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氷の世界
地竜
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「師よ、これからお世話になります。何卒よろしくお願いいたします」
「おっおう…」
仰々しく何かの儀礼と思わしき態度でシンのもとに駆けつけたアイナは今まで見た事もない派手な長衣を纏って現れた。
黒を基準にした長衣は何かの宝石が散りばめられており、初めて見る冒険者としてのアイナの服装にシンは軽くひいてしまっていた。
「ちょっと、もう少し目立たない服はないの?」
直接言う事を躊躇うシンを他所に、そのアイナの服装をみたユナが躊躇いなく指摘する。
シンからしたら赤い服を好んでいるユナも似たようなものだと思っているのだが、言うべき事ではないだろう。
「むっ、ユナ姉はこと長衣を知らないのですか?」
「何なのよ?」
「この深淵の黒衣はかの暗黒大帝が愛用していた逸品ですぞ」
「ほう?確かにそうだの、懐かしいのう」
アイナの説明にいつの間にか現れたティナが反応を示した。
暗黒大帝アモンがかつて使用していた黒い長衣は中位以下の魔術を無効化し、散りばめられた宝石は魔石と呼ばれる秘宝であり、無効化した魔術の魔力を吸収し持ち主に還元される。
アイナの魔石は全て輝きを放っている。
魔石は魔力が貯まると輝くようになっており、魔力が使用されるとその輝きがなくなり、灰色の石となる。
「暗黒大帝を知っているのですか?」
アイナとティナが会話をするのはこれが初めてだ。
ティナが魔王である事を知らないアイナは暗黒大帝を知っている事に驚いているようだ。
「アモンは妾の部下であるぞ?あやつの魔術は人の身では到達出来ん域にあるからの、妾の部下の中でも幹部にあたる者だ」
魔王の側近にあたる5人の魔族、魔帝と呼ばれる者の内の1人が暗黒大帝アモンであった。
5人の魔族それぞれが魔術、魔闘術、魔槍術、魔剣術、魔銃術を極めている。
それぞれの分野において最高の実力を持つ者が最高位の魔帝の名を冠する事が出来る。
ティナがエルリックに教えた魔槍飛燕流は、その魔帝の使用する槍術の流派の1つだ。
魔槍飛燕流は2大流派の1つであり、魔槍術を極めんとする者は己にあった流派を選択し槍術を学ぶ。
真面目なエルリックには正攻法の多い飛燕流があっているとティナは判断していた。
「暗黒大帝が部下とは、もしや魔王ではないのですか?」
アイナの雰囲気が変わった事をシン達はすぐに察した。
アイナはSランク冒険者だ、冒険者にとって最大の目標とも言えるティナは、アイナにとっても標的となっているのかもしれない。
最悪の場合ここで戦闘が起こりうる、だが警戒をするシン達を他所にアイナの顔は輝いているように見える。
「まさかこんな所でお会い出来るとは、師はやはり偉大なお方のようだ」
フフッと微笑みながらアイナは何かを理解したかのように立ち上がる。
何に納得したのかわからないシン達だが、懸念していた事にならずに胸をなで下ろす。
思えばアイナにとって魔王は標的でなく憧れの対象となるのかもしれない。
「師よ、これからの目的を大まかで良いので説明して頂きたいのですが」
シンはこれから森の世界に向かい獣王になったシーナを救う為、アイナに行ってもらいたい事を簡単に説明する。
獣王についてはリリアナ達を交えて話をしたいので、最初の目的が森の世界に戻る事だと教える。
「なるほど、獣王に対抗するのですね。それも我がいれば問題ないかと思います。Sランクの地位は非常に便利なのですよ」
シン達の立ち入れない区域や秘蔵されている文献などもSランク冒険者であれば閲覧が可能になる。
Sランクの名はそれほど全ての世界でかなりの融通が効く。
今まで不可能だった事がアイナの加入で可能となる。
「ネルの転移門までは竜車を使いましょう。長距離型の地竜を2匹購入します、この世界以外でも地竜がいれば移動も楽ですので」
