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第一章:果物屋の看板娘とその幼馴染
③カトリーヌと魔女の出会い
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カトリーヌの住む街のはずれには、大きな森がある。
そして、いつも暗くて不気味なその森の奥深くには、1人の魔女が住んでいる。
魔女は森から出てくることは殆どなく、人々は不気味がって近寄らない。
一部の人々を除いて……
そう、藁にもすがる想いの者が年に数人訪れるのだ。
カトリーヌは約一年前、藁にもすがる想いで魔女を訪ねたうちの一人だ。
寝込む母の病の原因がわからず、町医者が手をあげた。
他に医療や薬の知識がある人はいないか、近隣の町ならどうかなど、カトリーヌは人々に片っ端から訊ねて回った。
少しでも、何でも良いから情報が欲しくて……
そんな時、ある町人が重い口を開いてくれた。その人物は、約5年前に病に伏せ寝たきりだったが奇跡的な回復を遂げたことで、町内で有名な人物だった。
「……実は、あの時私を治してくれたのは、魔女なのだ」
カトリーヌは耳を疑った。
目を見開き、目の前の今は健康そのものな老人を見た。彼はいつも畑仕事にせいが出ており、元気そうに見える。
今は亡き老人の妻が魔女のもとを訪ね、貰って来た薬を飲んだら治ったと言う。
しかし、町の者が知れば何を言われるか分からない。
魔女の仲間だと誹謗中傷に遭う可能性もある。
ここに居づらくなるかもしれない。
そのような事情から、ずっと魔女のことは伏せていたのだそうだ。
何はともあれ、カトリーヌには希望の光だった。
魔女の居場所は、この町の者なら皆知っている。
森の入り口をまっすぐ5km進んだ所にある大きな石を目印に、更に右へまっすぐ3km進む。そこにある一面深い緑色の池の麓に佇む小さな小屋だ。
ずっと噂には聞いていた。
幼い頃から「決して近寄らないように」と言われていた場所だ。
実際に初めて行ってみると、本当にその場所にその小屋はあり、中には魔女がいた。
勇気を出して扉を開けたカトリーヌをチラリと見ると、魔女は彼女が何かを言うより先にこう言った。
「私を信じるのなら、これを飲ませてごらん」
あまりの驚きに声の出ないカトリーヌに、魔女はすぐ横のテーブルの上にある、池と同じ深い緑色の壺の中を指差す。
そして、魔女は五歩後ろへ下がった。
カトリーヌはゴクンと唾をひとつ飲み込むと、あけられたそのスペースへゆっくりと足を進ませる。
その壺を覗き込んだカトリーヌは、目を見開く。
そこには、カトリーヌの家で、彼女の母がベッドへ横になっている姿が映っていたのだ。
(”全てお見通しで、何の説明もいらない”ということね)
全てを理解したカトリーヌが魔女の方を見ると、魔女は言った。
「急いだ方が良い。元々身体が弱いから、手遅れになるかもしれない」
カトリーヌは先程よりも更に大きく目を見開き、一瞬で顔面蒼白となる。
「……っ!? ありがとうございます!」
カトリーヌは迷わず小瓶を手に取ると、再び来た道を走り出したのだった……ーーー
そして、いつも暗くて不気味なその森の奥深くには、1人の魔女が住んでいる。
魔女は森から出てくることは殆どなく、人々は不気味がって近寄らない。
一部の人々を除いて……
そう、藁にもすがる想いの者が年に数人訪れるのだ。
カトリーヌは約一年前、藁にもすがる想いで魔女を訪ねたうちの一人だ。
寝込む母の病の原因がわからず、町医者が手をあげた。
他に医療や薬の知識がある人はいないか、近隣の町ならどうかなど、カトリーヌは人々に片っ端から訊ねて回った。
少しでも、何でも良いから情報が欲しくて……
そんな時、ある町人が重い口を開いてくれた。その人物は、約5年前に病に伏せ寝たきりだったが奇跡的な回復を遂げたことで、町内で有名な人物だった。
「……実は、あの時私を治してくれたのは、魔女なのだ」
カトリーヌは耳を疑った。
目を見開き、目の前の今は健康そのものな老人を見た。彼はいつも畑仕事にせいが出ており、元気そうに見える。
今は亡き老人の妻が魔女のもとを訪ね、貰って来た薬を飲んだら治ったと言う。
しかし、町の者が知れば何を言われるか分からない。
魔女の仲間だと誹謗中傷に遭う可能性もある。
ここに居づらくなるかもしれない。
そのような事情から、ずっと魔女のことは伏せていたのだそうだ。
何はともあれ、カトリーヌには希望の光だった。
魔女の居場所は、この町の者なら皆知っている。
森の入り口をまっすぐ5km進んだ所にある大きな石を目印に、更に右へまっすぐ3km進む。そこにある一面深い緑色の池の麓に佇む小さな小屋だ。
ずっと噂には聞いていた。
幼い頃から「決して近寄らないように」と言われていた場所だ。
実際に初めて行ってみると、本当にその場所にその小屋はあり、中には魔女がいた。
勇気を出して扉を開けたカトリーヌをチラリと見ると、魔女は彼女が何かを言うより先にこう言った。
「私を信じるのなら、これを飲ませてごらん」
あまりの驚きに声の出ないカトリーヌに、魔女はすぐ横のテーブルの上にある、池と同じ深い緑色の壺の中を指差す。
そして、魔女は五歩後ろへ下がった。
カトリーヌはゴクンと唾をひとつ飲み込むと、あけられたそのスペースへゆっくりと足を進ませる。
その壺を覗き込んだカトリーヌは、目を見開く。
そこには、カトリーヌの家で、彼女の母がベッドへ横になっている姿が映っていたのだ。
(”全てお見通しで、何の説明もいらない”ということね)
全てを理解したカトリーヌが魔女の方を見ると、魔女は言った。
「急いだ方が良い。元々身体が弱いから、手遅れになるかもしれない」
カトリーヌは先程よりも更に大きく目を見開き、一瞬で顔面蒼白となる。
「……っ!? ありがとうございます!」
カトリーヌは迷わず小瓶を手に取ると、再び来た道を走り出したのだった……ーーー
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