プロクラトル

たくち

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砂の世界

辺境の戦

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 シン達がウェンズ共和国に滞在している間、ラピス王国の辺境では、皇国との争いが激化していた。

 激しさを増すに連れ、国境の兵士達だけでは対応出来なくなった為、赤姫達も戦場に駆り出されていた。

「クレア、戦況はどう?」

 赤姫団長ユナがナンバー3のクレアに戦況の確認をする。
 赤姫では主にクレアが戦場の指揮をとっている、ユナもクレアを信頼している為戦場ではクレアの言う事を守っている。

「西の戦闘はこちらの勝ちがほぼ決まっています、団長は西へ向かって下さい。ノエル達が向かっていますが戦力の差があります」

「わかったわ」

 クレアの指示を聞き西へ向かうユナ、ノエル達に追い付くにはまだ時間がかかる。

*******

「ちっ」

 戦場に到着し、舌打ちをする赤い長衣を着た黒い髪の女性、赤姫メンバーのノエルだ。

 セミロングの髪を持ち、片目を前髪で隠している隠れていない目に写るのは苦戦する王国軍の姿だ。


「めんどくさい」

 そう呟き戦場に走っていく、その手には双剣が握られている。

「下がって、私が参戦を支える」

 苦戦する兵士にそう告げると次々と敵を切り裂いていく、女性に任せる事など出来ない。
 最初そう思っていた兵士達だったが赤い長衣を見ると素直に下がっていく。
 その目は赤姫の到着を喜びそして舞うように双剣を振るい敵を切り裂いくノエルが頼もしく見えていた。

 ノエルの活躍により敵を押し返し戦況が有利になった王国軍だっが、すぐにこの有利は覆される事になる。

「あれは?まさか風帝隊か⁉︎」

 皇国には皇国騎士団最大戦力と称される2つの部隊がある。

 1つは常に皇帝の側に着き、難攻不落と言われている皇国の最強部隊、守護部隊”守帝”
 もう1つは皇国軍最強の男、序列4位”風帝”ニグル・ウィーゲ率いる殲滅部隊隊長の2つ名を掲げる風帝隊だ。

 その皇国殲滅部隊がノエル達の戦場に現れた。

「何で風帝隊がこんなとこ来てんのよ」

 またも舌打ちをしつつ悪態を吐くノエル、その足は現れた風帝隊の元へ向かっている。

「2人?」

 現れた風帝隊は2人しかいなかった。
 だがノエルが1人で戦況を覆したように風帝隊の2人も次々と王国軍を屠っている。

「その格好、赤姫だな?それにその黒髪お前がノエルか?」

 近づいたノエルに気付いた風帝隊の1人がノエルに問いかけた。
 だが話をしている余裕のないノエルはそのまま双剣を斬りつける。

「おっと、話ぐらいしてくれないのか?私は風帝隊のルイナ、こっちはダストだ」

 ノエルが斬りつけた双剣を躱した女は距離を取り、ノエルに対し牽制をしつつ話しかける。

「そう、あなたの言う通り私はノエル。めんどくさい、何で風帝隊がいるのよ」

 舌打ちをしつつ話をするノエル、早く倒したかったが王国軍が徹底する時間を稼ぐ為少しでも注意をひきつけたかった。

「やっぱりな、ノエルお前にはうちの隊員を殺された恨みがあるここで死んでもらうよ」

 ルイナという女性はその手に持った棒をノエルに振るう、左手の県で受け止めたノエルだったがすぐに失策に気付く。

(三節棍⁈)

 受け止めた棒の先が曲がりノエルの頭部を襲う。
 寸前のところで上半身を屈め回避するノエルだったが、ルイナの左足が蹴り込まれ吹き飛んでしまう。

「ノエル!」

 共に戦っていた王国軍のリーグ将軍が受け止める。

「っ!ありがとう」

 リーグにお礼を言い体制を整えたノエルはサイドルイナに向かい合う。

「2対1では不利だ。俺も加勢しよう、片方の足止めぐらいは出来るはずだ」

 重槍を構えリーグが加勢しようとするしかし

「ダメ、あなたがいなければ他の王国軍が殺られるわ」

 リーグがこの戦いに参加すると王国軍の指揮がなくなり他の皇国軍に抵抗出来なくなってしまう。
 それをわかっているリーグだったが赤姫とはいえ女性に無理をさせたくない。

「だが君は大丈夫なのか?敵はあの風帝隊だ2対1ではさすがに厳しいだろ」

 リーグの言う通りこの状況はまずい、あのルイナとかいう女ならノエル1人でも勝てるだろうが2人同時はさすがに厳しい。

「団長がこっちに向かってると連絡があった。それまで時間くらいなら稼げる」

 ノエルは先ほどクレアから連絡が来ていた。
 その為時間稼ぎに徹する事でユナの到着を待つ、ユナならばあの2人相手にも勝つとわかっているので最善の策だろう。

「わかった、だが無理はしないでくれ」

 自分の力が及ばない事がわかっていたリーグだがノエルにかかる負担を軽減できない事に悔しさを感じる。

「大丈夫、私はこんなとこで死ねないの」

 そう言って走り出すノエル、向かったのはルイナのところだ。走った勢いで高く跳躍しルイナの背後に回ったノエルは双剣を叩き込む。

「っぐ!速い」

 スピードではルイナはノエルに劣っているのだろう。
 ギリギリのところで三節棍で双剣を受け止める、しかしノエルの攻撃は終わらない、さらに双剣を叩き込み徐々にルイナに傷をつけていく。

