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獣王との戦い
世界の動き
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「ここが、無の世界ですか」
ノアにより無の世界へと連れ出されたリリアナは、以前そこには何もないと聞いていた通りに、本当に何もない事に驚きを感じていた。
リリアナはまだ、世界樹の試練での恐怖に震え、立つ事すらままならないが、今はこの何もない世界が、逆に落ち着きを与えるような感覚を感じていた。
この世の頂点である神、ノアの側にいると言う事も、リリアナを安心させる要素でもあった。
この場所には敵がいなく、他の世界から何かが立ち入る事もありえない。
「食事とかに関してはあいつが作るからね」
ノアが示す先には、かつての面影を僅かながらに残したミアリスの姿があった。
以前見た時に感じた神々しい雰囲気は既に感じられず、現在は普通の美しい女性と言う感想を持つ。
「食事と言っても神技によって作られる物だ。味は期待しないでくれよ」
ノアやミアリスなどの神は食事を必要としない。
その為、人族の味覚などもわからない為、以前無の世界に住んでいた頃、シンは何度も不味いとノアに文句をつけていた。
リリアナは王族として生きてきた事もあり、食事などの味にはうるさい一面もあるが、今は食事を取れるだけ感謝するべきだろうと考えている。
「ベッドとかはこれで良いかな?」
ノアは、リリアナが生活する為の家具を一通り作り出す。
リリアナの過ごしやすいように、ノアが気を使っている事をリリアナは実感する。
何もなかった世界に、リリアナの為に生活空間が出来上がる。
自身の支配する世界では、ノアは大抵の物ならば創造する事が出来るのだ。
「ボクは基本的にここからシン達の様子を見てるから、何かあれば呼んでくれよ」
リリアナの現状を分析したノアは、深く関わる事を良しと考えていないようであり、ミアリスと共にリリアナの前から消える。
ノアの消えたリリアナの居住は全くの無音であった。
風すらない世界には、自分の動く音しか聞き取る事はない。
「シン様、どうかご無事で」
自身の脱落に落胆しながらも、リリアナはシン達がこの先の試練を乗り越えられるよう案じていた。
**
「あれぇ、ラドラスちゃんどおしたのぉ?」
【空の世界エアリア】の空中都市のひとつで、空の神エウリスは”天帝”ラドラス・エルドラスと対峙していた。
この2人は敵対関係にある訳ではないようで、エウリスからもラドラスからも敵意は感じない。
2人の対峙、そう言うのは間違いなのかもしれない。
空の神エウリスのもとへと訪れたラドラスは何者かを持ち込んでいた。
銀色の髪をする女性は、片腕を失っており、意識もないようであった。
「それはぁ、お土産かなぁ?」
ラドラスの持ち込んだ人物に、エウリスは興味を示しているようであった。
ラドラスが持ち込むほどのならば、それなりの価値があるとエウリスは考えている。
「砂で会った女だ。おそらく魔族の血を引いている」
ラドラスが投げ捨てるように持ち込んだ女性をエウリスに渡す。
砂で会った、その事からエウリスはさらに興味を持つ事になる。
銀色の髪、それは魔族の証である。
魔族は現在、海の世界を拠点としており、他の世界にいる事はほとんどない。
その魔族と思われる人物が砂の世界にいたのだ。
エウリスが興味を持つには十分な理由である。
それに、研究好きのエウリスにも、魔族を研究した事はない。
神と同格の存在である魔王により、魔族達は守られていた。
いかにエウリスといえど、簡単には手出し出来なかったのだ。
「この子はぁ、ラドラスちゃんはいらないのぉ?」
「ああ、たまたま拾っただけだからな」
ラドラスは連れ込んだ人物の事を人とは考えていなかった。
エウリスに渡す為に持ち込んだのも、ちょっとした考えである。
「ならぁ、私の好きなようにするねぇ」
銀髪の女性を、エウリスは研究室へと送り込む。
エウリスの好きなようにする、それは連れ込まれた者にとって、決して良い事ではない。
これまで、エウリスにより研究された者は数多くいる。
だが、その中に無事に戻ってこれた者など1人もいない。
砂の世界でミアリスも同じ様な事をしているが、エウリスの研究はミアリスとは違う。
エウリスには、研究の目的はない。
連れ込まれた者がどの様な末路を辿るのか、それは誰にもわからない。
「ここは、どこ?」
最悪のタイミングで、連れ込まれた女性は目を覚ます。
