4 / 19
3話 俺の好奇心をくすぐる人2
しおりを挟む
3話 俺の好奇心をくすぐる人2
「どうせ傘さして帰るなら送られた方が楽でしょ?」
多少強引とも思える俺の言い草に、鈴村さんはどう返答してくるのか期待している自分もいる。
――さて。今回はどうしてくるかな? するりと躱(かわ)されるか、目の前でシャッターが閉まるが如く距離を置かれるか。
こんな事考えてしまうのは、以前にも彼女からこの様な態度を取られたからだ。それのリベンジって訳では無いけど、俺の勝手な一人駆け引きみたいで正直少し楽しかった。
(俺ってもしかして意地悪い?)
とも思ったが、知らないフリをしよう。
「……んーと」
鈴村さんは癖なのだろうか顎に手を添えて少し俯き考える素振りを見せた。
「じゃあ、お言葉に甘えていいかな?」
微かな笑みを見せて俺の顔を覗き込んできた。
「ふぇ?!」
これまた予想外な言葉に俺は思わず情けない声を出してしまった。いつもはさらりと自然に離れていく筈なのに今日に限ってど直球で返答してきた。正攻法の平手打ちを食らった様に俺の頭はチカチカと疑問符が渦巻いている。
「ふふふっ」
そんな俺がおかしかったのか、鈴村さんは一瞬だけ目を丸くしたが次には明るい笑顔で声をあげて笑った。
「ーー今、なんて、言ったの?」
俺の返答が余程おかしかったのだろう、かなりツボった様で目尻に涙を浮かべて笑いを抑えつつ途切れ途切れに聞いてきた。
「いやあの。ちょっと咽(む)せただけ……」
何とか誤魔化すべく言い訳をしてみたが。
……カッコ悪い。正直に言おう。『ダサい』。
彼女の返答で、彼女の心の内を探っている事を見透かされた様でいたたまれない気持ちになった。
言葉の言い回しとか、感受性とか、他のおばちゃん連中とはどこか違う。『頭がおかしい』なんて聞いてたけど、そう言う次元ではなくただ単純に――俺、この人には敵わないかも知れない。そう直感した。
「雨、すごいね」
「ちょっと待ってて」
工場の出入り口からでると強風と豪雨に身体が叩きつけられた。
俺はすぐに自動車を鈴村さんに前まで移動させた。傘を手に彼女を連れて助手席に座らせる。その後運転席に乗り込んだが衣服は既にびしょ濡れになっていた。
「あの……」
鈴村さんが遠慮がちにハンドタオルを手に、
「頼りないけど使う?」
と、苦笑しながら差し出してきた。
「あ、サンキュー」
俺は短く言ってそれを受け取り、濡れた黒のカジュアルジャンパーを軽く拭いた。フードを脱ぐとポタポタと水滴がジーパンに滴(た)れた。
「あ~…冷てぇ」
情けなく呟くと横に座っていた鈴村さんがくすりと笑った。
「そんな笑うとこ、今?」
今日は笑われてばっかりの俺は、ちょっと眉をしかめ拗ねたように言ってみると、
「ううん、違う。何か面白いと思って」
「フォローになってない気がする……」
そう言いつつも俺もつられて笑ってしまった。
「家、どこだっけ?」
「あの、『惣菜屋』さんの近くだからそこで降ろしてもらえば」
彼女が言う『惣菜屋』は地元では有名な店だった。
今晩の夕飯を買いそびれたようで、彼女は店のすぐ前で車から降りた。
「送ってくれて、ありがとうございます」
と、律儀にもお礼を言われて頭を下げられる。俺は逆に恐縮してしまい、
「いいって、いいって」
照れ隠しに言って車窓を閉める。
鈴村さんは、この辺りに住んでるのか。
ほんの少しだけ、いや純粋に、彼女の家が気になった。
しかし――
鈴村さんは店の前で立ち、俺を見送るようにじっと見てる。
……くそっ!
