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砂の世界
変化
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「あはっ!あはははは」
何もない、空も海も大地も人も、何もない世界で神は笑う。
「まず1人、まず1人だ。良くやったよシン、さあここからだ。次はどいつにしてやろうか、あはははは」
ただ、ひたすらに笑い続ける。
狂気の野望に向かい、神は歩み始める。
神の傍らには平伏した人の姿がある。
高めの身長に一切の無駄の無い肉体は、見るもの全てを魅了するだろう。
だがかつて、その姿を見たものを全て魅了したであろう姿はそこには無い。
その両手は拘束され、互いの足は鎖で繋がれ自由に歩く事は出来ないだろう。
そして、その首には首輪がされていた。
首輪から繋がる鎖は笑う神の手に収まっている。
薄茶色のウェーブした長く美しかった髪は乱れ、所々引き千切られたような跡がある。
吊り上がり見たものを威圧してきた瞳は屈辱に涙を滲ませていた。
その美しかった肉体を引き立たせていたであろう衣服は引き裂かれ、その美しい肉体を隠す事をしておらず、もはや何も身に纏っていないのと同じだ。
「貴様!神である私にこんな事をして許されると思っているのか!」
自らに屈辱を与え笑う神に向け言う、だが答えは返ってこない。
代わりに帰って来たのは笑うのを止め冷酷な目でこちらを向く神の蹴りだった。
「うっぐぅぁ‼︎」
顔を蹴られ吹き飛ぶ事も許されず、首輪の鎖で引き寄せられまた蹴られる。
彫刻のように美しかった顔は、醜く腫れ上がってしまう。
「黙れよ、駄犬、ミアリス、君はもう神では無い、それに誰が話して良いと許可した」
冷たい冷酷な声が、ノアから発せられる。
その声には普段の凛とした、それでいて可愛らしさは感じられない。
敵、特にかつて自分を封じ込めた神に対しては、ノアはどこまでも冷酷になるのだ。
頭を踏まれ床に這いつくばる、グリグリと頭を踏む足に抵抗出来ず苦痛に呻き越えを上げる。
「お前の代行者はボクの代行者に負けた。その時点でお前は神の座を下された、生きているのを感謝するんだな」
踏みつけた足を退け、ミアリスの背中に腰をかける。
「ほら、散歩だ、歩け歩け、あはははは」
屈辱に顔を歪ませ、元砂の世界の神ミアリスは四つん這いで歩き出す。
その姿に神としての威厳など、どこにも無い。
*******
ーーー空の世界エアリアーーー
「何だ?何か起きたのか?」
海と大地の無い世界。
ただ空が広がっている世界で男が呟く。
空中都市ラポリア、さらに浮かぶ様々な空中都市の1つに男はいた。
「また、奴が動き出したのか?」
感じた違和感に男は動き出す、魔導具の翼を羽ばたかせ空を翔ける。
空を飛行する魔獣達は男から遠ざかるように、一斉に飛び去って行く。
まるでけして抗えぬ天災から逃れるように。
羽ばたく男の手首には天翔る翼をモチーフにした紋章と2の数字。
序列2位”天帝”ラドラス・エルドラス
彼の行く先は、誰にもわからない。
*******
ーーー炎の世界ボルニカーーー
そこは、ただひたすらに噴火が起こっていた。
流れ出す溶岩が冷えて固まる事をせず、真紅の川が流れ、空からは炎の雨が降り注ぐ。
灼熱の大地に一際高くそびえる山脈で、一匹の龍が目を覚ます。
長い眠りから覚めた龍は、世界の異変に目を細める。
その赤黒い鱗は脈を打ち、まばらに光を放つ。
その鱗はあらゆる熱を遮断し、あらゆる武器を破壊する。
その龍は全ての生物の頂点に立つ最強の生物だった。
かつて神々の争いに唯一参加せず、ただひたすらに己を磨き続け、神と同格とまで崇められるまで成長した唯一の生物。
世界の理の外にいる龍は繰り返される争いを嘆き、待つ事にした。
いずれ真に世界に平和をもたらす存在が、この”龍王”ギルドラドのもとを訪れるのを。
*******
ーーー森の世界フォレオンーーー
「うニャーーー!」
世界樹の根元にある食堂で、1人の獣の耳を持った人間が叫び声をあげる。
その声にそこにいた様々な動物の耳を持つ人間達が振り返り、それぞれが耳をピクピク動かした。
そして誰もが何かを感じ取り首を傾げる、声を上げた者がおかしいのでは無い。
全ての人が異変を感じ取った。
それでもその何かが、誰にもわからない。
だが1人の水色の髪の女性のみ気付いていた。
その女性は占い師だった、だからこそ気付いたのだ。
いずれこの自然の豊かな世界に、1人の黒髪の青年が訪れるのを。
微笑みを浮かべ未来を写す水晶をしまう。
(早く来て!)