「ダスト!」

 たまらずダストに協力を仰ぐ、ダストはその手に持った槍を勢いよくノエルに突き出す。

「ちっ!」

 今度はノエルが劣勢になる、スピードで勝るノエルだが、ルイナとダストに対し防御するので精一杯になる。

「ノエル!」

 だが見かねたリーグが戦場に落ちていた槍をダストに投擲した。
 不意を突かれたダストは思わず距離を取ってしまい、さらにルイナの視線も槍を飛ばしたリーグに向く。

「てめえ、ザコが邪魔を!」

 だごその隙をノエルは逃さない、すぐさまルイナを双剣で斬りつける。
 怒りにより反応の遅れたルイナは右腕を切り裂かれる。

「っぐ!」

 右腕を切り裂かれ、左手しか使えなくなったルイナ、またもノエルに攻められるがダストが戻り何とかさらなる深手は追わずに済んだ。

「すまないダスト」

 ダストにお礼を言い下がるルイナ、ノエルにはダストが槍で攻撃をする。

 ルイナに深手を負わせたノエルだが、2対1の時に受けた傷が重なりすぎた事で動きが鈍くなる。
 スピードでの優位がなくなり、ダストに押し込まれてしまう。
 力ではダストが上らしくノエルは徐々に追い込まれていく。

 ノエルにとどめを刺すべく槍を引き突きを放とうとするダストだったがその槍がノエルに刺さる事はなかった。

(何だ⁈槍が動かん)

 振り返った先に見えたのは、燃えるような赤い髪に赤い長衣を纏った女性がダストの槍を掴んでいた。

「ノエル、遅くなったわね大丈夫?ってそんなにボロボロじゃ大丈夫じゃないわね、よく頑張ったわあとは任せなさい」

 赤い髪の少女ユナが戦場に登場した。

「団長‼︎」

 その姿を見たノエルの力が抜ける。
 先ほどまで必死であがいていたが、ユナが来た事による安心感が体から力を抜く。

 ユナが来た。
 たったそれだけの事だったがそれだけで勝利を確信するほどその存在はノエル達赤姫にとって大きかった。

「ちっ!」

 今度はダストが舌打ちをし蹴りを放つ、だがユナはこんな行動を許さない。

「何よ」

 そう短く言い放ち掴んだ槍を縦にフルスイングする。
 槍を話す訳にいかないダストは地面に叩きつけられる。そして地面にうずくまるダストに向かいユナの蹴りが放たれる。
 先ほどノエルが吹き飛ばされた時とは比べものにならならスピードでダストは戦場から離脱する。

「もう終わり?つまらないわ」

 たった2発の攻撃でダストを退けたユナに驚く王国軍だったが、ルイナは違った。

 一瞬でユナの背後に回り渾身の突きを放つ、これまでで最高の一撃。ダストが倒された事の恨みも乗せた一撃はノエルの目にもギリギリ捉えられたが、確かにこれまでで最高の一撃だ。

 だがルイナ渾身の突きもユナには通用しない。

 背後からの一撃にただ首を曲げるだけの最小限の動作で躱しルイナの腹部にカウンターの拳を叩き込む。

「だから何がしたいのよ」

 苛立ち気味に言うユナの言葉にルイナは返事が出来ない、ユナの一撃を受けたルイナの顔は青白さを通り越し紫色になっていた。
 ただ腹部に叩き込まれた攻撃に耐える事も出来ず何も動けなくなっていた。

「さよなら」

 そう言ったユナは、動けないルイナの首を剣で切り飛ばす。

 まさしく圧勝したユナに王国軍はあっけにとられていたが、リーグ将軍の勝どきを聞き雄叫びをあげる。

「ほら薬飲みなさい」

 傷付いたノエルに治癒薬を飲ませるユナ、するとノエルの体が輝き傷が治る。
 治癒薬は貴重だがノエの傷は思っていた以上に深かった。

「助かりました、ありがとうございます」

 そうお礼を言うノエルだが

「団員を助けるのは当たり前の事よ、お礼なんていらないわ」

 こうして辺境の戦は王国軍が勝利していた。

*******

 共和国への策略が露見し、同盟を破棄された皇国の使者達は共和国を離れ王国辺境へと向かっていた。

「まさか王国の者に魔術が解除されるとはな、失態だ、ルイナとダストはどうした?」

 風帝隊隊長、皇国の最高戦力”風帝”ニグル・ウィーゲは連れていた文官に問いかける。

「どうやら先ほどから連絡がありません。まさかとは思いますが戦闘中なのでしょうか?」

 そう、ニグルはルイナとダストを連れ共和国まで来ていたのだ。
 しかし共和国から戻る途中からルイナ達からの連絡が途絶えていた。

「かもしれないな、仕方ない辺境の争いに介入する」

 皇国最高戦力戦力が王国軍、そして赤姫のいる戦場へと足を進めていた。
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