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砂の世界
ようやく見つけた
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「ふぅ、終わったな」
ニグルの死後、残った騎士達を一蹴し、漆黒の大鎌を腕輪に戻すと息を吐きこちらへと向かってくる。
圧勝、まさにその言葉通りの勝利だった。
あれだけ自分が苦戦した敵の魔術と、近接戦闘の連携攻撃をものともせず、敵を全滅させた。
ニグルに対しては、ダメージで動きが鈍くなっていたとはいえ、シンの言葉通りならニグルにわざと攻撃を避けさせた上で、自分は一切の傷を負わなかった。
そして、隊長を失った皇国軍の騎士と魔術師は、なす術のなくあの大鎌の餌食となった。
3の数字を見た時は、まさかとは思った。
強いだろうと前から思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
自分が負けた相手に、こうもあっさりと勝たれてしまってはもう認めるしかない。
この青年は、ユナよりも強かった。
悔しさもある、自分の勝てなかった相手が、なす術もなく倒されたのだ。
それはそのまま自分も、この青年になす術もなく負けるという事だ。
(なんだ、やっぱり居るじゃない)
だが、それ以上に嬉しかった。
小さい頃からずっと心の奥にしまっていた、叶わないと思っていたはずの想い。
(私よりずっと強い人、そして私を守ってくれる人、見つけたよ)
その青年は、自分を守ると言ってくれた。
そしてその青年は自分よりもずっと強い人、その青年は自分の好きな人だった。
誰にでもなく、自分自身に言い聞かせた、見つけたよ、と
ちょっと遅かった、自分を守ると言いながらどこかに消えてしまった事を怒っていた。
でも、最後はちゃんと守ってくれた。
それが何よりも嬉しかった。
「立てるか?」
「まだちょっと無理、おんぶ」
両手を広げそう答える、本当は歩くぐらいは何とも無いぐらい回復している。
でも、このぐらいのわがままは許してほしい。
「しょうがないな」
苦笑いを浮かべ目の前にしゃがみこんでくる。
「ちゃんと掴まってろよ」
その背中にしっかりと掴まる、絶対に離してやるもんか、この背中は誰にも渡さない。
胸が当たって変な声を出していたが、そんな事は気にしない、少しくらいは許してあげよう。
掴まった背中はとても大きく、そして逞しく安心出来た。
ちょっと眠くなってしまうくらいだった。
でも眠る前に一つだけ、文句を言いたい事があった。
「ねぇ、今までどこにいたのよ」
開戦から行方不明になったと聞いてから、どれだけ心配した事か。
何も言わずにいなくなった事が、すごく腹立たしい。
「ああ、それな、リリアナの作戦だ」
「作戦?」
他の女の名前が出てきた事にムッとする。
この言い方だと自分は知らないのに、あの王女は知っていると言っている。
自分に知らせない事も怒るが、あの王女一緒に心配したフリして実は知っていたのだ。
「そう、作戦だ、あのニグルって奴を引っ張り出す為に俺をエサにあの場所に誘い込んだんだ」
その作戦を知っていたのはシンとノア、そして立案者のリリアナだけだった。
**
「シン様、少しだけ2人で大切な話がしたいのです」
その作戦は開戦前にユナを連れ、リリアナの部屋に作戦会議を行った時にリリアナから告げられた。
「シン様には行方を眩ませて頂きたいと思います」
リリアナの作戦はこうだった。
まず敵の目標である代行者のシンは姿を消す。
その行方は味方にも知らせない。
そうする事で万が一、敵に味方が捕らえられてもシンの行方はわからない。
それを確実にする為、放った諜報員の近くでシンは戦闘をして、跡がわからないように行方を眩ます。
