プロクラトル

たくち

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獣王との戦い

森の世界を統べる者

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 シン達が世界樹の試練に挑んでいる頃、世界樹の都市ユグン、その中央にそびえるユーギリア城の謁見の間にある王座にて、獣王レオル・フリードは、堂々たる態度で謁見に来た者と対峙していた。

 獣王レオル・フリードの正体が、山の神サリスである事を知る者は殆どいない。
 謁見に来た者もその事を知る者ではない。

 獣王への謁見は、ある程度の地位のある者にしか不可能である。
 森の世界の者であれば、ある程度融通は利くのだが、他の世界の者では簡単に謁見する事は出来ない。

 森の世界で唯一である王のもとには、毎日数多くの謁見希望者が訪れるが、半年以上先になる事は珍しくない。
 いつ謁見する事が出来るのか、それは獣王の気分次第であり、1日中謁見する事もあれば、誰も謁見出来ない場合もある。

 現在、獣王と謁見している者は、身なりからそれなりの地位を持っている事が伺える。
 しかし、獣王からその者に対しての興味がないように思えた。

 獣王への謁見が叶った者は、必死になり何かの主張をしていたが、獣王は素っ気ない様子で、適当に相槌をうっているだけに見えるのだ。

 そのような態度を許される事からも獣王の存在の大きさを感じさせる。
 他の世界でどれほどの地位を得ていようが、この森の世界では、獣王こそが最高の存在なのだ。

 獣王に対し不快感を露わにする者も少なくはない。
 だが、このユーギリア城に仕えている者は、この森の世界最高峰の戦士達であり、例えどのような強者を連れていようと、強制的に排除される。

 獣王自身も強者である為、ここで何かを起こしても、不発に終わる事が殆どである。

「ここまでです、退室をお願いします」

 謁見に来た者は、話の途中であったが、警備の者に退室を促される。
 やり残した事があるような顔をしながら退室をするが、獣王はその程度の事を気にしない。

「では、私は戻るぞ」

 部下達を背にしながら獣王は謁見の間から退室をする。
 それが合図となり、今日の謁見は終了となる。
 次に待っていた者達の声が聞こえるが、それも獣王は気にせず、自身の部屋へと向かう。

「ふん、つまらん者ばかり来おって」

 ドサッと部屋に置かれた椅子に腰かけながら、獣王は愚痴を漏らす。
 この所、獣王があった者は皆、興味を持てない者ばかりでおり、退屈な話に飽き飽きとしていた。

「まあ、私の美しさを讃える所は悪くない」

 獣王に謁見した者は、全員がその容姿を讃えていた。
 勿論、全員が獣王の容姿が好みである訳ではない。
 お世辞として語る者もいるのだが、獣王の容姿が優れているのは事実である。

 正確には獣王レオル・フリードとなったシーナの体なのだが、現在その体を使って獣王として君臨するサリスは、既に己の物と捉えており、容姿を褒められ悪い気はしていなかった。

 山の神サリスは、お世辞にも美しいとは言えない容姿をしていた。
 サリス自身が、不摂生な生活をしていた所為もあるのだが、神としての容姿をサリスは良く思っていなかった。

 その為、現在のシーナの容姿を良く気に入っていた。
 先代の獣王は男と言う事もあり、気に入っていなかったのだが、今回のシーナには満足していた。

「やはり、女の体の方が馴染みやすい」

 これまで何度か女性の体を乗っ取った事もあり、これまだの経験から女性の体を使っている時の方が、力を引き出せているとサリスは考えている。

 事実、先代の時よりも現在の方が、戦闘に関しては上回っている。
 シーナの混じり合った存在が、氷狼と言う事もあり、その力は強大であった。

「だが、混じり者と言う点は気に入らんな」

 頭に生えた氷狼の耳を触りながら、シーナに対し文句を言う。
 仮にシーナが使命を果たしていれば、現在よりもさらに強力な獣王となっていたはずだ。

「それに、まだ若いな」

 平均よりも少しだけ小ぶりな胸を触りながら、サリスは言う。
 シーナはまだ成長途中であり、顔つきなどもまだ、幼さを残している。

「5年ほどか、その時には私は完璧な存在になるぞ」

 シーナの体が大人となった際の姿を想像し、サリスは微笑む。
 今はまだ、完成していないが、何年後かに完成した際は、歴代の女性獣王となった者と比べても、格段に美しくなる。
 そう考えると笑いを堪えられなかった。

「やはり、候補は女に限定するべきだな」

 これまでの経験から、獣王は次期以降の獣王候補についても考えていた。

 醜いと言われ続けていたサリスにとって、今のようにもてはやされた事はなく、非常に良い気分で日々を過ごしていた。

「メリィとか言う者も良かったが、獣化をしてしまっては仕方ないな。しかし、見れば見るほど美しい体だ」

 部屋に飾り付けられた大きな鏡で、自身の姿を見続けるサリスは自画自賛する。
 王者の気配を持つシーナの体は、それ相応に威厳もあり、成長途中と言う点を差し引いても、サリスは合格点を与えている。

「やはり、神はこうでなくてはな」

 我が物としたシーナの体で、様々な体勢を取り、サリスは満足気にする。

 山の神サリス、彼女が求めているのは世界の覇権などではない。
 神として相応しい美しさ、そして強さを兼ね備えた最高の器であった。

 山の神サリスが獣王として君臨する為の理由。
 それは、単純に自身の力を受け入れる美しい強者を、簡単に見つける為である。
 獣王選定はその為だけに作られた制度であり、森の世界のルールも、その為だけに作られた物だ。

 全ては、山の神サリスの為に。
 それがこの森の世界の存在意義である。

「そろそろ、我慢出来ないな」

 自身の姿を見続けていたサリスは、移動を始めた。
 向かう先は、隣にある自身の寝室である。
 高ぶった気持ちを鎮める為、サリスはベッドの中に入り込む。

 獣王レオル・フリード、謁見以外に獣王のしている事を知る者はいない。
 その獣王と言う存在として世界に降り立っている山の神サリスは、毎日同じ行為を繰り返していた。

「明日は、ずっとしていよう」

 頬を赤らめ、軽く息を乱したサリスは、明日の予定を決める。
 山の神サリスは、自分のやりたい事をするだけだ。
 それを咎める事の出来るの者は、誰もいないかった。
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