ごめん、待って待ってマジで。お願い一旦離れよ?」
会って2分後に股間を触られるとは思いもしなかっただろう彼は身を捩って俺の手から逃れようとしている。
「ね、ちょっと反応してますよ?」
「っ!わかったから。離してって!話聞けってば」
俺とキッチンに挟まれて自由のきかない宮城さんが濡れた手のまま股間を撫でる俺の手をぐっと掴んだ。
どうやら本当に離してほしいようだ。
俺はパッと手を広げて彼を解放した。
「じゃああとでなら良いですか?あとでセックスしよ?」
向き直った宮城さんにちゅっと軽いキスをする。
ふと気がつくと、宮城さんが赤い顔をして睨んでいた。
「、、え、あれ、、ごめんなさい、、。そんな怒ると思わなかった。」
「あー、いや、ちがう、、怒ってない」
「ほんとですか??じゃあとでセックスする?」
「、、す、る、、けど、」
カーッと赤くなって宮城さんが消え入りそうな小声で返事をした。
その時だ。
リビングの隣の部屋から笑い声が聞こえたかと思うと、腹を抱えてヨロめく男が出てきた。
「もう無理!キミら面白すぎ!」
1年ぶりに見る人懐こい笑顔がそこにはあった。
「ハ、ハヤトさん!?何で!?」
「蒼くん、ただいま~元気だった?」
言いながら俺に片手を上げて見せたハヤトさんは、俺の手の早さと宮城さんの焦った顔がよっぽど面白かったようで暫く笑い続けた。
「はぁ笑った。こんな笑ったの久しぶりだわ。あんな焦ってるイト初めて見た」
「おまえが蒼くんに言うなって言うからだろ。蒼くんがあのまま暴走したらどうする気だったんだよ。」
「いや、もうその時は静かに終わるの待つか参戦するかの二択だろ」
「やめろ。参戦はするな」
2人のやりとりを俺は黙って見ていた。目の前にはハヤトさんが買ってきたお惣菜やサラダがお皿に盛られて並んでいて、2人はお酒を飲みながら笑い合っていて、、一年前まで普通だったのに突然終わってしまった大好きな光景がまた目の前にある。
なんだか胸が熱くなった。
「お、蒼くんどうした?なんでそんな顔?」
ハヤトさんが黙ったままの俺を見る。宮城さんも不思議そうに首を傾げる。
2人の不思議そうな顔に見つめられて可笑しかった。この2人はやっぱり俺が強く憧れた年上の男だ。
「あはは、なんか涙出そうで。懐かしくて。いろいろあったし、いろいろ変わったし、、」
「ばっかだな、1年しか経ってないって!ほら、何涙ぐんでんの!?ーでもそっか、確かに受験とかイトのこととか、蒼くんにとっては大変なことばっかりだったな」
ハヤトさんは陽にやけた筋肉質な腕を俺の肩にぐいと回して、よろめく俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「ハヤトさんに聞いてほしい事がいっぱいあったんです。なのに、何も相談できなくて、もう半年くらい経ってて」
「うんうん、俺も蒼くんの話聞いて側に居てやりたかったよ。って、本当に泣くなよ~」
泣き笑いして抱きつく俺の背中をヨシヨシと温かい手が撫でる。
「再会を喜んでくれて嬉しいけどさ、蒼くん、そろそろ俺イトに殺されたりしない?」
そうハヤトさんが声をひそめて、ハッとした俺はそそくさと身体を離した。
そうだ、恋人の前で他の男に抱きつくなんてBL漫画でも嫉妬の的、喧嘩の素、いくら久々の再会だからってハヤトさんに抱きつくのは良くなかっただろう、、、
恐る恐る宮城さんを見る、、、と、
「あれ、、?」
「うわ、、」
唖然とする2人の前で宮城さんは小さく舌打ちをして眉をしかめていた。
手にはいつの間にかノートとペン。
2人の抱き合う姿をデッサンしていたのに書いている途中で2人が離れてしまって明らかに残念そうだ。
自分の恋人が他の男に抱きついても、嫉妬するどころかこのBL漫画家は平然とデッサンしようとするのだ。
「イトを普通の男だと思った俺が間違ってたわ、、」
その姿を見て呆れ返ったハヤトさんは、宮城さんに聞こえるようにわざとらしく俺に耳打ちする。
「イトがこんな感じならホントに3P出来るんじゃない?」
「え、ハヤトさん宮城さんに挿れる気ですか?幼馴染なのに?」
「あ?あー、そっか、、そりゃ出来れば蒼くんの方が、、」
「え、こっわ」
「大丈夫、オレ優しいから」
「え~、宮城さんどうしますか?」
宮城さんをからかうようにニヤニヤ笑う俺たちにもう一度注目された彼は、絵の続きを描きながら顔を上げずに小さく笑う。
「俺がハヤトとやるの蒼くんはオッケーなんだ?」