シンの動向も探させた諜報員は、その戦闘を見てシンの行方不明を本陣に通信し、その通信を全軍に伝える。
そしてシンが皇国軍の騎士の鎧を奪い、皇国軍に紛れて西の山岳地帯に代行者がいると情報を流す。
**
「こんな感じだ、まあユナとナナが想像以上に行動したのは完全に誤算だったな」
ムカッとしたので、一先ずその頭を軽く叩く。
初めから教えてくれたら協力したし、あんな思いもしなくて良かったのだ。
「ニグルが思ってたよりも早く行動したのも誤算だったな、予定じゃもうちょっと戦争が長引くはずだったし」
ナナの予想以上の補給線の殲滅速度は知っていたし、あの子もシンの事を真剣に探していたのだろう。
「あの鎌、反則じゃない?」
一つだけと思っていたのに、まだ聞きたい事はたくさんあった。
思い出すのは魔術も鎧も武器も、全部消滅させたあの漆黒の大鎌だ。
シンは確かに強かった。
あの大鎌の攻撃は鋭く速い、そして足捌きや大鎌を自在に操る技術も凄い。
自分では大鎌をあそこまで使いこなせる自信がない。
「ああ、確かに強いんだけどいろいろ制限もあるんだ」
どうやら、あの鎌は1度には全ての消滅出来ないらしい。
同時に攻撃されたら片方は消滅しないで、そのまま残るそうだ。
絶え間なく攻撃を続ける事をしていたニグル達は同時には攻撃してなかった、あの連携が逆に良くなかったのだ。
他にもあるそうだが、余程の事がない限り心配ないだろう。
最初は扱いきれず、周りにある色んな物を消滅させてしまったらしい。
その大きさ故、周りを巻き込む可能性が大きいみたいだ。
「あっそうだ、最後の方に言ってた酸欠?って何よ?」
「酸欠?」
「言ってたじゃないニグルの周りの空気を無くしたとか」
「ああ、酸欠ってのは酸素欠乏症の事だ」
「酸素って何よ、聞いた事ないわ」
「ん?この世界の人は知らないのか?まあいいやそれなら呼吸する事からだな、いいか?人間ってのは・・・・」
風帝を倒し、ユナをおぶりながらシンは歩き続ける。
その後も2人は他愛のない会話をしながらリリアナやエルリック、クレア達赤姫のいる連合軍へと合流する為に。
まだ、皇国軍との戦争は終わらない。
ニグルの死後、残った騎士達を一蹴し、漆黒の大鎌を腕輪に戻すと息を吐きこちらへと向かってくる。
圧勝、まさにその言葉通りの勝利だった。
あれだけ自分が苦戦した敵の魔術と、近接戦闘の連携攻撃をものともせず、敵を全滅させた。
ニグルに対しては、ダメージで動きが鈍くなっていたとはいえ、シンの言葉通りならニグルにわざと攻撃を避けさせた上で、自分は一切の傷を負わなかった。
そして、隊長を失った皇国軍の騎士と魔術師は、なす術のなくあの大鎌の餌食となった。
3の数字を見た時は、まさかとは思った。
強いだろうと前から思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
自分が負けた相手に、こうもあっさりと勝たれてしまってはもう認めるしかない。
この青年は、ユナよりも強かった。
悔しさもある、自分の勝てなかった相手が、なす術もなく倒されたのだ。
それはそのまま自分も、この青年になす術もなく負けるという事だ。
(なんだ、やっぱり居るじゃない)
だが、それ以上に嬉しかった。
小さい頃からずっと心の奥にしまっていた、叶わないと思っていたはずの想い。
(私よりずっと強い人、そして私を守ってくれる人、見つけたよ)
その青年は、自分を守ると言ってくれた。
そしてその青年は自分よりもずっと強い人、その青年は自分の好きな人だった。
誰にでもなく、自分自身に言い聞かせた、見つけたよ、と
ちょっと遅かった、自分を守ると言いながらどこかに消えてしまった事を怒っていた。
でも、最後はちゃんと守ってくれた。
それが何よりも嬉しかった。
「立てるか?」
「まだちょっと無理、おんぶ」
両手を広げそう答える、本当は歩くぐらいは何とも無いぐらい回復している。
