7 / 19
6話 八つ当たりは程々に
しおりを挟む
6話 八つ当たりは程々に
――今年の仕事納めまであと残り一週間。
さすがに今回の『失恋』はキツかった。今までなんとか上手くやり過ごして一年はもったのに。
あー…、もう。
俺ホントにこの先彼女も結婚も出来ねぇじゃん。またエロビデオ観てシコシコ自慰行為で欲求解消すんの?
昨日の今日で失恋から立ち直れない俺は朝から最悪に不機嫌なオーラを出しまくりそれを全身から漂わせ、
『俺は今最高に機嫌が悪いので近寄らないでください』
と、周りに不機嫌アピールをしまくった。
いつもは仲良く雑談するおばちゃん連中も今日ばかりは黙っていてくれた。本当なら有難い事だったが、それが逆に癪に触り俺の怒りは最高潮に達してしまった。
俺はそんな怒りの矛先を、事もあろうか、鈴村さんにぶつけてしまう。しかも、理不尽な理由で。
彼女に捲し立てつつ怒鳴り散らした直後で我に返った。
「……」
鈴村さんは一瞬だけ押し黙ったが、
「えっと……ご、ごめんなさい……」
小さく震える声で言い、頭を下げると逃げるようにその場を後にしてしまった。
(……あ~…最っ悪にカッコ悪いわ、俺……)
と、後悔したのは言うまでもない。
「ーー聞いたよ。暖子ちゃんに八つ当たりしたんだって?」
昼休憩に気の合う職場仲間との行われる雑談タイム。落ち込んでる俺に声を掛けてきたのは秋野(あきの)さん。彼女は偶然にも鈴村さんの小中学校の同級生だった。また、鈴村さんの過去を知る唯一の情報屋おばちゃん。
他のおばちゃんと違って、悪口や噂などが大嫌いでただ真実のみ話してくれる。
「……はぁ。もう広まってるんですね、その話」
苦笑しつつ秋野さんに差し出された飴を無造作に口の中に放り込んだ。
あれから鈴村さんの俺に対する態度は、最初の頃と同じ様に【壁】が出来てしまったかの様に思える。業務上における必要最低限の会話しかしなくなり、何よりも鈴村さんから伝わる痛いくらいの重圧な壁――
いつしか、笑顔を見せなくなった鈴村さん。
(ああこれ。俺、嫌われたんだな……)
そう思わざるを得なかった。
そんな状態が三日程続き、その日は年末間際という事もあり俺は残業していた。十五分くらいして上司に急かされてタイムカードを切る。軽い溜息を吐きつつ工場内から出ると一面が真っ白だった。
「……え?」
その光景に一瞬だけ目を疑う。
――雪が、降っていた。
そう言えば今日、昼頃から本格的に降り出すって言ってたな。だから午後休の人が多かったのか。
しんしんと降り続ける雪を目に、ついでに道路を見れば約一センチほど積もっている。
……うわ。スタッドレスタイヤじゃないけど大丈夫か? チェーンもつけてねぇし。今更思っても仕方がないが。
ジャンバーのフードを被って足早に自動車に駆け寄ろうとしたその時。
横目に入った見覚えある小さい背中――
「……す、鈴村さんっ?!」
思いがけずに呼び止めてしまった。
「……ッ、びっくりしたぁ~ッ」
ビクッと身体を強張らせ歩みを止めて振り返る彼女。
「あ、佐藤くんも今帰りなの?」
いつもの笑顔で微笑む鈴村さん。
「ー…ッ」
その笑顔に、トクンッと胸が軽く跳ねた気がした――
――今年の仕事納めまであと残り一週間。
さすがに今回の『失恋』はキツかった。今までなんとか上手くやり過ごして一年はもったのに。
あー…、もう。
俺ホントにこの先彼女も結婚も出来ねぇじゃん。またエロビデオ観てシコシコ自慰行為で欲求解消すんの?
昨日の今日で失恋から立ち直れない俺は朝から最悪に不機嫌なオーラを出しまくりそれを全身から漂わせ、
『俺は今最高に機嫌が悪いので近寄らないでください』
と、周りに不機嫌アピールをしまくった。
いつもは仲良く雑談するおばちゃん連中も今日ばかりは黙っていてくれた。本当なら有難い事だったが、それが逆に癪に触り俺の怒りは最高潮に達してしまった。
俺はそんな怒りの矛先を、事もあろうか、鈴村さんにぶつけてしまう。しかも、理不尽な理由で。
彼女に捲し立てつつ怒鳴り散らした直後で我に返った。
「……」
鈴村さんは一瞬だけ押し黙ったが、
「えっと……ご、ごめんなさい……」
小さく震える声で言い、頭を下げると逃げるようにその場を後にしてしまった。
(……あ~…最っ悪にカッコ悪いわ、俺……)
と、後悔したのは言うまでもない。
「ーー聞いたよ。暖子ちゃんに八つ当たりしたんだって?」
昼休憩に気の合う職場仲間との行われる雑談タイム。落ち込んでる俺に声を掛けてきたのは秋野(あきの)さん。彼女は偶然にも鈴村さんの小中学校の同級生だった。また、鈴村さんの過去を知る唯一の情報屋おばちゃん。
他のおばちゃんと違って、悪口や噂などが大嫌いでただ真実のみ話してくれる。
「……はぁ。もう広まってるんですね、その話」
苦笑しつつ秋野さんに差し出された飴を無造作に口の中に放り込んだ。
あれから鈴村さんの俺に対する態度は、最初の頃と同じ様に【壁】が出来てしまったかの様に思える。業務上における必要最低限の会話しかしなくなり、何よりも鈴村さんから伝わる痛いくらいの重圧な壁――
いつしか、笑顔を見せなくなった鈴村さん。
(ああこれ。俺、嫌われたんだな……)
そう思わざるを得なかった。
そんな状態が三日程続き、その日は年末間際という事もあり俺は残業していた。十五分くらいして上司に急かされてタイムカードを切る。軽い溜息を吐きつつ工場内から出ると一面が真っ白だった。
「……え?」
その光景に一瞬だけ目を疑う。
――雪が、降っていた。
そう言えば今日、昼頃から本格的に降り出すって言ってたな。だから午後休の人が多かったのか。
しんしんと降り続ける雪を目に、ついでに道路を見れば約一センチほど積もっている。
……うわ。スタッドレスタイヤじゃないけど大丈夫か? チェーンもつけてねぇし。今更思っても仕方がないが。
ジャンバーのフードを被って足早に自動車に駆け寄ろうとしたその時。
横目に入った見覚えある小さい背中――
「……す、鈴村さんっ?!」
思いがけずに呼び止めてしまった。
「……ッ、びっくりしたぁ~ッ」
ビクッと身体を強張らせ歩みを止めて振り返る彼女。
「あ、佐藤くんも今帰りなの?」
いつもの笑顔で微笑む鈴村さん。
「ー…ッ」
その笑顔に、トクンッと胸が軽く跳ねた気がした――
0
あなたにおすすめの小説
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる