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7話 独特な感性を持つ女性(ひと)1
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7話 独特な感性を持つ女性(ひと)1
次第に本降りになってくる雪の中。
鈴村さんの笑顔を見た俺は、胸の高鳴りに合わせて一瞬だけ時が止まった様に感じた――
「ーーじゃあね、佐藤くん」
小さく手を振り踵を返そうとする鈴村さん。よく見れば彼女は傘を差していなかった。髪や肩に雪が纏わり付いていて、このままだとちょっと肉付きの良い雪だるまになってしまいそうだった。――鈴村さんに対してかなり失礼だが、事実だから仕方がない。
「す、鈴村さん。か、傘は?」
「あはは。忘れちゃった」
慌てて呼び止めた俺に鈴村さんは照れた様に笑った。久し振りに感じた、鈴村さんの独特な雰囲気に心が少し緩んだ。
「何それ」
一言(ひとこと)言ってつられて笑ってしまう。
「お昼から降るって分かってたんだけど、こんなに降るって思わなかったから」
言いつつ、空を見上げる彼女。
「――送っていきますよ」
自然と出た言葉。今度は鈴村さんの返事を待たずに彼女の手を掴んで強引に車に乗せてしまう。
「この前の、惣菜屋のとこでいいよね?」
運転しつつ助手席に座る鈴村さんに聞けな、
「うん」
子供の様に頷く彼女。
「へへ。また送って貰っちゃったね、ありがとう」
にこりと笑いこちらを向く。
その笑顔に心臓が弾けたが横目で流し見して平静さを保つべく前を向いた。
――特に会話はなく、ものの数分で目的の場所に到着してしまう。
車を狭い駐車スペースに停めて、
「鈴村さん、ちょっと時間ある?」
鈴村さんが動き出すタイミングの前に俺は彼女を呼び止めた。
「え? あ、うん」
きょとんとして頷く彼女。
――良かった。これで八つ当たりした時の事を謝れる。
あの一件以来、鈴村さんはどこか俺を避けている様に思えた。謝るきっかけすら無く今に至ってしまったし、何よりこんな状況で新年を迎えたくは無かったから。
「あの……」
いざ謝ろうとするとどうも恥ずかしくなってしまう。横目で鈴村さんを見れば、瞬きしつつこちらをじっと見てる。
「こ……っ、この間はごめん!」
視線に耐えれなくなった俺は彼女の顔を見ずに早口で言って頭を下げた。
「……」
一瞬押し黙る鈴村さん。反応がなく、そろりと上目遣いで見れば何やら眉間に皺を寄せている。――やっぱり怒っていたのだろうか?
そりゃそうだよな。理不尽に八つ当たりされたんだから、反論あって当然だよな。
しかし鈴村さんは、怒っている、と言う感じではなく顎に手をあて困惑した表情をしていた。
「……あ、あの。鈴村さん……?」
そんな彼女に不安になった俺までもが困惑し覗き込むようにすれば、
「あ、ごめん。ーー何?」
「……え、この間はごめんって……」
聞いていなかったのだろうか、俺の言葉に気付いたように言う鈴村さんに対し、俺は再度謝罪をした。
「えっと。なんか謝られる事あったっけ?」
「……え、あの俺三日くらい前に鈴村さんに八つ当たりしちゃったよね?」
本気で分かってない素振りを見せる鈴村さんに、俺は少し拍子抜けした。
(……もしかして鈴村さん、あれを八つ当たりされたって認識してないのか?)
今の鈴村さんの様子からそう思わざるを得なかった。
「ああ。あの時の事ね」
ようやく理解した鈴村さんは、自ら納得するように頷いていた。
「ーーあの時は、本当にごめん……」
自分でも情けないが、ここは素直に謝っておくべきだと思った。
「うーん……」
鈴村さんはまた顎に手を添えて何やら眉を顰めて考え込んでいる。
俺、何か難しい事言ったか?
