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第一章:果物屋の看板娘とその幼馴染
⑫暴走
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カトリーヌは、残っているスープをそれ以上飲む気にはならなかった。
呆然と、目の前で談笑しているローイと美女を見ていた。
とても楽しそうな雰囲気が、離れた席のカトリーヌの場所まで伝わって来る。
どんどん運ばれて来る酒。
ビールジョッキを合わせての乾杯から始まり、今はワインを開けている。
(ビールはローイのおじ様も飲むわね。……ワインなんて、どこで覚えたのかしら?)
知らないローイの姿に、カトリーヌの心の中にはどんどん黒いモヤがかかってくる。
カトリーヌの場所からはローイの背中と、美女の顔がよく見える。
改めて見ても、美女は美女だった。
見れば見るほど、美女だった。
ブロンドのナイスバディだ。
瞳がキラキラ輝いていて、自身に満ち溢れている様に見える。
(ああいう大人らしい女性が好みなのかな……)
あまりに自分と真逆すぎて、カトリーヌは急に涙が込み上げて来た。
(駄目だ、泣きそうだわ! 目的は済んだし、帰ろう)
カトリーヌはそっと席を立ち会計へ向かおうとするも、途中で酔っぱらい客に声を掛けられてしまう。
「よう、子供が一人で何やってんだ?」
”子供”という言葉に、更に涙が込み上げて来る。
「まだ10歳くらいなんじゃねーのか? わっはっはっ!」
その客に大声で笑われると同時に、店内の視線がカトリーヌへ集中するのを感じる。
(いやっ!!!)
半泣きで顔を真っ赤にしたカトリーヌは、酔っぱらいを無視して立ち去ろうとした時、傍の椅子に足をひっかけて床に転んでしまう。
”バタン!!!”
店中に大きな音が響き渡ると同時に、店内の喧騒は止まった。
更に視線が集まっていることを感じたカトリーヌは、恥ずかしくて死にそうだった。
(もう嫌……)
立ち上がりたいのに足に力が入らない。四つん這いの状態で固まってしまう。
(もう消えてしまいたい……)
涙が目いっぱいに充満したその時、カトリーヌの身体はふわっと浮いた。
「おいっ、大丈夫か!?」
身体を持ち上げられると傍の椅子に座らされ、身体を屈めてカトリーヌを覗き込むのはローイだった。
ローイは驚きと心配の入り混じった表情で、カトリーヌを見つめている。
ローイを見た瞬間、カトリーヌの目から一粒の涙が溢れた。
(はっ、早く店を出なきゃ!!!)
カトリーヌはローイを振り切ってレジへ向かうと、「おつりは入りません」と金を置いて店を飛び出した。
出来る限り、走った。
しばらくして後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
(何をうぬぼれているのだろう……)
何故か、ローイが追いかけて来てくれると思っていた。
そんな自分が恥ずかしくて、カトリーヌは余計に悲しくなった。
すぐにまた走り始める。
体力の続く限り、カトリーナは全速力で走った。
自分の町へ入った頃、カトリーヌはやっと走るのをやめ、トボトボと歩き始めた。
涙を流しながら……
時々ある民家の灯りを頼りに、カトリーヌは暗い来た道を戻る。
今にも座り込みそうになるのを堪えて、必死に家を目指した。
すると、後ろから足音が近づいて来る。
走っているようだ。
(変質者!?)
もうすぐ民家が増える町の中心部へ入るため、カトリーヌはそこをめがけて再び走り出した。
(体力には自信があるんだから! どんなに恥ずかしくても、悲しくても、私はまだ死ねないのよ! お母様を一人にはできないのだから!!!)
そんなことを考えながら全速力で走っているが、足音はどんどん近くなってくる。
そしてついに、腕を掴まれた。
「キャーッ!!!」
腕を振り払いながら無我夢中で大声で叫ぶと同時に、頭の中ではローイの顔が浮かんでいた。
(ローイ、助けて!!!)
