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獣王との戦い
リリアナの覚悟
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「エルリック、何で本物のリリアナがわかったんだ?」
51階層の前室に宿泊していたシンは、50階層の試練で始めにリリアナを見抜き、ユナの攻撃から守った事を不思議に思っていた。
あの場面でエルリックが防御しなければ、ここまで早く突破出来なかっただろう。
ユナに攻撃させる事を思いついたのはリリアナだが、エルリックが活路を見出したのは間違いない。
「それが、僕にもわからないんだ」
「そうなのか?」
「ああ、気がついたらリリアナ様の前にいた。咄嗟の事だったから、僕にも何故だかわからないよ」
リリアナの危機を感じ取ったエルリックは、無意識で防御行動に出たらしい。
本能的にした行動だった為、リリアナを見抜いた理由が本人にもわからないのだ。
「あら?エルリックは本物のわたくしの事を必ず見抜いていると考えていたのですが、偶然だったのですね。残念です」
「リ、リリアナ様、決してそのような事は…」
わざとらしくハンカチを目に当て、泣いたような演技をする。
慌ててリリアナを泣き止まそうとするエルリックを、リリアナはからかい続けている。
「あそこでエルリックが、防いでなきゃリリアナはどうするつもりだったのよ」
呆れたようにユナは演技を続けているリリアナに問いかける。
ユナはエルリックが防げる速度で攻撃をした。
今のエルリックではユナの全力の攻撃を防げない為、ユナも力は抜いていた。
だが、それでもエルリックが反応しなければリリアナは確実に死亡していた。
演技を終わらせ、涼しげな表情で笑うリリアナは、自身の生死すら試練攻略の為に差し出している。
シンの勝利の為なら己の命すらリリアナは差し出す覚悟をしているのだ。
「ですが、こうして生きているのです。わたくし、運の強さには自信があるんですよ」
微笑むリリアナにシン達はため息を吐いてしまう。
50階層の試練を突破したとはいえ、ここまで何度も苦戦している。
そして疲労は蓄積されているにも関わらず、それを顔に出さないリリアナは、この面々の中でムードメーカーとして良い雰囲気を作り出す。
砂の世界で総大将を経験した事で、リリアナは精神的に強くなり、士気の大切さを学んだ。
戦闘で力になれない分、その他の部分に自分の役割を見出したのだ。
「あと半分か」
最初は質素であった試練の間は豪華さを増し、宿泊するのにも不自由がない。
30年突破者のいなかった30階層からの試練は、少しずつ難易度を上げている。
一刻も早く頂上を目指したいが、疲労を蓄積させたまま試練を受けるのは危険が大きい。
試練には失敗が許されない、失敗はシン達の死亡に繋がり、シーナ奪還や山の証の入手など、当然不可能となる。
慎重に、そして確実に試練を突破しなくてはならない。
シーナの奪還に制限時間は無い。
だが時間が経てば経つほど、獣王である山の神サリスは、シーナの氷狼の力などをさらに使いこなせるようになる。
ロイズの吸引闇虫による精神の入れ替える策は、獣王との戦闘を予定としている。
可能ならば獣王が完全でない状態で戦闘を行いたいが、焦りは禁物である。
「さあ、次に参りましょう」
休息を終えたシン達は、51階層の試練へと向かう。
試練の間に現れたシン達に立ち塞がるのは、3匹の
ユギリオスだ。
一際大きな真ん中の一体の咆哮が、開戦の合図となった。
**
「おや?シン達は世界樹に入ったのか」
何もない世界で、ノアは言葉を話す。
森の世界に辿り着いたシン達を観察していたノアは、その行動に残念そうな顔をしていた。
「さすがに、ボクもあの中は覗けないしなぁ」
ノアをもってしても世界樹の中の様子を探る事は出来ない。
山の神サリスが創り出した世界樹は、どのような者であっても、その内部の情報を知る事は叶わない。
それは神であっても同じ事だった。
「サリスはどうすると思う?」
つまらなそうにするノアは、傍に佇むミアリスに問いかける。
サリスと関わりの薄かったノアは、ミアリスの時のように、行動を読み切れなかった。
「私にもわかりません。あの醜い神の考えている事など、知りたくもありません」
「そうだよね、ボクもあいつの事苦手だったし」
ノアとミアリス、2人の神はそれぞれ、山の神サリスに嫌悪の感情を抱いていた。
ノアにとって自分以外の神全員がその嫌悪の対象となったいるが、サリスに対しては付き合いのなかったノアよりも、ミアリスの方がその感情は大きいようだ。
「いずれにしても、代行者も決めずに、自分の器を探す事に必死な神に、ボクのシンは負けないけどね」
無の神ノアは己の勝利を信じて疑わない。
