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森の世界
獣王の力
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「獣王の私をその程度の火力では抑えられんぞ」
獣王レオル・フリードに向け、メリィは炎の息吹を放つ。
まだシーナだった時に防ぎきれなかったはずの炎の息吹は、最大限に引き出された氷狼の力の前に無力化されていた。
創り出された氷の壁は、獄炎に溶かされた直後からすぐに復元され、獣王に届くどころか氷の壁に押し込まれ、徐々にメリィの下まで近付いている。
「それも効かないよ」
メリィが炎の息吹を吹き続ける間にナナは獣王に向け武器の射出を次々と行っていた。
休む間もなく射出され続ける無数の武器はあらゆる角度から獣王に向かって行くが、直撃する前に凍りつき砕け散っていく。
それでも反撃の隙を与えない為にナナの攻撃は継続して行われる。
炎の息吹と武器の嵐は、他者の参戦を一切受け付けず、獣王とナナとメリィの戦いに入り込める者は居なかった。
獣王の警護をしていた者は最初は獣王と共に戦いをしようとしていたが、初めに飛び込んだ2人が攻撃に巻き込まれ呆気なく死亡したのを見て、この戦いに参加する者は居なくなった。
「休んでるヒマはないぞ」
メリィの炎の息吹が途切れるとすぐさま獣王は反撃を繰り出す。
ナナの攻撃を真似ているのか、獣王の背後に選定の時にシーナが見せた氷狼の牙が多数創り出される。
パキパキと空間が凍り付く音を出しながら、氷狼の牙はナナ達に射出される。
氷狼の牙が通り過ぎた後には空中の水分が凍てつき1本の線を創り出していた。
「下がって」
メリィの肩を引き、ナナは前方に出る。
両手を前に出し、創り出すのは巨大な盾だ。
重厚な銀色をしたシンプルな盾はナナ達を覆い隠すかのように前方に立ち塞がり、氷狼の牙と激突をする。
激突の衝撃で、ユーギリア城周辺に轟音と爆風が吹き荒れる。
盾に激突した氷狼の牙は、盾を削り取るかのように回転し、甲高い音を上げながら少しずつ前進する。
突破されると感じたナナは、盾のすぐ後方に更に3枚の盾を創り出す。
1つ目の盾を突破した氷狼の牙は威力を落としながらも次の盾を貫き、最後の1つでようやくその動きを止めた。
氷狼の牙を防ぎきった事を確認し、視界を塞いでいた巨大な盾を消す。
だが巨大な盾の向こう側にいるはずの獣王の姿が無くなっていた。
「あれを防ぐのか、なかなかやるな」
直後にナナの後方から獣王の声が聞こえる。
獣王の接近にナナは咄嗟に全身を金属の鎧で包み込む。
金属の鎧越しにナナに衝撃が伝わってくる。
吹き飛ばされながらナナが見たのは、獣王が足を氷で包み、足先にある巨大な棘だった。
その棘を見つけた直後に右腕に痛みを感じる。
ナナの鎧を氷の棘は貫き、腕の1部が削り取られていた。
出血を抑える為にいつも持ち歩いている布を口を器用に使いながら腕に巻き付ける。
獣王の下にナナが走り出すとメリィが再度炎の息吹を上空から放つ。
迫り来る獄炎を獣王は頭上に創り出した氷の壁で防ぎながら、迫り来るナナの攻撃を躱す。
「邪魔だ」
獣王が一言声を出す。
直後、獣王の周囲がさらなる白銀の氷の世界に作り変えられた。
極寒の世界でナナは足元から徐々に凍り付いていく。
左手に持つ大剣でナナは足元の氷を砕き、脱出を試みるが、それよりも速く氷はナナを包み込んでいく。
「ナナちゃん、捕まって!」
ナナの背後から、燃え盛る翼を持つ鳥が近付いて来る。
炎の翼はナナの足元の氷を溶かし、その足にナナが捕まり上空へと飛翔する。
「助かった」
ナナを連れメリィの下まで獄炎鳥が飛行する。
メリィにお礼を言ったナナは獄炎鳥の背中によじ登り、地上から睨み付けてくる獣王へと視線を向ける。
「獄炎鳥の近くにいれば氷狼の力から逃れられる。でもこっちの攻撃もあっちには効かない、手詰まりね」
ナナの攻撃は獣王の防御を崩せず、メリィの炎も氷の壁に防がれる。
完璧とも言える獣王の防御能力をナナ達は突破出来ない。
「足止めだけでも、しないと」
「どうするの?こうして飛んでるだけじゃ出来ないよ?」
獣王の攻撃を回避しながらメリィはナナと対応策を考える。
ナナ達の遠距離攻撃では獣王の防御は突破出来ず、近付こうにも氷狼の氷結能力によりすぐさま体が凍てつき動かなくなる。
こうしている間も獣王は城に少しずつ近付いている。
シン達からまだ像を入手したと報告は受けていない為、何としても食い止めなくてはならない。
「氷狼の力が強すぎる。本来なら獄炎鳥と同じぐらいのはずなのに」
獣王の氷狼の力は本来であればメリィの獄炎鳥と同程度のはず。
だが獣王となった影響なのか、その力は通常よりも数段に強大になっている。
獄炎鳥の放つ熱により、氷の世界へと作り変えられる力をナナとメリィの周辺のみ無効化しているが、それもメリィの力が続くまでだ。
メリィの体力が無くなればすぐさまナナとメリィは氷の彫像となり、獣王に砕かれて死ぬ。
なんとか持ち堪えているメリィだが、そう長くは続かない。
「意外と粘るな、でももう終わりだ」
抵抗を続けていたメリィだったが、獣王は更に氷狼の力を引き出した。
獣王を中心に極寒の地とかしたユーギリア城周辺は更に温度を下げる。
絶対零度の風が吹き荒れ、空気中の水分が凍り付く。
小さな氷が弾丸のように獣王の周囲から撒き散らされる。
「ナナちゃん!」
獄炎鳥にまたがるナナをメリィは抱き付くように覆う。
周囲を炎で包み込み、絶対零度の暴風と無数の小さな氷の弾丸を防ぐ。
「無駄な抵抗だ」
だがメリィの行動に獣王は更に無数の氷の弾丸を創り出す。
視界を覆い隠すほどの氷の弾丸は上空で飛行するメリィ達を撃ち抜き、轟音を立て視界をまたも覆い隠す。
氷の弾丸が晴れるとメリィ達のいた場所には巨大な氷塊が姿を現わす。
白みがかったその氷塊は内部を覗く事が出来ない。
だがそこにいたナナとメリィがどうなっているのかは想像が付く。
上空に浮かんだ強大な氷塊は重力に逆らわずそのまま地面へと落下をする。
衝突によりまたも轟音が響き渡り、砕けた氷が光によって輝きながら大小の欠片となって周辺に散らばっていく。
森の世界ではありえない幻想的な光景に周りにいた者達は思わず息を吐いてしまう。
「さて、城に戻るか」
氷塊が砕け散ると同時に獣王はユーギリア城へと足を進めた。
だが直後に轟音が再度ユーギリア城周辺に響き渡る。
その音は先ほどまでの氷による音と違い、まるで炎の世界に迷い込んだかのような燃え盛る炎の音だった。
「なるほど、人である事を捨てたか」
振り返る獣王の視界に映るのは、先ほどよりも2倍ほどの大きさとなった、燃え盛る翼を持つ獄炎鳥の姿だった。
燃える翼は周囲に散らばった氷を次々と蒸発させ、辺りが水蒸気により白く染め上げられる。
白銀の世界で真紅に燃え上がるその姿は正しく伝説の魔獣と思わせるほどの威圧感を放っていた。
「獣化は強大だが、2度と元には戻れんぞ」
使命を果たした者は混じり合った体が人と生物に分かれ、分かれた生物は一生の相方となり、共に生活をする。
だが使命を果たした者は1つの能力を手にする事になる。
獣化と呼ばれるそれは人である事を捨て、相棒となった生物の姿に生まれ変わる能力だ。
その力を使用すると2度と人には戻れず、他の生物として生き続ける事しか出来なくなる。
だがその身に宿した力は元の生物よりも強大になる。
人である事を捨てる能力は過去にも使われた事例はごく少数であり、知っている者は数少ない。
その獣化をメリィはためらいなく行使した。
急激な温度の変化にメリィの周囲が歪み、世界が悲鳴をあげる。
白銀の世界はピシピシと音をあげ、崩れ始める。
「私も多少の傷は覚悟しないといけないか」
獄炎鳥となったメリィに獣王が跳躍し詰め寄る。
自動で発動する氷の防御はメリィの炎に反応し、獣王の周囲は炎と氷のぶつかり合いで水蒸気に包まれる。
「させない」
獄炎鳥となったメリィの首にまたがりナナは獣王に向け無数の武器を射出する。
獄炎鳥の炎により、獣王の氷の防御は無効化され、ナナの攻撃に獣王の体に傷が付く。
跳躍していた所での攻撃に獣王は地面へと落下し、舌打ちをする。
先ほどまで防げていた攻撃がメリィの獣化により防ぎきれなくなっていた。
メリィから距離を取れば氷狼の氷結能力が強くなり、なりナナの攻撃を防ぐ事が出来るが、獣王の攻撃もメリィによって防がれる。
先ほどまではナナとメリィが陥っていた状況に、今度は獣王も陥る。
互いに手の打ちようの無い状況が、自然とナナ達の目的である獣王の足止めを成功させていた。
獣王はユーギリア城に戻ろうにもメリィを無視する事は出来なく、メリィ達を倒そうにも時間がかかり、その間に獣王よりもユーギリア城に近いユナ達が城に攻め入ってしまう。
ナナとメリィを牽制しつつ、獣王は思考をする。
獄炎鳥となったメリィとナナに対しどう対処するのが最善なのか答えを出し切れていなかった。
「ナナさん、時間稼ぎは終了です!」
激しい攻防を繰り返すナナにリリアナから通信が入る。
その報告にナナはすぐさま撤退をメリィに指示をする。
強大な獄炎鳥となったメリィは獣王に向け、最大の威力を持った炎の息吹を放つ。
氷狼の能力で炎の息吹を防ぎきった獣王の前には既にナナとメリィの姿はなく、その瞳には炎と氷により破壊され尽くした街の風景しか映っていなかった。
「何が、目的だったんだ?」
獣化をしてまで森の世界の王である自分と戦っていたのに、唐突に引き退ったナナとメリィ達の行動を獣王は理解出来なかった。
急激に静けさを増したユーギリア城前から城の中へと向かう。
戦闘により疲弊したユーギリア城の兵士達を労いながら、己の部屋へと獣王は戻っていく。
獣王レオル・フリードに向け、メリィは炎の息吹を放つ。
まだシーナだった時に防ぎきれなかったはずの炎の息吹は、最大限に引き出された氷狼の力の前に無力化されていた。
創り出された氷の壁は、獄炎に溶かされた直後からすぐに復元され、獣王に届くどころか氷の壁に押し込まれ、徐々にメリィの下まで近付いている。
「それも効かないよ」
メリィが炎の息吹を吹き続ける間にナナは獣王に向け武器の射出を次々と行っていた。
休む間もなく射出され続ける無数の武器はあらゆる角度から獣王に向かって行くが、直撃する前に凍りつき砕け散っていく。
それでも反撃の隙を与えない為にナナの攻撃は継続して行われる。
炎の息吹と武器の嵐は、他者の参戦を一切受け付けず、獣王とナナとメリィの戦いに入り込める者は居なかった。
獣王の警護をしていた者は最初は獣王と共に戦いをしようとしていたが、初めに飛び込んだ2人が攻撃に巻き込まれ呆気なく死亡したのを見て、この戦いに参加する者は居なくなった。
「休んでるヒマはないぞ」
メリィの炎の息吹が途切れるとすぐさま獣王は反撃を繰り出す。
ナナの攻撃を真似ているのか、獣王の背後に選定の時にシーナが見せた氷狼の牙が多数創り出される。
パキパキと空間が凍り付く音を出しながら、氷狼の牙はナナ達に射出される。
氷狼の牙が通り過ぎた後には空中の水分が凍てつき1本の線を創り出していた。
「下がって」
メリィの肩を引き、ナナは前方に出る。
両手を前に出し、創り出すのは巨大な盾だ。
重厚な銀色をしたシンプルな盾はナナ達を覆い隠すかのように前方に立ち塞がり、氷狼の牙と激突をする。
激突の衝撃で、ユーギリア城周辺に轟音と爆風が吹き荒れる。
盾に激突した氷狼の牙は、盾を削り取るかのように回転し、甲高い音を上げながら少しずつ前進する。
突破されると感じたナナは、盾のすぐ後方に更に3枚の盾を創り出す。
1つ目の盾を突破した氷狼の牙は威力を落としながらも次の盾を貫き、最後の1つでようやくその動きを止めた。
氷狼の牙を防ぎきった事を確認し、視界を塞いでいた巨大な盾を消す。
だが巨大な盾の向こう側にいるはずの獣王の姿が無くなっていた。
「あれを防ぐのか、なかなかやるな」
直後にナナの後方から獣王の声が聞こえる。
獣王の接近にナナは咄嗟に全身を金属の鎧で包み込む。
金属の鎧越しにナナに衝撃が伝わってくる。
吹き飛ばされながらナナが見たのは、獣王が足を氷で包み、足先にある巨大な棘だった。
その棘を見つけた直後に右腕に痛みを感じる。
ナナの鎧を氷の棘は貫き、腕の1部が削り取られていた。
出血を抑える為にいつも持ち歩いている布を口を器用に使いながら腕に巻き付ける。
獣王の下にナナが走り出すとメリィが再度炎の息吹を上空から放つ。
迫り来る獄炎を獣王は頭上に創り出した氷の壁で防ぎながら、迫り来るナナの攻撃を躱す。
「邪魔だ」
獣王が一言声を出す。
直後、獣王の周囲がさらなる白銀の氷の世界に作り変えられた。
極寒の世界でナナは足元から徐々に凍り付いていく。
左手に持つ大剣でナナは足元の氷を砕き、脱出を試みるが、それよりも速く氷はナナを包み込んでいく。
「ナナちゃん、捕まって!」
ナナの背後から、燃え盛る翼を持つ鳥が近付いて来る。
炎の翼はナナの足元の氷を溶かし、その足にナナが捕まり上空へと飛翔する。
「助かった」
ナナを連れメリィの下まで獄炎鳥が飛行する。
メリィにお礼を言ったナナは獄炎鳥の背中によじ登り、地上から睨み付けてくる獣王へと視線を向ける。
「獄炎鳥の近くにいれば氷狼の力から逃れられる。でもこっちの攻撃もあっちには効かない、手詰まりね」
ナナの攻撃は獣王の防御を崩せず、メリィの炎も氷の壁に防がれる。
完璧とも言える獣王の防御能力をナナ達は突破出来ない。
「足止めだけでも、しないと」
「どうするの?こうして飛んでるだけじゃ出来ないよ?」
獣王の攻撃を回避しながらメリィはナナと対応策を考える。
ナナ達の遠距離攻撃では獣王の防御は突破出来ず、近付こうにも氷狼の氷結能力によりすぐさま体が凍てつき動かなくなる。
こうしている間も獣王は城に少しずつ近付いている。
シン達からまだ像を入手したと報告は受けていない為、何としても食い止めなくてはならない。
「氷狼の力が強すぎる。本来なら獄炎鳥と同じぐらいのはずなのに」
獣王の氷狼の力は本来であればメリィの獄炎鳥と同程度のはず。
だが獣王となった影響なのか、その力は通常よりも数段に強大になっている。
獄炎鳥の放つ熱により、氷の世界へと作り変えられる力をナナとメリィの周辺のみ無効化しているが、それもメリィの力が続くまでだ。
メリィの体力が無くなればすぐさまナナとメリィは氷の彫像となり、獣王に砕かれて死ぬ。
なんとか持ち堪えているメリィだが、そう長くは続かない。
「意外と粘るな、でももう終わりだ」
抵抗を続けていたメリィだったが、獣王は更に氷狼の力を引き出した。
獣王を中心に極寒の地とかしたユーギリア城周辺は更に温度を下げる。
絶対零度の風が吹き荒れ、空気中の水分が凍り付く。
小さな氷が弾丸のように獣王の周囲から撒き散らされる。
「ナナちゃん!」
獄炎鳥にまたがるナナをメリィは抱き付くように覆う。
周囲を炎で包み込み、絶対零度の暴風と無数の小さな氷の弾丸を防ぐ。
「無駄な抵抗だ」
だがメリィの行動に獣王は更に無数の氷の弾丸を創り出す。
視界を覆い隠すほどの氷の弾丸は上空で飛行するメリィ達を撃ち抜き、轟音を立て視界をまたも覆い隠す。
氷の弾丸が晴れるとメリィ達のいた場所には巨大な氷塊が姿を現わす。
白みがかったその氷塊は内部を覗く事が出来ない。
だがそこにいたナナとメリィがどうなっているのかは想像が付く。
上空に浮かんだ強大な氷塊は重力に逆らわずそのまま地面へと落下をする。
衝突によりまたも轟音が響き渡り、砕けた氷が光によって輝きながら大小の欠片となって周辺に散らばっていく。
森の世界ではありえない幻想的な光景に周りにいた者達は思わず息を吐いてしまう。
「さて、城に戻るか」
氷塊が砕け散ると同時に獣王はユーギリア城へと足を進めた。
だが直後に轟音が再度ユーギリア城周辺に響き渡る。
その音は先ほどまでの氷による音と違い、まるで炎の世界に迷い込んだかのような燃え盛る炎の音だった。
「なるほど、人である事を捨てたか」
振り返る獣王の視界に映るのは、先ほどよりも2倍ほどの大きさとなった、燃え盛る翼を持つ獄炎鳥の姿だった。
燃える翼は周囲に散らばった氷を次々と蒸発させ、辺りが水蒸気により白く染め上げられる。
白銀の世界で真紅に燃え上がるその姿は正しく伝説の魔獣と思わせるほどの威圧感を放っていた。
「獣化は強大だが、2度と元には戻れんぞ」
使命を果たした者は混じり合った体が人と生物に分かれ、分かれた生物は一生の相方となり、共に生活をする。
だが使命を果たした者は1つの能力を手にする事になる。
獣化と呼ばれるそれは人である事を捨て、相棒となった生物の姿に生まれ変わる能力だ。
その力を使用すると2度と人には戻れず、他の生物として生き続ける事しか出来なくなる。
だがその身に宿した力は元の生物よりも強大になる。
人である事を捨てる能力は過去にも使われた事例はごく少数であり、知っている者は数少ない。
その獣化をメリィはためらいなく行使した。
急激な温度の変化にメリィの周囲が歪み、世界が悲鳴をあげる。
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「私も多少の傷は覚悟しないといけないか」
獄炎鳥となったメリィに獣王が跳躍し詰め寄る。
自動で発動する氷の防御はメリィの炎に反応し、獣王の周囲は炎と氷のぶつかり合いで水蒸気に包まれる。
「させない」
獄炎鳥となったメリィの首にまたがりナナは獣王に向け無数の武器を射出する。
獄炎鳥の炎により、獣王の氷の防御は無効化され、ナナの攻撃に獣王の体に傷が付く。
跳躍していた所での攻撃に獣王は地面へと落下し、舌打ちをする。
先ほどまで防げていた攻撃がメリィの獣化により防ぎきれなくなっていた。
メリィから距離を取れば氷狼の氷結能力が強くなり、なりナナの攻撃を防ぐ事が出来るが、獣王の攻撃もメリィによって防がれる。
先ほどまではナナとメリィが陥っていた状況に、今度は獣王も陥る。
互いに手の打ちようの無い状況が、自然とナナ達の目的である獣王の足止めを成功させていた。
獣王はユーギリア城に戻ろうにもメリィを無視する事は出来なく、メリィ達を倒そうにも時間がかかり、その間に獣王よりもユーギリア城に近いユナ達が城に攻め入ってしまう。
ナナとメリィを牽制しつつ、獣王は思考をする。
獄炎鳥となったメリィとナナに対しどう対処するのが最善なのか答えを出し切れていなかった。
「ナナさん、時間稼ぎは終了です!」
激しい攻防を繰り返すナナにリリアナから通信が入る。
その報告にナナはすぐさま撤退をメリィに指示をする。
強大な獄炎鳥となったメリィは獣王に向け、最大の威力を持った炎の息吹を放つ。
氷狼の能力で炎の息吹を防ぎきった獣王の前には既にナナとメリィの姿はなく、その瞳には炎と氷により破壊され尽くした街の風景しか映っていなかった。
「何が、目的だったんだ?」
獣化をしてまで森の世界の王である自分と戦っていたのに、唐突に引き退ったナナとメリィ達の行動を獣王は理解出来なかった。
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