名も知らぬ青年の助けになる為、彼女は生き続けている。
*******
ーーー海の世界アクィラーーー
そこは一面が水に溢れている。
海と呼ばれるその中には、魚達が自由に泳ぎまわっている。
その魚達に混ざるように人も泳いでいた。
耳と呼ばれる場所はヒレのような形をし、指の間には薄く透明な膜を自由に出し入れさせていた。
足首からもヒレのような形をした物が生えている。
彼らは海を自在に泳ぎ、生活の為食料を捕獲する。
そんな海の世界の海中にある都市の一角で、若い男女が集められていた。
その前に立つ1人の老人は嘆く、また望む人材が見つからなかったからだ。
だが老人は異変に気付く、この7つの世界のどこかで何かが起きた事に。
しかし、老人はすぐに考えるのを止めた。
まず、老人がするべきはこの世界に現れた新たなる魔王を倒さねばならない事だった。
*******
ーーー氷の世界アイシアーーー
世界全てが氷に覆われたこの世界は、創世より氷に封じられた遺物が数多く眠っていた。
一攫千金の夢を見て、この世界には強者達が我先にと足を踏み入れている。
入り口に覆われた氷を溶かし遺跡の探索、まだ見ぬ財宝や食材、生物、そして新たな鉱石を持った鉱山に地下に封じられた太古の土地や建造物。
夢を求め、未知の発見に心躍らす冒険者達の最終到達地。
冒険者達にとって、この氷の世界は最古の歴史の眠る最高の仕事場だ。
生まれた世界を飛び出し、夢を追い求めた者達は全てこの世界に辿り着く。
そんな冒険者達の集う冒険者組合で、事件は起こっていた。
「うっ、ぐわああああ」
突如何かを察した女性が叫び声を上げた。
突然の出来事に組合にいた者達は立ち上がり、異変に目を向ける。
そしてその叫び声の主に気が付くと、我先にと建物の外に出た。
彼らは知っていたのだ。
彼女が原因不明の呪いを、その身に宿している事に。
そしてその呪いの暴走を、彼女が全力で抑えていた事を。
暴走すれば世界が滅ぶ、彼女は常に言っていた。だが幸いその呪いの暴走を、彼女が抑えられなかった事はない。
その女性は、冒険者の中でも最高のSランクのパーティーに所属し、その中でも最も強者だった。
桃色の髪に大き目の瞳の彼女は冒険者のアイドルでもあった。
だが、ある日から彼女は変わった。
パーティーメンバーの話によると、ガラスのように透き通った青色の太古の双剣を手にした時から変わったらしい。
太古の双剣に呪いを受けたのだ。
右眼が制御不能な魔眼に変わり、左腕は己の意思と異なる動きをする。そして謎の人物が彼女を支配しようと、夜が来るたびに彼女の中で争いが起こるという。
心配した仲間が彼女の治療の為、様々な診察を受けさせた。
だが異常は見つからず、全ての治療は太古の呪いを消せなかった。
原因不明の呪いをもたらした太古の双剣の破棄を求めたが、それは出来ないようだ。
未だ呪いは残っている。
彼女は暴走を封じる為右眼を眼帯で封印し、左腕は包帯で拘束している。
「はぁっはぁっ、鎮まったか」
人の消えた建物で彼女は呟く、そして今日の戦闘を記録しその場を立ち去る。
何もない、空も海も大地も人も、何もない世界で神は笑う。
「まず1人、まず1人だ。良くやったよシン、さあここからだ。次はどいつにしてやろうか、あはははは」
ただ、ひたすらに笑い続ける。
狂気の野望に向かい、神は歩み始める。
神の傍らには平伏した人の姿がある。
高めの身長に一切の無駄の無い肉体は、見るもの全てを魅了するだろう。
だがかつて、その姿を見たものを全て魅了したであろう姿はそこには無い。
その両手は拘束され、互いの足は鎖で繋がれ自由に歩く事は出来ないだろう。
そして、その首には首輪がされていた。
首輪から繋がる鎖は笑う神の手に収まっている。
薄茶色のウェーブした長く美しかった髪は乱れ、所々引き千切られたような跡がある。
吊り上がり見たものを威圧してきた瞳は屈辱に涙を滲ませていた。
その美しかった肉体を引き立たせていたであろう衣服は引き裂かれ、その美しい肉体を隠す事をしておらず、もはや何も身に纏っていないのと同じだ。
「貴様!神である私にこんな事をして許されると思っているのか!」
自らに屈辱を与え笑う神に向け言う、だが答えは返ってこない。
代わりに帰って来たのは笑うのを止め冷酷な目でこちらを向く神の蹴りだった。
「うっぐぅぁ‼︎」
顔を蹴られ吹き飛ぶ事も許されず、首輪の鎖で引き寄せられまた蹴られる。
彫刻のように美しかった顔は、醜く腫れ上がってしまう。
「黙れよ、駄犬、ミアリス、君はもう神では無い、それに誰が話して良いと許可した」
冷たい冷酷な声が、ノアから発せられる。
その声には普段の凛とした、それでいて可愛らしさは感じられない。
敵、特にかつて自分を封じ込めた神に対しては、ノアはどこまでも冷酷になるのだ。
頭を踏まれ床に這いつくばる、グリグリと頭を踏む足に抵抗出来ず苦痛に呻き越えを上げる。
