【完結】城入りした伯爵令嬢と王子たちの物語

ひかり芽衣

文字の大きさ
54 / 60
最終章:新たな国王の誕生

9:終焉

しおりを挟む

ヴィクターは、窓から騎士たちが出陣した方角を眺めていた。
いつもなら出陣するが国王となった今は城に残ることとなり、落ち着かないのだ。

(大丈夫だ。アダム兄上と共に就任式の直前まで練り上げた計画は完璧だ。皆の士気も高かった。イーサン兄上が現場の指揮を執ってくれているし、何の問題もない。俺は皆を信じるのみだ)

ヴィクターは薄暗くなって来た空を見ながら、皆を信じる想いを強くした。




「アシュリー、大丈夫よね? 全て解決するわよね?」

「はい。女王陛下も無事にも戻られて、反逆者たちも捕まって、全てが終わるはずです」

アシュリーはセリーナとエリザベスの部屋を掃除しながら、エリザベスの無事の帰城とこの争いの終焉を願った。





日が傾きかけた頃、オーウェンの使者がまずはオーウェンの元にイーサンを連れて戻って来た。

「ローイ様はここで手当をしているよ。出血が多くてあまり状態は良くはないみたいで、移動は諦めたみたい。裏切り者のグリーフは村民の半分を連れて移動した。ここから3Kmほど離れた所に地下へ入る隠し扉があって、そこへ入って行ったよ。恐らく陛下もそこにいるんじゃないかな……?」

淡々と言うオーウェンに、イーサンも淡々と言った。

「わかった。よくやった。お前は報告が済んだら今すぐ城へ戻れ」

「えー!!! そんな!!!」

オーウェンは不満一杯の顔を兄に向ける。

「お前はまだ、心身共に戦闘に参加する準備は出来ていない。無駄死にしても誰も喜ばない。お前はこれから、もっと成長し国のためになる人間になるのだ」

イーサンは真面目に末っ子を諭すと、使者に今すぐ連れて帰るように指示した。
さすがのオーウェンも大人しく従ったのだった。






イーサンは隊員へ指示をし、作戦を確認する。
そして日が完全に落ちてから、地下への隠し扉をエイダンの爆弾で破壊し、一気に突入した。
二手に分かれて、同時に村へも攻め入る。

敵の人数は突入した騎士とほぼ同じだ。
しかし、トップであるローイの大怪我で士気が下がっていたこともあり、力の差は一目瞭然であった。


「陛下!!!」

イーサンが地下牢に閉じ込められているエリザベスを助け出す。

「イーサン……迷惑をかけたね……。うまく行ったのよね? アシュリーは無事!?」

「はい、もう大丈夫です。新国王と騎士統括の就任も執り行いました。ローイも大怪我を負っていて、今他の者が捕らえに行っています。アシュリーも無事です」

すぐに安全な所へエリザベスを避難させた。
エリザベスは真っ黒に汚れており、身なりはボロボロだった。
しかし食べ物は与えられており、暴力もふるわれていないようだ。

「ローイ……私の情緒を乱そうと、全てを話してくれたわ……」

「……父上のことですか?」

「ええ」

エリザベスにとってそれは、無念以外の何者でもないことだった。

「陛下はお怪我はありませんか?」

「ええ、身体的苦痛を与えても無駄だと思ったようで、精神的に追い詰めて来たわ……。脅されたり……」

「ノートの在処を伝えたのですか?」

イーサンの問いに、エリザベスは疲れた表情で苦笑いを浮かべる。

「だって誘拐されてから随分経つのに全然音沙汰なしだったから、全く尻尾を掴めていないのではないかと思ったのよ。だからわざと教えて、接触させたの。城なら私たちの方が圧倒的に有利だし、あなたたちなら上手くやってくれると信じていたわ」

イーサンは驚いた顔をしたが、すぐにいつもの真顔で言う。

「わざとだったとは考えもしませんでした。ご無事で何よりです」

「ええ、今日は……8月何日かしら?」

エリザベスの発言にイーサンは再び驚いた顔となった。

「……陛下、今は冬でございます」

「えっ? あら、そうだったわね……」

イーサンはノートを全て読んでいた。
そんなイーサンはエリザベスの苦笑いに、エリザベスがとぼけたのではなく本当に間違えたことを悟り、複雑な想いとなる。

「早く城へ戻ってゆっくり休みましょう」




イーサンはエリザベスを他の騎士に頼み、ローイを確実に捕らえたのか確認に行った。

「ローイ……イーサンだ。皆捕まえたぞ。お前の負けだ」

そこには血の気がなく顔面蒼白のローイがいた。
大腿部からの動脈出血にも関わらず無理して逃亡したため、多くの血が失われてしまったようだ。
今も完全に止血しきれていない。
意識も少し遠くなって来ており、呼吸も浅く速い。
薄らと目を開け、イーサンを見て言う。

「……中途半端な反乱となってしまったな。俺は大事な時に怪我ばかり……」

「父への嫉妬から道を踏み外しさえしなければ、違った未来があったのだ」

淡々と言うイーサンに、ローイは何かを思いついたような顔をした。

「……一つ頼みがある」

「何だ?」

「ティガレストの女と産まれてくる子どもは、放っておいて欲しい……」

「お前のことは伝えるか?」

「……いや、その必要はない」

「わかった」

(彼女の中では良い人間として生き続けたいのだな……)

イーサンはそう思った。

「父を殺したお前の頼みは聞きたくはないが、あの女性に免じてそのようにしてやろう」

イーサンが上から目線でそう言うと、ローイは笑った。

「ははっ……。俺も……、もう終わり……だ、な……。ローレルの……息子に……殺られ……た……か……」

その言葉を最後に、ローイは目を閉じた。
呼吸はどんどん努力様になっていき、約一時間後には静かに息を引き取った。



グリーフはまた逃げようとしたが、呆気なく捕まった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...