山の神サリスに対し、勝利するだけの条件が、既に整っていると確信しているのだ。
「サリスには、何をしようかな?」
51階層の前室に宿泊していたシンは、50階層の試練で始めにリリアナを見抜き、ユナの攻撃から守った事を不思議に思っていた。
あの場面でエルリックが防御しなければ、ここまで早く突破出来なかっただろう。
ユナに攻撃させる事を思いついたのはリリアナだが、エルリックが活路を見出したのは間違いない。
「それが、僕にもわからないんだ」
「そうなのか?」
「ああ、気がついたらリリアナ様の前にいた。咄嗟の事だったから、僕にも何故だかわからないよ」
リリアナの危機を感じ取ったエルリックは、無意識で防御行動に出たらしい。
本能的にした行動だった為、リリアナを見抜いた理由が本人にもわからないのだ。
「あら?エルリックは本物のわたくしの事を必ず見抜いていると考えていたのですが、偶然だったのですね。残念です」
「リ、リリアナ様、決してそのような事は…」
わざとらしくハンカチを目に当て、泣いたような演技をする。
慌ててリリアナを泣き止まそうとするエルリックを、リリアナはからかい続けている。
「あそこでエルリックが、防いでなきゃリリアナはどうするつもりだったのよ」
呆れたようにユナは演技を続けているリリアナに問いかける。
ユナはエルリックが防げる速度で攻撃をした。
今のエルリックではユナの全力の攻撃を防げない為、ユナも力は抜いていた。
だが、それでもエルリックが反応しなければリリアナは確実に死亡していた。
演技を終わらせ、涼しげな表情で笑うリリアナは、自身の生死すら試練攻略の為に差し出している。
シンの勝利の為なら己の命すらリリアナは差し出す覚悟をしているのだ。
「ですが、こうして生きているのです。わたくし、運の強さには自信があるんですよ」
微笑むリリアナにシン達はため息を吐いてしまう。
50階層の試練を突破したとはいえ、ここまで何度も苦戦している。
そして疲労は蓄積されているにも関わらず、それを顔に出さないリリアナは、この面々の中でムードメーカーとして良い雰囲気を作り出す。
砂の世界で総大将を経験した事で、リリアナは精神的に強くなり、士気の大切さを学んだ。
戦闘で力になれない分、その他の部分に自分の役割を見出したのだ。
「あと半分か」
最初は質素であった試練の間は豪華さを増し、宿泊するのにも不自由がない。
30年突破者のいなかった30階層からの試練は、少しずつ難易度を上げている。
一刻も早く頂上を目指したいが、疲労を蓄積させたまま試練を受けるのは危険が大きい。
試練には失敗が許されない、失敗はシン達の死亡に繋がり、シーナ奪還や山の証の入手など、当然不可能となる。
慎重に、そして確実に試練を突破しなくてはならない。
シーナの奪還に制限時間は無い。
だが時間が経てば経つほど、獣王である山の神サリスは、シーナの氷狼の力などをさらに使いこなせるようになる。
ロイズの吸引闇虫による精神の入れ替える策は、獣王との戦闘を予定としている。
可能ならば獣王が完全でない状態で戦闘を行いたいが、焦りは禁物である。
「さあ、次に参りましょう」
休息を終えたシン達は、51階層の試練へと向かう。
試練の間に現れたシン達に立ち塞がるのは、3匹の
ユギリオスだ。
一際大きな真ん中の一体の咆哮が、開戦の合図となった。
**
「おや?シン達は世界樹に入ったのか」
何もない世界で、ノアは言葉を話す。
森の世界に辿り着いたシン達を観察していたノアは、その行動に残念そうな顔をしていた。
「さすがに、ボクもあの中は覗けないしなぁ」
ノアをもってしても世界樹の中の様子を探る事は出来ない。
山の神サリスが創り出した世界樹は、どのような者であっても、その内部の情報を知る事は叶わない。
それは神であっても同じ事だった。
「サリスはどうすると思う?」
つまらなそうにするノアは、傍に佇むミアリスに問いかける。
サリスと関わりの薄かったノアは、ミアリスの時のように、行動を読み切れなかった。
「私にもわかりません。あの醜い神の考えている事など、知りたくもありません」
「そうだよね、ボクもあいつの事苦手だったし」
ノアとミアリス、2人の神はそれぞれ、山の神サリスに嫌悪の感情を抱いていた。
ノアにとって自分以外の神全員がその嫌悪の対象となったいるが、サリスに対しては付き合いのなかったノアよりも、ミアリスの方がその感情は大きいようだ。
「いずれにしても、代行者も決めずに、自分の器を探す事に必死な神に、ボクのシンは負けないけどね」
無の神ノアは己の勝利を信じて疑わない。
山の神サリスに対し、勝利するだけの条件が、既に整っていると確信しているのだ。
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