短距離型の地竜では長旅に不向きであるし、雪原を走る事に慣れている為、他の世界では対応するまでに時間がかかる。
長距離型であれば商人達が他の世界にも使用出来るように調教しており、2匹購入すればここにいないリリアナ達の分まで確保出来る。
「地竜って高くないのか?」
地竜の値段はタイプにより様々な価格だが、地竜の年齢や能力によっても差が大きい。
最高級の地竜はシン達にはとても購入出来る値段ではない。
「我にお任せ下さい。良い店をしっていますので」
宿屋からアイナに案内され、地竜を取り扱う店舗に向かう。
大小の地竜達は店舗の隣にある飼育用の建物の中に並んでおり、餌となる魔獣の肉を食べ過ごしている。
「長距離型の地竜を譲ってほしい、若いやつで頼む」
「では見繕いますのでその中からお選び下さい」
「うむ」
偉そうに頷くアイナに地竜についてシン達は説明を受ける。
地竜は性格も重要であり、主人となる者に抵抗するような地竜では到底乗りこなす事など出来ない。
シンとしてはやたらと周りを威嚇するような地竜は遠慮したいのだが、魔獣などと遭遇する時に怯えるような地竜でも困る。
店員から案内された飼育場所で紹介された地竜達はそれぞれ性格が現れているようであり、シン達の様子を伺うような地竜や睨みつける地竜、ひたすらに無視をする地竜などその対応は様々だ。
「俺はこいつが良いな」
地竜は人間の観察が得意だ。
購入されるまではレンタルとして貸し出される地竜達はその度に人の性格を見抜いて対応を変える。
飼育員達の様子から貸し出されるのか購入されるのかも判断している。
今回のシン達と飼育員達の様子から既に自分達の主人となる者の見極めをしており、気に入った者にそれぞれアピールをするように行動している。
その中でシンは真っ直ぐと自分の事を見つめる1匹の地竜が気に入ったようだ。
凛々しく何か筋の通した面持ちをする焦げ茶色の鱗を持つ地竜はシンから発せられる威圧にも臆する事なく佇んでいる。
「私はこの子が良いわ」
ユナが選んだ地竜はどこか反抗的に見える地竜だ。
引き連れた飼育員の言う事をまともに聞かず、鼻を鳴らして威嚇をしている。
「あの子はあまりお勧め出来ません。情けない話ですが、あの子は調教すら出来ていないのです」
ユナに対し申し訳なさそうに言う店員は別の地竜を紹介する。
だが気に入った地竜が他にいなかったのかユナは反抗的な地竜に近づいていく。
「あんた、なかなか根性あるじゃない」
近づいたユナに対して臆する事なく威嚇する地竜はユナから発せられる覇気にも動じない。
その様子に満足したユナは地竜の頭を撫でようと手を伸ばすが、咄嗟に長い尻尾をユナに振りかざし攻撃をする。
突然の事態に近くにいた店員達も対応が出来ないが、ユナは何事もなかったかのように尻尾を刀の鞘で受け止め、唸り声を出す地竜を睨み返す。
気の強いユナはその程度の脅しで屈する事はない。
「わがままね、言う事聞きなさいよ」
シンからしたらユナも大概わがままなのだが、それは口にする事は出来ない。
ユナの様子から苛立ちを感じているシンは、出来る事ならこの反抗的な地竜にその苛立ちをぶつけてほしいのだ。
ユナを怒らせると痛い目を見るのはもう何度も経験している事だ。
地竜のしなやかで長い尻尾はその強靭な鱗と相まって強烈な一撃となるが、何度も繰り出される攻撃を全て避ける事なく受け切ったユナは反撃とばかりに地竜の頭部に拳を叩き込む。
本気で殴っては地竜の頭部はひとたまりもないのだが、手加減しているユナの拳は睨みつける地竜を大人しくさせるには威力が足りなかったらしく、さらに地竜は暴れまわる。
「あっあまり力で抑えつけるような事はやめて下さい!」
地竜の調教は暴力的な事をしない。
ゆっくりと時間をかけて人に慣らす事を徹底しており、攻撃をしてしまうと地竜はストレスをためてしまい、商品として成り立たなくなってしまう。
「うるさいわね、こういう奴には徹底的にやらなきゃダメなのよ!」
