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17話 心に蓋をしたままで2
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17話 心に蓋をしたままで2
俺の心に、ちくりと何かが刺さった――
暖子(はるこ)さんの口から出た、『彼女さん』と言う言葉。何となく聞きたくなかった言葉。
他の人からは別に何も感じないが、暖子さんに言われるのはなんかちょっと気が引ける、と言うか、何て言うのか――とにかく暖子さんだけからは、『七海(ななみ)』に関する事を聞きたくないと思った。
その思いが態度に出たのだろうか、
「俺に、彼女が出来たから朝の時避けたってワケ?」
自分でも驚くほど低くて挑発的で嫌味を含んだ声色。
あ~…駄目だ。心に余裕が無くなるといつもこれだ。不機嫌になって周りに攻撃的になってしまう。学生時代の『癖』がまだ抜けきれていない。
こんな風にすぐに態度に出てしまう俺を見て暖子さんとはまた距離が離れていってしまうだろう。
俺はすぐに後悔したが、吐き出してしまった以上引くに引けない状態になっていた。
俺が自分の悪い癖にあれやこれやと考えを巡らせ少し俯いていると、暖子さんからは予想だにしない言葉が返ってきた。
「ん? 私、避けてたっけ?」
「え? だって朝挨拶したら逃げるようにトイレ行ったし……」
朝の状況を思い出した俺は、その時の不快感もあってか眉をしかめてしまった。
「ああトイレね!」
と。暖子さんも思い出したのか急に笑いはじめ、暖子さんのそんな態度に少しイラッときた俺は殊更不機嫌な声色で、
「なに?」
なんて聞き返してしまう。
俺……。
本当に短気すぎる、と思うがやっぱり表情を出してしまったので後に引けなくなって気まずくなってしまう。
そんな不穏な空気を作り出した俺の失態(?)を払拭するかのように、
「だって」
思い出し笑いをしているのか暖子さんはお腹を抱えて、
「雪斗くんタイミング良すぎっていうか悪すぎだよ! あの時私すごくトイレ行きたい時だったのに!」
言葉を途切れ途切れで喋りつつ、それでも笑いのツボにハマった暖子さん。
「いきなり『おはよう』って言われても私トイレって思ちゃってて」
「なにそれ」
暖子さんがあまりにも可笑しそうに笑っているので俺も先ほどの嫌な気持ちを忘れて釣られて笑ってしまっていた。
「『あ~もう早くトイレ』って思ってて多分私焦ってた」
笑いがおさまり少し気恥ずかしそうにする暖子さん。
「だから雪斗くんごめんね」
「ふぇ!? な、なにが?」
バツ悪そうな顔をして急に謝ってくる暖子さんに俺はびっくりして声が裏返ってしまった。
「え、朝のこと。私多分焦ってたから雪斗くん嫌な思いしたのかなぁって」
「ー…ッ、暖子さん……」
暖子さんのその言葉に俺はハッとした。
勘違いとはいえ、『避けられてる』と手前勝手な思い込みをした俺。それに何の打算もなく暖子さんは素直に謝ってくれた。
なんでこの人はいつも俺の『最高に欲しい言葉』をドンピシャにタイミングでくれるんだろうか――
俺の心に、ちくりと何かが刺さった――
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他の人からは別に何も感じないが、暖子さんに言われるのはなんかちょっと気が引ける、と言うか、何て言うのか――とにかく暖子さんだけからは、『七海(ななみ)』に関する事を聞きたくないと思った。
その思いが態度に出たのだろうか、
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こんな風にすぐに態度に出てしまう俺を見て暖子さんとはまた距離が離れていってしまうだろう。
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「ん? 私、避けてたっけ?」
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「ああトイレね!」
と。暖子さんも思い出したのか急に笑いはじめ、暖子さんのそんな態度に少しイラッときた俺は殊更不機嫌な声色で、
「なに?」
なんて聞き返してしまう。
俺……。
本当に短気すぎる、と思うがやっぱり表情を出してしまったので後に引けなくなって気まずくなってしまう。
そんな不穏な空気を作り出した俺の失態(?)を払拭するかのように、
「だって」
思い出し笑いをしているのか暖子さんはお腹を抱えて、
「雪斗くんタイミング良すぎっていうか悪すぎだよ! あの時私すごくトイレ行きたい時だったのに!」
言葉を途切れ途切れで喋りつつ、それでも笑いのツボにハマった暖子さん。
「いきなり『おはよう』って言われても私トイレって思ちゃってて」
「なにそれ」
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「『あ~もう早くトイレ』って思ってて多分私焦ってた」
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「だから雪斗くんごめんね」
「ふぇ!? な、なにが?」
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「え、朝のこと。私多分焦ってたから雪斗くん嫌な思いしたのかなぁって」
「ー…ッ、暖子さん……」
暖子さんのその言葉に俺はハッとした。
勘違いとはいえ、『避けられてる』と手前勝手な思い込みをした俺。それに何の打算もなく暖子さんは素直に謝ってくれた。
なんでこの人はいつも俺の『最高に欲しい言葉』をドンピシャにタイミングでくれるんだろうか――
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