「え、嫌ですよ?もちろん。すっごい嫌ですけど、、、でもめちゃくちゃ興奮しそう」
てへーと悪びれず笑う俺に、宮城さんがいつも通り苦笑した。
「あー、、だよね。蒼くんなら興奮できるね。」
俺たちのやりとりを見ていたハヤトさんがニコニコすると、冗談とも本気ともつかない声音で
「イト、やろーぜ。おもしろいじゃん。」
そう宮城さんに悪戯に誘うように提案したのだ。
「はいはい、いつかね。」
宮城さんはふっと笑うと絵を描きながら適当に返事をする。
そもそも幼馴染の前で自慰した男と、それを要求してデッサンした男なのだ。他にもいろいろあるんだろう。
性的なハードルが低い彼らの、こんな会話を聞くのも久しぶりの事だった。
この2人の雰囲気が高校生だった自分をヌードモデルなんて怪しいバイトに踏み入れさせたんだと思い出して、俺は懐かしさと可笑しさにクスクスと笑いがもれるのだった。
真夏の炎天下を避けるために商店街に人が入ってきているようで、暑さにうんざりした表情の大人たちが窓の前を通り過ぎて行く。
学校が夏休みに入ったからか、小学生や中学生のグループも目につく。不思議なことに彼らは大人に比べて特に暑さを気にするふうでも無く、ぶつかり合うような距離感で戯れながら屈託なく笑い合っていた。
8月。お盆前の高い気温に、大学一年の自分はまだまだ音をあげたりしない。暑いのは確かだが汗をかくのは嫌いじゃない。
もしかして自分はまだ子どもだろうか、、。
3歳年上の宮城さんはどうだろうと思いを馳せたところで、タイミングよくテーブルに置いたスマホが宮城さんからのメッセージが来たことを告げる。
ーバイトのあとうちに寄れる?俺もうすぐ帰るよ。
夏休みだというのに、宮城さんは今日も朝から大学に行っている筈だった。本業に追われて落としそうな科目の課題の為に、夏休み返上でほとんど毎日学校へ行っているのだ。
いったい周りの友達にはどう誤魔化しているんだろう?特に不真面目そうなわけでもない彼が、頻繁に授業をすっぽかしたり課題提出が間に合わなかったりするのだから不思議がられているだろうに。
、、いや、そうでもないか。
そもそも宮城さんは周囲の人にとって謎だらけの不思議な存在だった。いかにも他人に打ち解けなさそうな雰囲気が詮索されることを拒んでいたし、“あの人はそういう人だから”と周りを納得させてしまうだけの要素を備えている。
ー今日16時あがりなので終わったら行きますね。
返信してから急いでカツサンドを頬張る。
夏休みは本屋も忙しいのだ。参考書やワークの類いがどんどん売れる。昼休憩でいつものカフェに来て休んでいるうちに戻るのが面倒になっていた俺は恋人の誘いに俄然仕事へのヤル気が出ていた。
「お邪魔しまーす」
通い慣れたマンションの部屋。勝手に鍵を開けて自分専用のスリッパを履いて入る。すっかり慣れた一連の動作なのにいつも少しだけこそばゆい。
リビングの戸を開ければ宮城さんが「おかえり」とか「おつかれ」と笑顔で迎えてくれるのが何度目でも嬉しくて堪らないからだ。
この日だって例外なく俺は幸せな気持ちになった。
「蒼くん、おつかれ。ごめんね急に呼んで」
キッチンに立っている宮城さんが、リビングに入って来た俺を振り返りざまに微笑んで言う。
「あれ?宮城さん、料理?めずらしいですね」
長袖のシャツの袖を半ばまで折り返して、サラダをお皿に盛り付けているらしい。細くて白い腕が水に濡れている。
「いや、買ってきたやつお皿に移してるだけだよ」
背後から手元を覗いて見れば、頬に触れる宮城さんの髪の毛からお風呂上がりの良い香りがして思わず背後から腕を回す。外では絶対に出来ない分、家で2人の時はたくさん触れたい。
「ぅわ、こら!」
「だめ?」
「ほら、いまコレやっちゃうからソファに座ってて」
言いながら宮城さんがさりげなく俺の腕から逃れようとする。
「え、何ですか?その反応。そういう反応されると手出しちゃいますよ?」
逃れようとする彼を背後から抱きしめて、細くて白い頸に口をつける。
「いやいや、今無理だから。あ、おい、その手!」
こんな事めずらしくもないのに、妙に慌てている宮城さんを不審に思いながら、片手で胸のあたりを、もう片手で股間のあたりをスルスルと撫でる。ウエストの隙間から直に侵入を謀る。
「ごめん、待って待ってマジで。お願い一旦離れよ?」
会って2分後に股間を触られるとは思いもしなかっただろう彼は身を捩って俺の手から逃れようとしている。