赤姫という個性の強いメンバーをまとめていたユナはその時の経験から反抗的な者には上から抑えつける事も必要だと学んだのだろう。
暴れまわる地竜を地面に押さえつけている。
しばらく押さえつけると反抗していた地竜が次第に大人しくなり、ユナに従うように小さく丸まっていた。
人間の何倍もの体躯を持つ地竜を押さえつけたユナに店員達は言葉をなくすが、満足したように大人しくなった地竜を購入すると言われ、我に帰り手続きの準備に入る。
「あの子を従えるとは、言葉がありませんね。あの子には色々と苦労していましたので値段の方もお下げします」
貸し出しに出そうにも言う事を聞かない地竜はこの店の者達にとって、頭痛の種となっていた。
その地竜を引き取ってもらえる事に喜んでいるのか、シンの選び出した地竜の値段も値下げしてもらえる事となった。
提示された金額は金貨40枚であり、シンは冷や汗を流してしまうが、アイナが魔導具の袋から取り出した金貨で支払いをする。
金貨40枚などを簡単に支払うアイナはさすがはSランク冒険者といった所だろう。
「あとは竜車を、2台用意してくれ」
地竜とは別売りとなる竜車はその内装を選ぶ事が出来る。
シン達は主に人が乗る事になる為、座席の多い竜車を2台用意してもらうように注文をつける。
「竜車ですが、地竜との兼ね合いもありますので明日の納品になるのですがよろしいですか?」
「ああ、構わない」
竜車を購入する事で、ネルへの道のりはかなりの時間が短縮される。
1日の遅れ程度では当初の予定よりも早く戻る事が出来る。
「あんた、大人しくしてなさいよ」
ユナに押さえつけられた地竜はもうユナには逆らう事をしないようであり、その言葉に従い大人しく飼育員達の言う事を聞いていた。
移動手段の確保が出来たシン達は翌日の受け渡し予定時間を決め、宿屋に戻る。
森の世界に戻るまで、地竜を使えば1週間ほどでネルまでは5日ほどで到着する事が出来る。
獣王からシーナを取り戻す為の手掛かりとなるアイナを仲間にし、シン達の獣王への反撃がここから始まる事となる。
「おっおう…」
仰々しく何かの儀礼と思わしき態度でシンのもとに駆けつけたアイナは今まで見た事もない派手な長衣を纏って現れた。
黒を基準にした長衣は何かの宝石が散りばめられており、初めて見る冒険者としてのアイナの服装にシンは軽くひいてしまっていた。
「ちょっと、もう少し目立たない服はないの?」
直接言う事を躊躇うシンを他所に、そのアイナの服装をみたユナが躊躇いなく指摘する。
シンからしたら赤い服を好んでいるユナも似たようなものだと思っているのだが、言うべき事ではないだろう。
「むっ、ユナ姉はこと長衣を知らないのですか?」
「何なのよ?」
「この深淵の黒衣はかの暗黒大帝が愛用していた逸品ですぞ」
「ほう?確かにそうだの、懐かしいのう」
アイナの説明にいつの間にか現れたティナが反応を示した。
暗黒大帝アモンがかつて使用していた黒い長衣は中位以下の魔術を無効化し、散りばめられた宝石は魔石と呼ばれる秘宝であり、無効化した魔術の魔力を吸収し持ち主に還元される。
アイナの魔石は全て輝きを放っている。
魔石は魔力が貯まると輝くようになっており、魔力が使用されるとその輝きがなくなり、灰色の石となる。
「暗黒大帝を知っているのですか?」
アイナとティナが会話をするのはこれが初めてだ。
ティナが魔王である事を知らないアイナは暗黒大帝を知っている事に驚いているようだ。
「アモンは妾の部下であるぞ?あやつの魔術は人の身では到達出来ん域にあるからの、妾の部下の中でも幹部にあたる者だ」
魔王の側近にあたる5人の魔族、魔帝と呼ばれる者の内の1人が暗黒大帝アモンであった。
5人の魔族それぞれが魔術、魔闘術、魔槍術、魔剣術、魔銃術を極めている。
それぞれの分野において最高の実力を持つ者が最高位の魔帝の名を冠する事が出来る。
ティナがエルリックに教えた魔槍飛燕流は、その魔帝の使用する槍術の流派の1つだ。
