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6話 八つ当たりは程々に
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6話 八つ当たりは程々に
――今年の仕事納めまであと残り一週間。
さすがに今回の『失恋』はキツかった。今までなんとか上手くやり過ごして一年はもったのに。
あー…、もう。
俺ホントにこの先彼女も結婚も出来ねぇじゃん。またエロビデオ観てシコシコ自慰行為で欲求解消すんの?
昨日の今日で失恋から立ち直れない俺は朝から最悪に不機嫌なオーラを出しまくりそれを全身から漂わせ、
『俺は今最高に機嫌が悪いので近寄らないでください』
と、周りに不機嫌アピールをしまくった。
いつもは仲良く雑談するおばちゃん連中も今日ばかりは黙っていてくれた。本当なら有難い事だったが、それが逆に癪に触り俺の怒りは最高潮に達してしまった。
俺はそんな怒りの矛先を、事もあろうか、鈴村さんにぶつけてしまう。しかも、理不尽な理由で。
彼女に捲し立てつつ怒鳴り散らした直後で我に返った。
「……」
鈴村さんは一瞬だけ押し黙ったが、
「えっと……ご、ごめんなさい……」
小さく震える声で言い、頭を下げると逃げるようにその場を後にしてしまった。
(……あ~…最っ悪にカッコ悪いわ、俺……)
と、後悔したのは言うまでもない。
「ーー聞いたよ。暖子ちゃんに八つ当たりしたんだって?」
昼休憩に気の合う職場仲間との行われる雑談タイム。落ち込んでる俺に声を掛けてきたのは秋野(あきの)さん。彼女は偶然にも鈴村さんの小中学校の同級生だった。また、鈴村さんの過去を知る唯一の情報屋おばちゃん。
他のおばちゃんと違って、悪口や噂などが大嫌いでただ真実のみ話してくれる。
「……はぁ。もう広まってるんですね、その話」
苦笑しつつ秋野さんに差し出された飴を無造作に口の中に放り込んだ。
あれから鈴村さんの俺に対する態度は、最初の頃と同じ様に【壁】が出来てしまったかの様に思える。業務上における必要最低限の会話しかしなくなり、何よりも鈴村さんから伝わる痛いくらいの重圧な壁――
いつしか、笑顔を見せなくなった鈴村さん。
(ああこれ。俺、嫌われたんだな……)
そう思わざるを得なかった。
そんな状態が三日程続き、その日は年末間際という事もあり俺は残業していた。十五分くらいして上司に急かされてタイムカードを切る。軽い溜息を吐きつつ工場内から出ると一面が真っ白だった。
「……え?」
その光景に一瞬だけ目を疑う。
――雪が、降っていた。
そう言えば今日、昼頃から本格的に降り出すって言ってたな。だから午後休の人が多かったのか。
しんしんと降り続ける雪を目に、ついでに道路を見れば約一センチほど積もっている。
……うわ。スタッドレスタイヤじゃないけど大丈夫か? チェーンもつけてねぇし。今更思っても仕方がないが。
ジャンバーのフードを被って足早に自動車に駆け寄ろうとしたその時。
横目に入った見覚えある小さい背中――
「……す、鈴村さんっ?!」
思いがけずに呼び止めてしまった。
「……ッ、びっくりしたぁ~ッ」
ビクッと身体を強張らせ歩みを止めて振り返る彼女。
「あ、佐藤くんも今帰りなの?」
いつもの笑顔で微笑む鈴村さん。
「ー…ッ」
その笑顔に、トクンッと胸が軽く跳ねた気がした――
――今年の仕事納めまであと残り一週間。
さすがに今回の『失恋』はキツかった。今までなんとか上手くやり過ごして一年はもったのに。
あー…、もう。
俺ホントにこの先彼女も結婚も出来ねぇじゃん。またエロビデオ観てシコシコ自慰行為で欲求解消すんの?
昨日の今日で失恋から立ち直れない俺は朝から最悪に不機嫌なオーラを出しまくりそれを全身から漂わせ、
『俺は今最高に機嫌が悪いので近寄らないでください』
と、周りに不機嫌アピールをしまくった。
いつもは仲良く雑談するおばちゃん連中も今日ばかりは黙っていてくれた。本当なら有難い事だったが、それが逆に癪に触り俺の怒りは最高潮に達してしまった。
俺はそんな怒りの矛先を、事もあろうか、鈴村さんにぶつけてしまう。しかも、理不尽な理由で。
彼女に捲し立てつつ怒鳴り散らした直後で我に返った。
「……」
鈴村さんは一瞬だけ押し黙ったが、
「えっと……ご、ごめんなさい……」
小さく震える声で言い、頭を下げると逃げるようにその場を後にしてしまった。
(……あ~…最っ悪にカッコ悪いわ、俺……)
と、後悔したのは言うまでもない。
「ーー聞いたよ。暖子ちゃんに八つ当たりしたんだって?」
昼休憩に気の合う職場仲間との行われる雑談タイム。落ち込んでる俺に声を掛けてきたのは秋野(あきの)さん。彼女は偶然にも鈴村さんの小中学校の同級生だった。また、鈴村さんの過去を知る唯一の情報屋おばちゃん。
他のおばちゃんと違って、悪口や噂などが大嫌いでただ真実のみ話してくれる。
「……はぁ。もう広まってるんですね、その話」
苦笑しつつ秋野さんに差し出された飴を無造作に口の中に放り込んだ。
あれから鈴村さんの俺に対する態度は、最初の頃と同じ様に【壁】が出来てしまったかの様に思える。業務上における必要最低限の会話しかしなくなり、何よりも鈴村さんから伝わる痛いくらいの重圧な壁――
いつしか、笑顔を見せなくなった鈴村さん。
(ああこれ。俺、嫌われたんだな……)
そう思わざるを得なかった。
そんな状態が三日程続き、その日は年末間際という事もあり俺は残業していた。十五分くらいして上司に急かされてタイムカードを切る。軽い溜息を吐きつつ工場内から出ると一面が真っ白だった。
「……え?」
その光景に一瞬だけ目を疑う。
――雪が、降っていた。
そう言えば今日、昼頃から本格的に降り出すって言ってたな。だから午後休の人が多かったのか。
しんしんと降り続ける雪を目に、ついでに道路を見れば約一センチほど積もっている。
……うわ。スタッドレスタイヤじゃないけど大丈夫か? チェーンもつけてねぇし。今更思っても仕方がないが。
ジャンバーのフードを被って足早に自動車に駆け寄ろうとしたその時。
横目に入った見覚えある小さい背中――
「……す、鈴村さんっ?!」
思いがけずに呼び止めてしまった。
「……ッ、びっくりしたぁ~ッ」
ビクッと身体を強張らせ歩みを止めて振り返る彼女。
「あ、佐藤くんも今帰りなの?」
いつもの笑顔で微笑む鈴村さん。
「ー…ッ」
その笑顔に、トクンッと胸が軽く跳ねた気がした――
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