「お前の代行者はボクの代行者に負けた。その時点でお前は神の座を下された、生きているのを感謝するんだな」
踏みつけた足を退け、ミアリスの背中に腰をかける。
「ほら、散歩だ、歩け歩け、あはははは」
屈辱に顔を歪ませ、元砂の世界の神ミアリスは四つん這いで歩き出す。
その姿に神としての威厳など、どこにも無い。
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ーーー空の世界エアリアーーー
「何だ?何か起きたのか?」
海と大地の無い世界。
ただ空が広がっている世界で男が呟く。
空中都市ラポリア、さらに浮かぶ様々な空中都市の1つに男はいた。
「また、奴が動き出したのか?」
感じた違和感に男は動き出す、魔導具の翼を羽ばたかせ空を翔ける。
空を飛行する魔獣達は男から遠ざかるように、一斉に飛び去って行く。
まるでけして抗えぬ天災から逃れるように。
羽ばたく男の手首には天翔る翼をモチーフにした紋章と2の数字。
序列2位”天帝”ラドラス・エルドラス
彼の行く先は、誰にもわからない。
*******
ーーー炎の世界ボルニカーーー
そこは、ただひたすらに噴火が起こっていた。
流れ出す溶岩が冷えて固まる事をせず、真紅の川が流れ、空からは炎の雨が降り注ぐ。
灼熱の大地に一際高くそびえる山脈で、一匹の龍が目を覚ます。
長い眠りから覚めた龍は、世界の異変に目を細める。
その赤黒い鱗は脈を打ち、まばらに光を放つ。
その鱗はあらゆる熱を遮断し、あらゆる武器を破壊する。
その龍は全ての生物の頂点に立つ最強の生物だった。
かつて神々の争いに唯一参加せず、ただひたすらに己を磨き続け、神と同格とまで崇められるまで成長した唯一の生物。
世界の理の外にいる龍は繰り返される争いを嘆き、待つ事にした。
いずれ真に世界に平和をもたらす存在が、この”龍王”ギルドラドのもとを訪れるのを。
*******
ーーー森の世界フォレオンーーー
「うニャーーー!」
世界樹の根元にある食堂で、1人の獣の耳を持った人間が叫び声をあげる。
その声にそこにいた様々な動物の耳を持つ人間達が振り返り、それぞれが耳をピクピク動かした。
そして誰もが何かを感じ取り首を傾げる、声を上げた者がおかしいのでは無い。
全ての人が異変を感じ取った。
それでもその何かが、誰にもわからない。
だが1人の水色の髪の女性のみ気付いていた。
その女性は占い師だった、だからこそ気付いたのだ。
いずれこの自然の豊かな世界に、1人の黒髪の青年が訪れるのを。
微笑みを浮かべ未来を写す水晶をしまう。
(早く来て!)
名も知らぬ青年の助けになる為、彼女は生き続けている。
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ーーー海の世界アクィラーーー
そこは一面が水に溢れている。
海と呼ばれるその中には、魚達が自由に泳ぎまわっている。
その魚達に混ざるように人も泳いでいた。
耳と呼ばれる場所はヒレのような形をし、指の間には薄く透明な膜を自由に出し入れさせていた。
足首からもヒレのような形をした物が生えている。
彼らは海を自在に泳ぎ、生活の為食料を捕獲する。
そんな海の世界の海中にある都市の一角で、若い男女が集められていた。
その前に立つ1人の老人は嘆く、また望む人材が見つからなかったからだ。
だが老人は異変に気付く、この7つの世界のどこかで何かが起きた事に。
しかし、老人はすぐに考えるのを止めた。
まず、老人がするべきはこの世界に現れた新たなる魔王を倒さねばならない事だった。
*******
ーーー氷の世界アイシアーーー
世界全てが氷に覆われたこの世界は、創世より氷に封じられた遺物が数多く眠っていた。
一攫千金の夢を見て、この世界には強者達が我先にと足を踏み入れている。
入り口に覆われた氷を溶かし遺跡の探索、まだ見ぬ財宝や食材、生物、そして新たな鉱石を持った鉱山に地下に封じられた太古の土地や建造物。
夢を求め、未知の発見に心躍らす冒険者達の最終到達地。
冒険者達にとって、この氷の世界は最古の歴史の眠る最高の仕事場だ。
生まれた世界を飛び出し、夢を追い求めた者達は全てこの世界に辿り着く。
そんな冒険者達の集う冒険者組合で、事件は起こっていた。
「うっ、ぐわああああ」
突如何かを察した女性が叫び声を上げた。
突然の出来事に組合にいた者達は立ち上がり、異変に目を向ける。
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その女性は、冒険者の中でも最高のSランクのパーティーに所属し、その中でも最も強者だった。
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未だ呪いは残っている。
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