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第一章:果物屋の看板娘とその幼馴染
④魔女と小瓶
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ーーー現在。
「こんにちは、魔女様! 今日は良い林檎が入ったので、届けに来ました」
カトリーヌは、数ヶ月に一度は訪れているその場所へやって来ていた。
母がある程度回復してからというもの、時間を見付けては来ている。今日は3回目の訪問だ。
「また来たのかい」
身長は140cm程度だろうか?背中はすっかり曲がってしまっていて、それが実際よりも更に老婆を小さく見せている。
いつも真っ黒のローブで全身を覆っており、顔も口元しか出ていない。
そしてその口角が上がったところを、カトリーヌは一度も見たことがない。
魔女の表情はわからないが、カトリーヌは不思議と恐怖心を抱くことはなかった。
何故なら、カトリーヌはこの魔女のことを100%信用しているからだ。
「母を助けていただいたのに、お金を受け取って下さらないのですもの。……これくらい受け取って下さい」
「お礼はもう充分だよ」
抑揚のない声で、前回と同じ台詞を魔女は言う。
「いいえ、まだまだ全然足りませんよ! 本当は母も直接お礼に来たいと言っているのですが、ここは遠すぎて……。果物を届けさせて貰うことは、母の希望でもあるのです」
本当は毎月でも果物を届けに来たいのだが、往復で4時間以上かかるこの場所は中々に遠い。
「もっと何か出来ることがあれば良いのですが……。あっ、そうだ! 町の人の誤解を解きましょう!」
『閃いた』っと明るい表情で言うカトリーヌを一瞥して、魔女は大きく溜め息をついた。
「やめておくれ。せっかく人が近づかないように噂を流したのだから」
魔女の言葉に、カトリーヌは目を丸くする。
「えっ、魔女様がご自分で人払いをしたのですか!?」
「そうだよ。好き放題言うくせに自分の都合の良い時にだけ頼って来られて……うんざりだったんだよ」
(一体おいくつなんだろう……?)
魔女の溜め息を聞きながらふと生じた疑問を、カトリーヌはさっと心の中に閉まった。
鍋に入っている謎の液体を混ぜている魔女に、カトリーヌは不思議な顔で訊ねる。
「……では、何故私を……私の母を助けて下さったのですか?」
「こんな場所までわざわざ、こんな胡散臭い魔女を訪ねて来るほどに切迫詰まった人間くらいなら、助けてやっても良いかと思ってね。……性根の腐った奴は助けはしないけれどね」
ぶっきら棒にそう言う魔女に、カトリーヌは温かさを感じて思わず微笑む。
「……で、前回よりもしけたツラが酷くなっているが?」
突然の魔女の発言に、カトリーヌは思わず大声をあげる。
「へっ!? ひょっとして壺で見ましたか!?」
「3ヶ月前に一度だけ」
「……」
顔を赤くして固まるカトリーヌに、魔女は呆れた様子だ。
「見られたくなければ、ここへは来ないことだね。関わり方を決める為に、森に立ち入った者の情報収集をしているだけなのだから」
「……」
魔女は先ほど鍋で混ぜていた液体を、小瓶に移しながら言う。
「その時と同じ悩みかい?」
「……多分、そうです……」
躊躇しながらそう言うカトリーヌの言葉を聞いて、魔女はカトリーヌの方へ近づいて来る。
そして、たった今液体を入れた小瓶をカトリーヌの目の前に置くと、こう言った。
「私を信じるなら、これを飲ませてごらん」
「こんにちは、魔女様! 今日は良い林檎が入ったので、届けに来ました」
カトリーヌは、数ヶ月に一度は訪れているその場所へやって来ていた。
母がある程度回復してからというもの、時間を見付けては来ている。今日は3回目の訪問だ。
「また来たのかい」
身長は140cm程度だろうか?背中はすっかり曲がってしまっていて、それが実際よりも更に老婆を小さく見せている。
いつも真っ黒のローブで全身を覆っており、顔も口元しか出ていない。
そしてその口角が上がったところを、カトリーヌは一度も見たことがない。
魔女の表情はわからないが、カトリーヌは不思議と恐怖心を抱くことはなかった。
何故なら、カトリーヌはこの魔女のことを100%信用しているからだ。
「母を助けていただいたのに、お金を受け取って下さらないのですもの。……これくらい受け取って下さい」
「お礼はもう充分だよ」
抑揚のない声で、前回と同じ台詞を魔女は言う。
「いいえ、まだまだ全然足りませんよ! 本当は母も直接お礼に来たいと言っているのですが、ここは遠すぎて……。果物を届けさせて貰うことは、母の希望でもあるのです」
本当は毎月でも果物を届けに来たいのだが、往復で4時間以上かかるこの場所は中々に遠い。
「もっと何か出来ることがあれば良いのですが……。あっ、そうだ! 町の人の誤解を解きましょう!」
『閃いた』っと明るい表情で言うカトリーヌを一瞥して、魔女は大きく溜め息をついた。
「やめておくれ。せっかく人が近づかないように噂を流したのだから」
魔女の言葉に、カトリーヌは目を丸くする。
「えっ、魔女様がご自分で人払いをしたのですか!?」
「そうだよ。好き放題言うくせに自分の都合の良い時にだけ頼って来られて……うんざりだったんだよ」
(一体おいくつなんだろう……?)
魔女の溜め息を聞きながらふと生じた疑問を、カトリーヌはさっと心の中に閉まった。
鍋に入っている謎の液体を混ぜている魔女に、カトリーヌは不思議な顔で訊ねる。
「……では、何故私を……私の母を助けて下さったのですか?」
「こんな場所までわざわざ、こんな胡散臭い魔女を訪ねて来るほどに切迫詰まった人間くらいなら、助けてやっても良いかと思ってね。……性根の腐った奴は助けはしないけれどね」
ぶっきら棒にそう言う魔女に、カトリーヌは温かさを感じて思わず微笑む。
「……で、前回よりもしけたツラが酷くなっているが?」
突然の魔女の発言に、カトリーヌは思わず大声をあげる。
「へっ!? ひょっとして壺で見ましたか!?」
「3ヶ月前に一度だけ」
「……」
顔を赤くして固まるカトリーヌに、魔女は呆れた様子だ。
「見られたくなければ、ここへは来ないことだね。関わり方を決める為に、森に立ち入った者の情報収集をしているだけなのだから」
「……」
魔女は先ほど鍋で混ぜていた液体を、小瓶に移しながら言う。
「その時と同じ悩みかい?」
「……多分、そうです……」
躊躇しながらそう言うカトリーヌの言葉を聞いて、魔女はカトリーヌの方へ近づいて来る。
そして、たった今液体を入れた小瓶をカトリーヌの目の前に置くと、こう言った。
「私を信じるなら、これを飲ませてごらん」
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