助けてくれるはずのない、その名前を……
「おいっ、馬鹿! 俺だよ!」
聞き覚えのあるその声に、カトリーヌは止まって振り返り、声の主を確認する。
「えっ、何で……?」
そこには、今想い人である美女とデート中のはずのローイがいたのだった……
呆然と、目の前で談笑しているローイと美女を見ていた。
とても楽しそうな雰囲気が、離れた席のカトリーヌの場所まで伝わって来る。
どんどん運ばれて来る酒。
ビールジョッキを合わせての乾杯から始まり、今はワインを開けている。
(ビールはローイのおじ様も飲むわね。……ワインなんて、どこで覚えたのかしら?)
知らないローイの姿に、カトリーヌの心の中にはどんどん黒いモヤがかかってくる。
カトリーヌの場所からはローイの背中と、美女の顔がよく見える。
改めて見ても、美女は美女だった。
見れば見るほど、美女だった。
ブロンドのナイスバディだ。
瞳がキラキラ輝いていて、自身に満ち溢れている様に見える。
(ああいう大人らしい女性が好みなのかな……)
あまりに自分と真逆すぎて、カトリーヌは急に涙が込み上げて来た。
(駄目だ、泣きそうだわ! 目的は済んだし、帰ろう)
カトリーヌはそっと席を立ち会計へ向かおうとするも、途中で酔っぱらい客に声を掛けられてしまう。
「よう、子供が一人で何やってんだ?」
”子供”という言葉に、更に涙が込み上げて来る。
「まだ10歳くらいなんじゃねーのか? わっはっはっ!」
その客に大声で笑われると同時に、店内の視線がカトリーヌへ集中するのを感じる。
(いやっ!!!)
半泣きで顔を真っ赤にしたカトリーヌは、酔っぱらいを無視して立ち去ろうとした時、傍の椅子に足をひっかけて床に転んでしまう。
”バタン!!!”
店中に大きな音が響き渡ると同時に、店内の喧騒は止まった。
更に視線が集まっていることを感じたカトリーヌは、恥ずかしくて死にそうだった。
(もう嫌……)
立ち上がりたいのに足に力が入らない。四つん這いの状態で固まってしまう。
(もう消えてしまいたい……)
涙が目いっぱいに充満したその時、カトリーヌの身体はふわっと浮いた。
「おいっ、大丈夫か!?」
身体を持ち上げられると傍の椅子に座らされ、身体を屈めてカトリーヌを覗き込むのはローイだった。
ローイは驚きと心配の入り混じった表情で、カトリーヌを見つめている。
ローイを見た瞬間、カトリーヌの目から一粒の涙が溢れた。
(はっ、早く店を出なきゃ!!!)
カトリーヌはローイを振り切ってレジへ向かうと、「おつりは入りません」と金を置いて店を飛び出した。
出来る限り、走った。
しばらくして後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
(何をうぬぼれているのだろう……)
何故か、ローイが追いかけて来てくれると思っていた。
そんな自分が恥ずかしくて、カトリーヌは余計に悲しくなった。
すぐにまた走り始める。
体力の続く限り、カトリーナは全速力で走った。
自分の町へ入った頃、カトリーヌはやっと走るのをやめ、トボトボと歩き始めた。
涙を流しながら……
時々ある民家の灯りを頼りに、カトリーヌは暗い来た道を戻る。
今にも座り込みそうになるのを堪えて、必死に家を目指した。
すると、後ろから足音が近づいて来る。
走っているようだ。
(変質者!?)
もうすぐ民家が増える町の中心部へ入るため、カトリーヌはそこをめがけて再び走り出した。
(体力には自信があるんだから! どんなに恥ずかしくても、悲しくても、私はまだ死ねないのよ! お母様を一人にはできないのだから!!!)
そんなことを考えながら全速力で走っているが、足音はどんどん近くなってくる。
そしてついに、腕を掴まれた。
「キャーッ!!!」
腕を振り払いながら無我夢中で大声で叫ぶと同時に、頭の中ではローイの顔が浮かんでいた。
(ローイ、助けて!!!)
助けてくれるはずのない、その名前を……
「おいっ、馬鹿! 俺だよ!」
聞き覚えのあるその声に、カトリーヌは止まって振り返り、声の主を確認する。
「えっ、何で……?」
そこには、今想い人である美女とデート中のはずのローイがいたのだった……
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