魔槍飛燕流は2大流派の1つであり、魔槍術を極めんとする者は己にあった流派を選択し槍術を学ぶ。
真面目なエルリックには正攻法の多い飛燕流があっているとティナは判断していた。
「暗黒大帝が部下とは、もしや魔王ではないのですか?」
アイナの雰囲気が変わった事をシン達はすぐに察した。
アイナはSランク冒険者だ、冒険者にとって最大の目標とも言えるティナは、アイナにとっても標的となっているのかもしれない。
最悪の場合ここで戦闘が起こりうる、だが警戒をするシン達を他所にアイナの顔は輝いているように見える。
「まさかこんな所でお会い出来るとは、師はやはり偉大なお方のようだ」
フフッと微笑みながらアイナは何かを理解したかのように立ち上がる。
何に納得したのかわからないシン達だが、懸念していた事にならずに胸をなで下ろす。
思えばアイナにとって魔王は標的でなく憧れの対象となるのかもしれない。
「師よ、これからの目的を大まかで良いので説明して頂きたいのですが」
シンはこれから森の世界に向かい獣王になったシーナを救う為、アイナに行ってもらいたい事を簡単に説明する。
獣王についてはリリアナ達を交えて話をしたいので、最初の目的が森の世界に戻る事だと教える。
「なるほど、獣王に対抗するのですね。それも我がいれば問題ないかと思います。Sランクの地位は非常に便利なのですよ」
シン達の立ち入れない区域や秘蔵されている文献などもSランク冒険者であれば閲覧が可能になる。
Sランクの名はそれほど全ての世界でかなりの融通が効く。
今まで不可能だった事がアイナの加入で可能となる。
「ネルの転移門までは竜車を使いましょう。長距離型の地竜を2匹購入します、この世界以外でも地竜がいれば移動も楽ですので」
短距離型の地竜では長旅に不向きであるし、雪原を走る事に慣れている為、他の世界では対応するまでに時間がかかる。
長距離型であれば商人達が他の世界にも使用出来るように調教しており、2匹購入すればここにいないリリアナ達の分まで確保出来る。
「地竜って高くないのか?」
地竜の値段はタイプにより様々な価格だが、地竜の年齢や能力によっても差が大きい。
最高級の地竜はシン達にはとても購入出来る値段ではない。
「我にお任せ下さい。良い店をしっていますので」
宿屋からアイナに案内され、地竜を取り扱う店舗に向かう。
大小の地竜達は店舗の隣にある飼育用の建物の中に並んでおり、餌となる魔獣の肉を食べ過ごしている。
「長距離型の地竜を譲ってほしい、若いやつで頼む」
「では見繕いますのでその中からお選び下さい」
「うむ」
偉そうに頷くアイナに地竜についてシン達は説明を受ける。
地竜は性格も重要であり、主人となる者に抵抗するような地竜では到底乗りこなす事など出来ない。
シンとしてはやたらと周りを威嚇するような地竜は遠慮したいのだが、魔獣などと遭遇する時に怯えるような地竜でも困る。
店員から案内された飼育場所で紹介された地竜達はそれぞれ性格が現れているようであり、シン達の様子を伺うような地竜や睨みつける地竜、ひたすらに無視をする地竜などその対応は様々だ。
「俺はこいつが良いな」
地竜は人間の観察が得意だ。
購入されるまではレンタルとして貸し出される地竜達はその度に人の性格を見抜いて対応を変える。
飼育員達の様子から貸し出されるのか購入されるのかも判断している。
今回のシン達と飼育員達の様子から既に自分達の主人となる者の見極めをしており、気に入った者にそれぞれアピールをするように行動している。
その中でシンは真っ直ぐと自分の事を見つめる1匹の地竜が気に入ったようだ。
凛々しく何か筋の通した面持ちをする焦げ茶色の鱗を持つ地竜はシンから発せられる威圧にも臆する事なく佇んでいる。
「私はこの子が良いわ」
ユナが選んだ地竜はどこか反抗的に見える地竜だ。
引き連れた飼育員の言う事をまともに聞かず、鼻を鳴らして威嚇をしている。