「ね、ちょっと反応してますよ?」
「っ!わかったから。離してって!話聞けってば」
俺とキッチンに挟まれて自由のきかない宮城さんが濡れた手のまま股間を撫でる俺の手をぐっと掴んだ。
どうやら本当に離してほしいようだ。
俺はパッと手を広げて彼を解放した。
「じゃああとでなら良いですか?あとでセックスしよ?」
向き直った宮城さんにちゅっと軽いキスをする。
ふと気がつくと、宮城さんが赤い顔をして睨んでいた。
「、、え、あれ、、ごめんなさい、、。そんな怒ると思わなかった。」
「あー、いや、ちがう、、怒ってない」
「ほんとですか??じゃあとでセックスする?」
「、、す、る、、けど、」
カーッと赤くなって宮城さんが消え入りそうな小声で返事をした。
その時だ。
リビングの隣の部屋から笑い声が聞こえたかと思うと、腹を抱えてヨロめく男が出てきた。
「もう無理!キミら面白すぎ!」
1年ぶりに見る人懐こい笑顔がそこにはあった。
「ハ、ハヤトさん!?何で!?」
「蒼くん、ただいま~元気だった?」
言いながら俺に片手を上げて見せたハヤトさんは、俺の手の早さと宮城さんの焦った顔がよっぽど面白かったようで暫く笑い続けた。
「はぁ笑った。こんな笑ったの久しぶりだわ。あんな焦ってるイト初めて見た」
「おまえが蒼くんに言うなって言うからだろ。蒼くんがあのまま暴走したらどうする気だったんだよ。」
「いや、もうその時は静かに終わるの待つか参戦するかの二択だろ」
「やめろ。参戦はするな」
2人のやりとりを俺は黙って見ていた。目の前にはハヤトさんが買ってきたお惣菜やサラダがお皿に盛られて並んでいて、2人はお酒を飲みながら笑い合っていて、、一年前まで普通だったのに突然終わってしまった大好きな光景がまた目の前にある。
なんだか胸が熱くなった。
「お、蒼くんどうした?なんでそんな顔?」
ハヤトさんが黙ったままの俺を見る。宮城さんも不思議そうに首を傾げる。
2人の不思議そうな顔に見つめられて可笑しかった。この2人はやっぱり俺が強く憧れた年上の男だ。
「あはは、なんか涙出そうで。懐かしくて。いろいろあったし、いろいろ変わったし、、」
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泣き笑いして抱きつく俺の背中をヨシヨシと温かい手が撫でる。
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恐る恐る宮城さんを見る、、、と、
「あれ、、?」
「うわ、、」
唖然とする2人の前で宮城さんは小さく舌打ちをして眉をしかめていた。
手にはいつの間にかノートとペン。
2人の抱き合う姿をデッサンしていたのに書いている途中で2人が離れてしまって明らかに残念そうだ。
自分の恋人が他の男に抱きついても、嫉妬するどころかこのBL漫画家は平然とデッサンしようとするのだ。
「イトを普通の男だと思った俺が間違ってたわ、、」
その姿を見て呆れ返ったハヤトさんは、宮城さんに聞こえるようにわざとらしく俺に耳打ちする。
「イトがこんな感じならホントに3P出来るんじゃない?」
「え、ハヤトさん宮城さんに挿れる気ですか?幼馴染なのに?」
「あ?あー、そっか、、そりゃ出来れば蒼くんの方が、、」
「え、こっわ」
「大丈夫、オレ優しいから」
「え~、宮城さんどうしますか?」
宮城さんをからかうようにニヤニヤ笑う俺たちにもう一度注目された彼は、絵の続きを描きながら顔を上げずに小さく笑う。
「俺がハヤトとやるの蒼くんはオッケーなんだ?」
「え、嫌ですよ?もちろん。すっごい嫌ですけど、、、でもめちゃくちゃ興奮しそう」
てへーと悪びれず笑う俺に、宮城さんがいつも通り苦笑した。
「あー、、だよね。蒼くんなら興奮できるね。」
俺たちのやりとりを見ていたハヤトさんがニコニコすると、冗談とも本気ともつかない声音で
「イト、やろーぜ。おもしろいじゃん。」
そう宮城さんに悪戯に誘うように提案したのだ。
「はいはい、いつかね。」
宮城さんはふっと笑うと絵を描きながら適当に返事をする。
そもそも幼馴染の前で自慰した男と、それを要求してデッサンした男なのだ。他にもいろいろあるんだろう。
性的なハードルが低い彼らの、こんな会話を聞くのも久しぶりの事だった。
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