ただ謝っただけだよな。
この人何でそんなに考え込んでいるんだろう。
俺は正直言って、鈴村さんのその態度が理解出来なかった。それと同時に何故なのかすごく気になった。
次第に本降りになってくる雪の中。
鈴村さんの笑顔を見た俺は、胸の高鳴りに合わせて一瞬だけ時が止まった様に感じた――
「ーーじゃあね、佐藤くん」
小さく手を振り踵を返そうとする鈴村さん。よく見れば彼女は傘を差していなかった。髪や肩に雪が纏わり付いていて、このままだとちょっと肉付きの良い雪だるまになってしまいそうだった。――鈴村さんに対してかなり失礼だが、事実だから仕方がない。
「す、鈴村さん。か、傘は?」
「あはは。忘れちゃった」
慌てて呼び止めた俺に鈴村さんは照れた様に笑った。久し振りに感じた、鈴村さんの独特な雰囲気に心が少し緩んだ。
「何それ」
一言(ひとこと)言ってつられて笑ってしまう。
「お昼から降るって分かってたんだけど、こんなに降るって思わなかったから」
言いつつ、空を見上げる彼女。
「――送っていきますよ」
自然と出た言葉。今度は鈴村さんの返事を待たずに彼女の手を掴んで強引に車に乗せてしまう。
「この前の、惣菜屋のとこでいいよね?」
運転しつつ助手席に座る鈴村さんに聞けな、
「うん」
子供の様に頷く彼女。
「へへ。また送って貰っちゃったね、ありがとう」
にこりと笑いこちらを向く。
その笑顔に心臓が弾けたが横目で流し見して平静さを保つべく前を向いた。
――特に会話はなく、ものの数分で目的の場所に到着してしまう。
車を狭い駐車スペースに停めて、
「鈴村さん、ちょっと時間ある?」
鈴村さんが動き出すタイミングの前に俺は彼女を呼び止めた。
「え? あ、うん」
きょとんとして頷く彼女。
――良かった。これで八つ当たりした時の事を謝れる。
あの一件以来、鈴村さんはどこか俺を避けている様に思えた。謝るきっかけすら無く今に至ってしまったし、何よりこんな状況で新年を迎えたくは無かったから。
「あの……」
いざ謝ろうとするとどうも恥ずかしくなってしまう。横目で鈴村さんを見れば、瞬きしつつこちらをじっと見てる。
「こ……っ、この間はごめん!」
視線に耐えれなくなった俺は彼女の顔を見ずに早口で言って頭を下げた。
「……」
一瞬押し黙る鈴村さん。反応がなく、そろりと上目遣いで見れば何やら眉間に皺を寄せている。――やっぱり怒っていたのだろうか?
そりゃそうだよな。理不尽に八つ当たりされたんだから、反論あって当然だよな。
しかし鈴村さんは、怒っている、と言う感じではなく顎に手をあて困惑した表情をしていた。
「……あ、あの。鈴村さん……?」
そんな彼女に不安になった俺までもが困惑し覗き込むようにすれば、
「あ、ごめん。ーー何?」
「……え、この間はごめんって……」
聞いていなかったのだろうか、俺の言葉に気付いたように言う鈴村さんに対し、俺は再度謝罪をした。
「えっと。なんか謝られる事あったっけ?」
「……え、あの俺三日くらい前に鈴村さんに八つ当たりしちゃったよね?」
本気で分かってない素振りを見せる鈴村さんに、俺は少し拍子抜けした。
(……もしかして鈴村さん、あれを八つ当たりされたって認識してないのか?)
今の鈴村さんの様子からそう思わざるを得なかった。
「ああ。あの時の事ね」
ようやく理解した鈴村さんは、自ら納得するように頷いていた。
「ーーあの時は、本当にごめん……」
自分でも情けないが、ここは素直に謝っておくべきだと思った。
「うーん……」
鈴村さんはまた顎に手を添えて何やら眉を顰めて考え込んでいる。
俺、何か難しい事言ったか?
ただ謝っただけだよな。
この人何でそんなに考え込んでいるんだろう。
俺は正直言って、鈴村さんのその態度が理解出来なかった。それと同時に何故なのかすごく気になった。
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