【短編集】あなたが本当に知りたいことは何ですか?

ひかり芽衣

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第一章:果物屋の看板娘とその幼馴染

⑦ぐちゃぐちゃな心

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カトリーヌは自宅へ戻ると、母シシリアへ就寝の挨拶をしてすぐに自室へ籠った。

(真剣なんだ……。真剣に想う相手が出来たの? 片想い? ……ひょっとして両想い?)

カトリーヌは窓から空を見上げながら、瞳から零れ落ちる涙を止めることが出来なかった。

「綺麗な星……明日は晴れね。明日も雨だったらよかったのに……」

独り言を呟くと同時に頭の中で考えたことに、カトリーヌは自分で苦笑いをする。

(雨だったらお客さんが来なくて、また会いに来てくれたかもしれない……)

今でもまだこんなことを考える自分に、自分で辟易した。

「私はなんて馬鹿なの……待ってばかり……」

ふと、さっきからずっと手に握っている物を、カトリーヌは思い出した。
巾着袋から取り出し月明かりに照らした物は、魔女に貰った小瓶だった。

「本当に、知りたいことを知ることが出来るのかしら?」

そう呟いてすぐ、答えは出た。

「きっと、本当だわ。だってお母様が治ったのですもの」

不思議と効果は信じられた。
しかし、未知の薬だ。

「副作用とか、身体に悪いことはないのかしら……?」

やはりそこは気になる。

「よくわからない謎の薬をローイに飲ませる?」

そう口に出してみたが、実感は沸かなかった。
ローイに危険を及ぼす可能性のあることをしよう、という気にはなれない。

なら何故、カトリーヌは今日この小瓶を持ってローイに会いに行ったのだろうか?

「……使う気はないけれど、使いたい気持ちはあるのよね……」

カトリーヌはローイの気持ちが分からなくて辛かった。
カトリーヌが素っ気なくなってからも、ずっとカトリーヌに優しくしてくれるローイ。
ローイの態度は昔からずっと変わらない。
幼馴染に対する優しさ、病気の母親とずっと二人暮らしだった同じ年の女の子への同情……
このままずっと、ローイの優しさは続く気がした。

私が何も変なことを言わなければ。

”変なこと=恋愛を匂わせること” だ。

それならば、気まずくならないように、自分の感情に蓋をし続けるしかない。
これからもずっと隣同士なのだから……

「……いつかローイにお嫁さんが来て、一緒に野菜屋を継いだりするのかしら?」

(それをずっと隣で見続けるの?)

そう考えると、カトリーヌの勢いの弱まっていた涙は、再び勢いを増すのだった……




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