「あの子はあまりお勧め出来ません。情けない話ですが、あの子は調教すら出来ていないのです」
ユナに対し申し訳なさそうに言う店員は別の地竜を紹介する。
だが気に入った地竜が他にいなかったのかユナは反抗的な地竜に近づいていく。
「あんた、なかなか根性あるじゃない」
近づいたユナに対して臆する事なく威嚇する地竜はユナから発せられる覇気にも動じない。
その様子に満足したユナは地竜の頭を撫でようと手を伸ばすが、咄嗟に長い尻尾をユナに振りかざし攻撃をする。
突然の事態に近くにいた店員達も対応が出来ないが、ユナは何事もなかったかのように尻尾を刀の鞘で受け止め、唸り声を出す地竜を睨み返す。
気の強いユナはその程度の脅しで屈する事はない。
「わがままね、言う事聞きなさいよ」
シンからしたらユナも大概わがままなのだが、それは口にする事は出来ない。
ユナの様子から苛立ちを感じているシンは、出来る事ならこの反抗的な地竜にその苛立ちをぶつけてほしいのだ。
ユナを怒らせると痛い目を見るのはもう何度も経験している事だ。
地竜のしなやかで長い尻尾はその強靭な鱗と相まって強烈な一撃となるが、何度も繰り出される攻撃を全て避ける事なく受け切ったユナは反撃とばかりに地竜の頭部に拳を叩き込む。
本気で殴っては地竜の頭部はひとたまりもないのだが、手加減しているユナの拳は睨みつける地竜を大人しくさせるには威力が足りなかったらしく、さらに地竜は暴れまわる。
「あっあまり力で抑えつけるような事はやめて下さい!」
地竜の調教は暴力的な事をしない。
ゆっくりと時間をかけて人に慣らす事を徹底しており、攻撃をしてしまうと地竜はストレスをためてしまい、商品として成り立たなくなってしまう。
「うるさいわね、こういう奴には徹底的にやらなきゃダメなのよ!」
赤姫という個性の強いメンバーをまとめていたユナはその時の経験から反抗的な者には上から抑えつける事も必要だと学んだのだろう。
暴れまわる地竜を地面に押さえつけている。
しばらく押さえつけると反抗していた地竜が次第に大人しくなり、ユナに従うように小さく丸まっていた。
人間の何倍もの体躯を持つ地竜を押さえつけたユナに店員達は言葉をなくすが、満足したように大人しくなった地竜を購入すると言われ、我に帰り手続きの準備に入る。
「あの子を従えるとは、言葉がありませんね。あの子には色々と苦労していましたので値段の方もお下げします」
貸し出しに出そうにも言う事を聞かない地竜はこの店の者達にとって、頭痛の種となっていた。
その地竜を引き取ってもらえる事に喜んでいるのか、シンの選び出した地竜の値段も値下げしてもらえる事となった。
提示された金額は金貨40枚であり、シンは冷や汗を流してしまうが、アイナが魔導具の袋から取り出した金貨で支払いをする。
金貨40枚などを簡単に支払うアイナはさすがはSランク冒険者といった所だろう。
「あとは竜車を、2台用意してくれ」
地竜とは別売りとなる竜車はその内装を選ぶ事が出来る。
シン達は主に人が乗る事になる為、座席の多い竜車を2台用意してもらうように注文をつける。
「竜車ですが、地竜との兼ね合いもありますので明日の納品になるのですがよろしいですか?」
「ああ、構わない」
竜車を購入する事で、ネルへの道のりはかなりの時間が短縮される。
1日の遅れ程度では当初の予定よりも早く戻る事が出来る。
「あんた、大人しくしてなさいよ」
ユナに押さえつけられた地竜はもうユナには逆らう事をしないようであり、その言葉に従い大人しく飼育員達の言う事を聞いていた。
移動手段の確保が出来たシン達は翌日の受け渡し予定時間を決め、宿屋に戻る。
森の世界に戻るまで、地竜を使えば1週間ほどでネルまでは5日ほどで到着する事が出来る。
獣王からシーナを取り戻す為の手掛かりとなるアイナを仲間にし、シン達の獣王への反撃がここから始まる事となる。
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