でも、このぐらいのわがままは許してほしい。
「しょうがないな」
苦笑いを浮かべ目の前にしゃがみこんでくる。
「ちゃんと掴まってろよ」
その背中にしっかりと掴まる、絶対に離してやるもんか、この背中は誰にも渡さない。
胸が当たって変な声を出していたが、そんな事は気にしない、少しくらいは許してあげよう。
掴まった背中はとても大きく、そして逞しく安心出来た。
ちょっと眠くなってしまうくらいだった。
でも眠る前に一つだけ、文句を言いたい事があった。
「ねぇ、今までどこにいたのよ」
開戦から行方不明になったと聞いてから、どれだけ心配した事か。
何も言わずにいなくなった事が、すごく腹立たしい。
「ああ、それな、リリアナの作戦だ」
「作戦?」
他の女の名前が出てきた事にムッとする。
この言い方だと自分は知らないのに、あの王女は知っていると言っている。
自分に知らせない事も怒るが、あの王女一緒に心配したフリして実は知っていたのだ。
「そう、作戦だ、あのニグルって奴を引っ張り出す為に俺をエサにあの場所に誘い込んだんだ」
その作戦を知っていたのはシンとノア、そして立案者のリリアナだけだった。
**
「シン様、少しだけ2人で大切な話がしたいのです」
その作戦は開戦前にユナを連れ、リリアナの部屋に作戦会議を行った時にリリアナから告げられた。
「シン様には行方を眩ませて頂きたいと思います」
リリアナの作戦はこうだった。
まず敵の目標である代行者のシンは姿を消す。
その行方は味方にも知らせない。
そうする事で万が一、敵に味方が捕らえられてもシンの行方はわからない。
それを確実にする為、放った諜報員の近くでシンは戦闘をして、跡がわからないように行方を眩ます。
シンの動向も探させた諜報員は、その戦闘を見てシンの行方不明を本陣に通信し、その通信を全軍に伝える。
そしてシンが皇国軍の騎士の鎧を奪い、皇国軍に紛れて西の山岳地帯に代行者がいると情報を流す。
**
「こんな感じだ、まあユナとナナが想像以上に行動したのは完全に誤算だったな」
ムカッとしたので、一先ずその頭を軽く叩く。
初めから教えてくれたら協力したし、あんな思いもしなくて良かったのだ。
「ニグルが思ってたよりも早く行動したのも誤算だったな、予定じゃもうちょっと戦争が長引くはずだったし」
ナナの予想以上の補給線の殲滅速度は知っていたし、あの子もシンの事を真剣に探していたのだろう。
「あの鎌、反則じゃない?」
一つだけと思っていたのに、まだ聞きたい事はたくさんあった。
思い出すのは魔術も鎧も武器も、全部消滅させたあの漆黒の大鎌だ。
シンは確かに強かった。
あの大鎌の攻撃は鋭く速い、そして足捌きや大鎌を自在に操る技術も凄い。
自分では大鎌をあそこまで使いこなせる自信がない。
「ああ、確かに強いんだけどいろいろ制限もあるんだ」
どうやら、あの鎌は1度には全ての消滅出来ないらしい。
同時に攻撃されたら片方は消滅しないで、そのまま残るそうだ。
絶え間なく攻撃を続ける事をしていたニグル達は同時には攻撃してなかった、あの連携が逆に良くなかったのだ。
他にもあるそうだが、余程の事がない限り心配ないだろう。
最初は扱いきれず、周りにある色んな物を消滅させてしまったらしい。
その大きさ故、周りを巻き込む可能性が大きいみたいだ。
「あっそうだ、最後の方に言ってた酸欠?って何よ?」
「酸欠?」
「言ってたじゃないニグルの周りの空気を無くしたとか」
「ああ、酸欠ってのは酸素欠乏症の事だ」
「酸素って何よ、聞いた事ないわ」
「ん?この世界の人は知らないのか?まあいいやそれなら呼吸する事からだな、いいか?人間ってのは・・・・」
風帝を倒し、ユナをおぶりながらシンは歩き続ける。
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