あわよくば、ゆっくり発進しつつ鈴村さんが買い物終えたのを見計らい、家が知りたくて後をそっとつけようとしたのだが……良い具合に見透かされているようだ。
でも。不思議と悪い気はしなかった。
どこか新鮮な感覚が胸に広がり俺は車を走らせた――
「どうせ傘さして帰るなら送られた方が楽でしょ?」
多少強引とも思える俺の言い草に、鈴村さんはどう返答してくるのか期待している自分もいる。
――さて。今回はどうしてくるかな? するりと躱(かわ)されるか、目の前でシャッターが閉まるが如く距離を置かれるか。
こんな事考えてしまうのは、以前にも彼女からこの様な態度を取られたからだ。それのリベンジって訳では無いけど、俺の勝手な一人駆け引きみたいで正直少し楽しかった。
(俺ってもしかして意地悪い?)
とも思ったが、知らないフリをしよう。
「……んーと」
鈴村さんは癖なのだろうか顎に手を添えて少し俯き考える素振りを見せた。
「じゃあ、お言葉に甘えていいかな?」
微かな笑みを見せて俺の顔を覗き込んできた。
「ふぇ?!」
これまた予想外な言葉に俺は思わず情けない声を出してしまった。いつもはさらりと自然に離れていく筈なのに今日に限ってど直球で返答してきた。正攻法の平手打ちを食らった様に俺の頭はチカチカと疑問符が渦巻いている。
「ふふふっ」
そんな俺がおかしかったのか、鈴村さんは一瞬だけ目を丸くしたが次には明るい笑顔で声をあげて笑った。
「ーー今、なんて、言ったの?」
俺の返答が余程おかしかったのだろう、かなりツボった様で目尻に涙を浮かべて笑いを抑えつつ途切れ途切れに聞いてきた。
「いやあの。ちょっと咽(む)せただけ……」
何とか誤魔化すべく言い訳をしてみたが。
……カッコ悪い。正直に言おう。『ダサい』。
彼女の返答で、彼女の心の内を探っている事を見透かされた様でいたたまれない気持ちになった。
言葉の言い回しとか、感受性とか、他のおばちゃん連中とはどこか違う。『頭がおかしい』なんて聞いてたけど、そう言う次元ではなくただ単純に――俺、この人には敵わないかも知れない。そう直感した。
「雨、すごいね」
「ちょっと待ってて」
工場の出入り口からでると強風と豪雨に身体が叩きつけられた。
俺はすぐに自動車を鈴村さんに前まで移動させた。傘を手に彼女を連れて助手席に座らせる。その後運転席に乗り込んだが衣服は既にびしょ濡れになっていた。
「あの……」
鈴村さんが遠慮がちにハンドタオルを手に、
「頼りないけど使う?」
と、苦笑しながら差し出してきた。
「あ、サンキュー」
俺は短く言ってそれを受け取り、濡れた黒のカジュアルジャンパーを軽く拭いた。フードを脱ぐとポタポタと水滴がジーパンに滴(た)れた。
「あ~…冷てぇ」
情けなく呟くと横に座っていた鈴村さんがくすりと笑った。
「そんな笑うとこ、今?」
今日は笑われてばっかりの俺は、ちょっと眉をしかめ拗ねたように言ってみると、
「ううん、違う。何か面白いと思って」
「フォローになってない気がする……」
そう言いつつも俺もつられて笑ってしまった。
「家、どこだっけ?」
「あの、『惣菜屋』さんの近くだからそこで降ろしてもらえば」
彼女が言う『惣菜屋』は地元では有名な店だった。
今晩の夕飯を買いそびれたようで、彼女は店のすぐ前で車から降りた。
「送ってくれて、ありがとうございます」
と、律儀にもお礼を言われて頭を下げられる。俺は逆に恐縮してしまい、
「いいって、いいって」
照れ隠しに言って車窓を閉める。
鈴村さんは、この辺りに住んでるのか。
ほんの少しだけ、いや純粋に、彼女の家が気になった。
しかし――
鈴村さんは店の前で立ち、俺を見送るようにじっと見てる。
……くそっ!
あわよくば、ゆっくり発進しつつ鈴村さんが買い物終えたのを見計らい、家が知りたくて後をそっとつけようとしたのだが……良い具合に見透かされているようだ。
でも。不思議と悪い気はしなかった。
どこか新鮮な感覚が胸に広がり俺は車を走らせた――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる