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氷の世界
新たな仲間
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「セレス達にどう説明するかだな」
アイナがシン達に同行する事になったのは良いが、アイナ以外の者達への説明を間違えるとSランク冒険者達との関係が悪くなる可能性が高い。
これまでは友好的に接しているとはいえ、アイナは彼女達のパーティーの心臓と言える存在だ。
いきなり訪ねてきたシン達がそのアイナを引き抜くと言うとなれば、どんな反応をするかなど容易に想像出来る。
もし逆の立場ならシン達ならば反抗するだろう。
「我にお任せ下さい。セレス達なら納得してもらえます」
シン達の目的はアイナに説明は済ませている。
獣王についてはティナや森の世界に残ったリリアナ達も交えて意見を交わしたいので後回しにしているが、獣王に立ち向かうと聞いたアイナが「さすがです」とシンを見る目がさらに輝きを増したので、アイナ自身については問題ない。
後はセレス達の説得だが、アイナがその役目を引き受けた為、シン達も彼女に任せる事にした。
シンやユナが話すよりもアイナが話をした方が相手としても良いだろう。
「ティナには俺達が話をしよう。俺達は先に戻るけどアイナはどうする?」
アイナは現在呪いが暴走している設定だ。
セレス達の様子からすぐに収まったと言って出て行ってもわかってもらえない可能性もある。
「問題ありません。我は明日の朝には部屋から出るつもりでした。師とユナ姉はそのまま戻って頂き、何事も無かったように明日まで・・むっ?」
言葉を途中で切り上げ、アイナは静かにするようにシン達に手で伝える。
何かの気配を察したシン達はアイナに従い、音を立てないよう注意していると廊下から声が聞こえてきた。
「シンさん!ユナさん!どこですか?」
聞こえてきたのはセレスの呼び声だ。
戻らないシン達を心配して探しに来たのだろう。
「予定を変更します。我にお任せを」
セレスの声にアイナが部屋の外へと出る。
するとセレスの驚いた声とアイナの身を案ずる言葉が聞こえてくる。
「アイナ!大丈夫なの⁉︎」
「セレス、心配無用だ。師の施した封印術により、我が蒼紅蓮の呪いは緩和された」
「師?それは本当なの⁉︎」
シンに封印術の心得など欠片もないのだが、アイナの脳内では、既に呪いの緩和は行われたらしい。
それを聞いたセレスの嬉しいような声は、突然現れた師と呼ばれた人物についての疑問も感じられる。
「本当だ。師は我が戒めを見抜き、その力で我の中にいるもう1人の我を撃退し、我に安寧をもたらした」
アイナにとってあの泣きじゃくった時の姿は自分の中にあるもう1人のアイナらしい。
シンとしたらあの可愛らしい姿も良いと思うのだが、アイナからしたら弱い自分を認めたくないのだろう。
いつの間にかシンにより撃退された事になっていた。
「師と言うのは?」
「むっ、少し待て」
セレスとの会話を切り上げ、アイナが部屋に戻ってくる。
「どうした?」
「師よ、我とした事が師のお名前をお聞きしておりません」
「そうだったな」
アイナにシンは名前を教えていなかった。
師と言いながらシンの名前を知らないアイナもどうかと思うが、シンは改めて名前を教える。
ユナの名前を覚えていた癖に自分の名前を覚えていないアイナに少しイラッとしたが、あの時シンの事を完全に無視していた。
シンの事をユナが呼んでいたはずだが、無視していた為に本当に聞いていなかったのだろう。
「しばしお待ちを」
アイナの物言いは何か仰々しいので、シンの事をお兄ちゃんと呼んだ幼さを残したアイナの方がシンとしたら接しやすい。
だがアイナ自身は今の仰々しい方が良いだろう。
「師の名前はシンと言う。それとユナ姉には呪いに負けそうになっていた我を励まし、呪いに立ち向かう勇気を貰った」
「シンさんとユナさんですか?あの部屋に入ったのですか?」
「いや、部屋から出た我と偶然居合わせたのだ。やはり師は導かれし者達だったのだ」
「あのお二方がアイナを救って下さったのですね」
部屋の中にいるシンとユナにセレスの涙ぐんだ声が聞こえてくる。
まさかアイナの呪いが、アイナの脳内設定と知らず、本当に災いがその身に宿っていると思っているセレスは、シン達への感謝とアイナの無事に涙を流しているのだ。
「お二方はどこにいるのです?」
「むっ、少し待て」
セレスにシン達の居場所を聞かれたアイナはまたも部屋の中に戻る。
そんな事をしてはシン達の居場所を知らせているような気がしているが、嬉しさの込み上げているセレスは気付いていないようだ。
「師よ、セレスをここに案内しても?」
「良いぞ、早いか遅いかの違いだしな」
どちらにせよセレスとはアイナについて話をしなければならない。
それが今なのか明日の朝なのかの違いだけだ。
「こちらにいらしたのですね、アイナを助けていただきありがとうございます」
「いや、たまたまアイナに会っただけだ。俺は何もしていない」
「シンさんにとってあの程度の呪いなど脅威ではないのですね」
本当にシンは何もしていないのだが、アイナの正体を知らないセレスはシンの事を過大評価する。
このような過大評価は前にもあった気がするが、シンは気にしない事にした。
今は勘違いでもしてもらっていた方が良い。
「あれほど手の打ちようの無かったアイナの呪いが、こうも短時間で改善されるとは、本当にありがとうございます」
「師はこの世の覇者でおられる。我の呪いなど師の前では小さな石ころのようなものだ」
アイナの言葉でセレスの中のシンの評価はどんどん高まっていく。
アイナが中二病だという事をセレス達に知らせないと約束してしまった以上、否定する事が出来ないが、おだてられて悪い気はしないシンである。
「何故シンさんを師と呼ぶのです?」
アイナがシンの事を持ち上げ続ける中、遂にセレスが本題に入ろうとする。
Sランク冒険者であるアイナが師と呼ぶ者などいるはずがないのだから当然の疑問だ。
「我は師に弟子入りする事にした。我の呪いは師によって緩和されたとはいえ、消滅した訳ではない。我は師のもとで学び、自らの力で呪いを乗り越えなければ、完全に魔眼の力や蒼紅蓮を使いこなす事は出来ん」
「なら、双蒼の烈刃から抜けると言うのですね?」
アイナを見るセレスの視線が厳しくなる。
Sランク冒険者パーティー”双蒼の烈刃”はアイナが集めた者達だ。
その創設者であるアイナの脱退はやはり厳しいのだろう。
「無論、そうなる。だがセレス達はもう我に守られずとも生きて行ける」
セレスの視線よりも鋭い視線でアイナは語りかける。
アイナが救い、育てた仲間達はもうアイナなしでもSランクの名に相応しい者達だ。
「わかりました。アイナの好きにして構いません。いつまでもあなたに頼っている訳にはいかないと考えていましたから、ですが私以外のメンバーは素直に賛成すると思えません」
セレスはアイナの判断に賛成の意を示す。
彼女はアイナが呪いをその身に宿して以降、アイナ無しでの活動も視野に入れていた。
不安はあるが”賢者”と呼ばれるララとルル、”剛腕”のガレイ、”千技”のミア、そして”麗剣”セレスの5人ならば、これまで通り活動する事は可能であると考えていた。
だがセレスの他のメンバーが同じ様に考えているとは思えない。
アイナに依存している事は良くないと各々考えているが、どうしても最後にはアイナの力に頼っている。
それは精神的な部分でも大きいだろう。
アイナがいるからこそ、自身の力をためらいなく使用出来る者もいるのだ。
「私もアイナの味方をしますが、多少の言い争いは覚悟をお願いします」
シン達の苦難はこれからが山場だ、アイナの事を尊重するセレスと違い、他の者達が素直にアイナの脱退を認めるとはシン達も考えてはいなかった。
「もう夜になります。アイナは呪いが強まりますので部屋で休んでいて下さい。シンさんとユナさんは私の階の部屋でお休みください。ララ達には明日話をしましょう」
セレスに案内された5階の部屋ではティナが先に休んでいた。
セレスを含めた4人はアイナがシンの弟子となり、この後もシン達に同行する事となったと説明をする。
アイナの呪いについてはティナにも話す事は出来ないが、彼女は全てを見透かす眼を持っている。
シンに対し、何か察した視線を送っているので、アイナの事はとっくに気付いていたのだろう。
「あの娘を手駒とするとはのう、シンも中々にやる奴だの」
「アイナの事を知ってたのか?」
ティナの言い方ではアイナの事を前から知っていた事を伺える。
森の世界で顔だけは知っているとは思っていたが、その内面までは知らないと考えていた。
あの時のティナは魔力を使い果たし、その眼の力は使えなかった上に直接やり取りはしていない。
「さてどうだかの?妾はこの件には手を下さんと言ったはずだぞ?それにあの娘の事をシン達が知らんとは思わなんだ」
「なら、アイナの部屋を見た時のティナは演技だったんだな。騙されたよ」
確かに氷の世界でシン達の事を手伝わないとティナは言っていた。
今思えば、ティナのあの反応の仕方はどうもおかしい。
全てを見透かす瞳を持つのにあれだけじっくり見て何もわからない訳がない。
手を出さないと言いながらも、さりげなくシン達にアイナの事に対するヒントを与えていたと考えられる。
「それより、アイナの事を知らないと思わなかったってどういう事よ?」
「それはその内わかる事だの。妾が言わんでも問題なかろう」
まだ何かアイナについて知っていると思われるティナの態度にユナがたまらず答えを求めたが、素直に教えては貰えなそうだ。
「まあいい、元々ティナの力には頼らないと決めてたしな。それよりも問題は明日だ、何も起きなきゃ良いんだけどな」
シン達は今までの経緯をリリアナに連絡し、休息を取る。
森の世界では未だ獣王は動きを見せていない。
アイナが知る獣王の秘密はまだわからないが、彼女を森の世界に連れて行かなければ世界樹の試練も突破出来ない。
シーナ奪還の2つの手がかりを持っているアイナの問題は、あとララ達の説得のみだ。
アイナがシン達に同行する事になったのは良いが、アイナ以外の者達への説明を間違えるとSランク冒険者達との関係が悪くなる可能性が高い。
これまでは友好的に接しているとはいえ、アイナは彼女達のパーティーの心臓と言える存在だ。
いきなり訪ねてきたシン達がそのアイナを引き抜くと言うとなれば、どんな反応をするかなど容易に想像出来る。
もし逆の立場ならシン達ならば反抗するだろう。
「我にお任せ下さい。セレス達なら納得してもらえます」
シン達の目的はアイナに説明は済ませている。
獣王についてはティナや森の世界に残ったリリアナ達も交えて意見を交わしたいので後回しにしているが、獣王に立ち向かうと聞いたアイナが「さすがです」とシンを見る目がさらに輝きを増したので、アイナ自身については問題ない。
後はセレス達の説得だが、アイナがその役目を引き受けた為、シン達も彼女に任せる事にした。
シンやユナが話すよりもアイナが話をした方が相手としても良いだろう。
「ティナには俺達が話をしよう。俺達は先に戻るけどアイナはどうする?」
アイナは現在呪いが暴走している設定だ。
セレス達の様子からすぐに収まったと言って出て行ってもわかってもらえない可能性もある。
「問題ありません。我は明日の朝には部屋から出るつもりでした。師とユナ姉はそのまま戻って頂き、何事も無かったように明日まで・・むっ?」
言葉を途中で切り上げ、アイナは静かにするようにシン達に手で伝える。
何かの気配を察したシン達はアイナに従い、音を立てないよう注意していると廊下から声が聞こえてきた。
「シンさん!ユナさん!どこですか?」
聞こえてきたのはセレスの呼び声だ。
戻らないシン達を心配して探しに来たのだろう。
「予定を変更します。我にお任せを」
セレスの声にアイナが部屋の外へと出る。
するとセレスの驚いた声とアイナの身を案ずる言葉が聞こえてくる。
「アイナ!大丈夫なの⁉︎」
「セレス、心配無用だ。師の施した封印術により、我が蒼紅蓮の呪いは緩和された」
「師?それは本当なの⁉︎」
シンに封印術の心得など欠片もないのだが、アイナの脳内では、既に呪いの緩和は行われたらしい。
それを聞いたセレスの嬉しいような声は、突然現れた師と呼ばれた人物についての疑問も感じられる。
「本当だ。師は我が戒めを見抜き、その力で我の中にいるもう1人の我を撃退し、我に安寧をもたらした」
アイナにとってあの泣きじゃくった時の姿は自分の中にあるもう1人のアイナらしい。
シンとしたらあの可愛らしい姿も良いと思うのだが、アイナからしたら弱い自分を認めたくないのだろう。
いつの間にかシンにより撃退された事になっていた。
「師と言うのは?」
「むっ、少し待て」
セレスとの会話を切り上げ、アイナが部屋に戻ってくる。
「どうした?」
「師よ、我とした事が師のお名前をお聞きしておりません」
「そうだったな」
アイナにシンは名前を教えていなかった。
師と言いながらシンの名前を知らないアイナもどうかと思うが、シンは改めて名前を教える。
ユナの名前を覚えていた癖に自分の名前を覚えていないアイナに少しイラッとしたが、あの時シンの事を完全に無視していた。
シンの事をユナが呼んでいたはずだが、無視していた為に本当に聞いていなかったのだろう。
「しばしお待ちを」
アイナの物言いは何か仰々しいので、シンの事をお兄ちゃんと呼んだ幼さを残したアイナの方がシンとしたら接しやすい。
だがアイナ自身は今の仰々しい方が良いだろう。
「師の名前はシンと言う。それとユナ姉には呪いに負けそうになっていた我を励まし、呪いに立ち向かう勇気を貰った」
「シンさんとユナさんですか?あの部屋に入ったのですか?」
「いや、部屋から出た我と偶然居合わせたのだ。やはり師は導かれし者達だったのだ」
「あのお二方がアイナを救って下さったのですね」
部屋の中にいるシンとユナにセレスの涙ぐんだ声が聞こえてくる。
まさかアイナの呪いが、アイナの脳内設定と知らず、本当に災いがその身に宿っていると思っているセレスは、シン達への感謝とアイナの無事に涙を流しているのだ。
「お二方はどこにいるのです?」
「むっ、少し待て」
セレスにシン達の居場所を聞かれたアイナはまたも部屋の中に戻る。
そんな事をしてはシン達の居場所を知らせているような気がしているが、嬉しさの込み上げているセレスは気付いていないようだ。
「師よ、セレスをここに案内しても?」
「良いぞ、早いか遅いかの違いだしな」
どちらにせよセレスとはアイナについて話をしなければならない。
それが今なのか明日の朝なのかの違いだけだ。
「こちらにいらしたのですね、アイナを助けていただきありがとうございます」
「いや、たまたまアイナに会っただけだ。俺は何もしていない」
「シンさんにとってあの程度の呪いなど脅威ではないのですね」
本当にシンは何もしていないのだが、アイナの正体を知らないセレスはシンの事を過大評価する。
このような過大評価は前にもあった気がするが、シンは気にしない事にした。
今は勘違いでもしてもらっていた方が良い。
「あれほど手の打ちようの無かったアイナの呪いが、こうも短時間で改善されるとは、本当にありがとうございます」
「師はこの世の覇者でおられる。我の呪いなど師の前では小さな石ころのようなものだ」
アイナの言葉でセレスの中のシンの評価はどんどん高まっていく。
アイナが中二病だという事をセレス達に知らせないと約束してしまった以上、否定する事が出来ないが、おだてられて悪い気はしないシンである。
「何故シンさんを師と呼ぶのです?」
アイナがシンの事を持ち上げ続ける中、遂にセレスが本題に入ろうとする。
Sランク冒険者であるアイナが師と呼ぶ者などいるはずがないのだから当然の疑問だ。
「我は師に弟子入りする事にした。我の呪いは師によって緩和されたとはいえ、消滅した訳ではない。我は師のもとで学び、自らの力で呪いを乗り越えなければ、完全に魔眼の力や蒼紅蓮を使いこなす事は出来ん」
「なら、双蒼の烈刃から抜けると言うのですね?」
アイナを見るセレスの視線が厳しくなる。
Sランク冒険者パーティー”双蒼の烈刃”はアイナが集めた者達だ。
その創設者であるアイナの脱退はやはり厳しいのだろう。
「無論、そうなる。だがセレス達はもう我に守られずとも生きて行ける」
セレスの視線よりも鋭い視線でアイナは語りかける。
アイナが救い、育てた仲間達はもうアイナなしでもSランクの名に相応しい者達だ。
「わかりました。アイナの好きにして構いません。いつまでもあなたに頼っている訳にはいかないと考えていましたから、ですが私以外のメンバーは素直に賛成すると思えません」
セレスはアイナの判断に賛成の意を示す。
彼女はアイナが呪いをその身に宿して以降、アイナ無しでの活動も視野に入れていた。
不安はあるが”賢者”と呼ばれるララとルル、”剛腕”のガレイ、”千技”のミア、そして”麗剣”セレスの5人ならば、これまで通り活動する事は可能であると考えていた。
だがセレスの他のメンバーが同じ様に考えているとは思えない。
アイナに依存している事は良くないと各々考えているが、どうしても最後にはアイナの力に頼っている。
それは精神的な部分でも大きいだろう。
アイナがいるからこそ、自身の力をためらいなく使用出来る者もいるのだ。
「私もアイナの味方をしますが、多少の言い争いは覚悟をお願いします」
シン達の苦難はこれからが山場だ、アイナの事を尊重するセレスと違い、他の者達が素直にアイナの脱退を認めるとはシン達も考えてはいなかった。
「もう夜になります。アイナは呪いが強まりますので部屋で休んでいて下さい。シンさんとユナさんは私の階の部屋でお休みください。ララ達には明日話をしましょう」
セレスに案内された5階の部屋ではティナが先に休んでいた。
セレスを含めた4人はアイナがシンの弟子となり、この後もシン達に同行する事となったと説明をする。
アイナの呪いについてはティナにも話す事は出来ないが、彼女は全てを見透かす眼を持っている。
シンに対し、何か察した視線を送っているので、アイナの事はとっくに気付いていたのだろう。
「あの娘を手駒とするとはのう、シンも中々にやる奴だの」
「アイナの事を知ってたのか?」
ティナの言い方ではアイナの事を前から知っていた事を伺える。
森の世界で顔だけは知っているとは思っていたが、その内面までは知らないと考えていた。
あの時のティナは魔力を使い果たし、その眼の力は使えなかった上に直接やり取りはしていない。
「さてどうだかの?妾はこの件には手を下さんと言ったはずだぞ?それにあの娘の事をシン達が知らんとは思わなんだ」
「なら、アイナの部屋を見た時のティナは演技だったんだな。騙されたよ」
確かに氷の世界でシン達の事を手伝わないとティナは言っていた。
今思えば、ティナのあの反応の仕方はどうもおかしい。
全てを見透かす瞳を持つのにあれだけじっくり見て何もわからない訳がない。
手を出さないと言いながらも、さりげなくシン達にアイナの事に対するヒントを与えていたと考えられる。
「それより、アイナの事を知らないと思わなかったってどういう事よ?」
「それはその内わかる事だの。妾が言わんでも問題なかろう」
まだ何かアイナについて知っていると思われるティナの態度にユナがたまらず答えを求めたが、素直に教えては貰えなそうだ。
「まあいい、元々ティナの力には頼らないと決めてたしな。それよりも問題は明日だ、何も起きなきゃ良いんだけどな」
シン達は今までの経緯をリリアナに連絡し、休息を取る。
森の世界では未だ獣王は動きを見せていない。
アイナが知る獣王の秘密はまだわからないが、彼女を森の世界に連れて行かなければ世界樹の試練も突破出来ない。
シーナ奪還の2つの手がかりを持っているアイナの問題は、あとララ達の説得のみだ。
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