【短編集】あなたが本当に知りたいことは何ですか?

ひかり芽衣

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第一章:果物屋の看板娘とその幼馴染

⑥ローイの隠し事

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(このままではいけないわ! ちゃんと話さなきゃ! きっとローイならわかってくれるわ!)

嫌われたくない一心のカトリーヌは、その夜、勇気を出してローイの家をノックした。
魔女のことを話す覚悟を決めて。




「やあカトリーヌ、外は寒いから中に入りな!」

留守のローイに代わり両親に出迎えられたカトリーヌは、流れでお茶をご馳走になることになった。

「最近はゆっくり話せていなかったね。シシリアさんの体調はどうだい?」

「おかげ様で、母はもうかなり良いんです。無理せず働いてもくれています」

ローイと同じ茶色い髪と瞳のローイ父に、(将来ローイはこんな感じになるのかな?)などと心の中で考えながら、カトリーヌは少し心が落ち着くのを感じた。
ローイが去ってから、ずっと心臓が痛かったのだ。

「それにしても女の子一人で、大変でしょう? うちをもっと頼ってくれたら良いのよ? 力仕事なら、いつでもローイを使ってくれたら良いからね」

いつも優しく気遣ってくれるローイ母に、ローイが重なる。

(ローイの優しさはお母様譲りなのよね)

そんなことを考えると、ふと今朝のことを思い出して涙が出そうになり、持っていた巾着袋を握り締めた。

(嫌われちゃったかしら……? 呆れられたかしら? 見捨てられたかしら? 私がずっとローイの優しさに甘えていたからいけないのよね……。謝らないと……)

「あっあのっ、ローイはどこに……?」

「ああ、隣町に行って来ると言って出て行ったわ。友達でも出来たのかしらね? 最近よく行っているみたい」

「隣町……」

隣町は、最近どんどん栄えている町だ。

「いや、あれは恋だね。カトリーヌ、何か聞いてはいないかい?」

「えっ……?」

ローイ父の愉快そうな笑顔に対し、カトリーヌは固まってしまう。
すると慌ててローイ母がフォローを入れる。

「あなた、何を言っているの! きっとそんなのではないと思うわ! カトリーヌ、気にしないで!」

「あっ……ははっ」

ローイ母のフォローに、カトリーヌは直感が働き一気に顔が熱くなるのを感じた。

(おば様は私の気持ちに気付いているわ!)

女の勘は鋭い。
幼い頃から二人を見ていたローイ母には、カトリーヌがローイへ恋心を抱いていることなど、すっかりお見通しなのだろう。

「……あっあの、失礼します!」

あまりの恥ずかしさと、ローイに好きな人がいるかもしれないショックに、カトリーヌはその場にいられなかった。

慌ただしく退散しようとするカトリーヌに、ローイ母は再び慌てて付け足した。

「本当に、何か理由があって行っているのだと思うの! 真剣に何かを考えているようだから! だから気にしないでね!」




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