四肢は既に動かす事が出来ず、自由はない。
「こんにちはぁ、お名前はなんて言うのぉ?」
ダボダボの白衣をだらしなく着込んだエウリスは、銀髪の女性に話しかける。
元赤姫ナンバー3であった、銀髪の女性、クレアの記憶は、この時を最後に永遠に途切れる事となる。
「さてぇ、今度は何しようかなぁ」
**
リリアナをノアのもとに送り、1日を休息に費やしたシン達は、次の81階層の試練に向け、足を進めていた。
シン達の中で、1番頭の良いリリアナの離脱は痛手だが、いつまでも立ち止まっている訳にはいかない。
休息を取ったおかげで、シン達の体調は万全である。
リリアナの守護という役目がなくなったエルリックは、主の不在に気を落としていたが、これも経験であると割り切り、さらなる成長をすると意気込んでいた。
「次は、どんな奴かな?」
エルリックと同じくリリアナの離脱に気を落としていたユナだが、エルリックと同じく気持ちの切り替えは済ませている。
試練の敵は、低階層の時と違い、強力になっている。
シン達にとって自分の力を高める為には、良い相手となる。
『王に打ち勝て』
試練の間に聞き慣れた声が響く。
王に打ち勝て、そう言われたシン達の前方に、人影が創り出される。
「あれは、先代様、それに先々代様」
シン達に立ちはだかるのは、シーナの前任の獣王。
そして、その前の獣王である。
シン達の敵となるのは、選定を勝ち抜いた森の世界最強と謳われる歴代獣王達である。
先代獣王による地形変動が、開戦の合図となった。
ノアにより無の世界へと連れ出されたリリアナは、以前そこには何もないと聞いていた通りに、本当に何もない事に驚きを感じていた。
リリアナはまだ、世界樹の試練での恐怖に震え、立つ事すらままならないが、今はこの何もない世界が、逆に落ち着きを与えるような感覚を感じていた。
この世の頂点である神、ノアの側にいると言う事も、リリアナを安心させる要素でもあった。
この場所には敵がいなく、他の世界から何かが立ち入る事もありえない。
「食事とかに関してはあいつが作るからね」
ノアが示す先には、かつての面影を僅かながらに残したミアリスの姿があった。
以前見た時に感じた神々しい雰囲気は既に感じられず、現在は普通の美しい女性と言う感想を持つ。
「食事と言っても神技によって作られる物だ。味は期待しないでくれよ」
ノアやミアリスなどの神は食事を必要としない。
その為、人族の味覚などもわからない為、以前無の世界に住んでいた頃、シンは何度も不味いとノアに文句をつけていた。
リリアナは王族として生きてきた事もあり、食事などの味にはうるさい一面もあるが、今は食事を取れるだけ感謝するべきだろうと考えている。
「ベッドとかはこれで良いかな?」
ノアは、リリアナが生活する為の家具を一通り作り出す。
リリアナの過ごしやすいように、ノアが気を使っている事をリリアナは実感する。
何もなかった世界に、リリアナの為に生活空間が出来上がる。
自身の支配する世界では、ノアは大抵の物ならば創造する事が出来るのだ。
「ボクは基本的にここからシン達の様子を見てるから、何かあれば呼んでくれよ」
リリアナの現状を分析したノアは、深く関わる事を良しと考えていないようであり、ミアリスと共にリリアナの前から消える。
ノアの消えたリリアナの居住は全くの無音であった。
風すらない世界には、自分の動く音しか聞き取る事はない。
「シン様、どうかご無事で」
自身の脱落に落胆しながらも、リリアナはシン達がこの先の試練を乗り越えられるよう案じていた。
**
「あれぇ、ラドラスちゃんどおしたのぉ?」
【空の世界エアリア】の空中都市のひとつで、空の神エウリスは”天帝”ラドラス・エルドラスと対峙していた。
この2人は敵対関係にある訳ではないようで、エウリスからもラドラスからも敵意は感じない。
2人の対峙、そう言うのは間違いなのかもしれない。
空の神エウリスのもとへと訪れたラドラスは何者かを持ち込んでいた。
銀色の髪をする女性は、片腕を失っており、意識もないようであった。
「それはぁ、お土産かなぁ?」
ラドラスの持ち込んだ人物に、エウリスは興味を示しているようであった。
ラドラスが持ち込むほどのならば、それなりの価値があるとエウリスは考えている。
「砂で会った女だ。おそらく魔族の血を引いている」
ラドラスが投げ捨てるように持ち込んだ女性をエウリスに渡す。
砂で会った、その事からエウリスはさらに興味を持つ事になる。
銀色の髪、それは魔族の証である。
魔族は現在、海の世界を拠点としており、他の世界にいる事はほとんどない。
その魔族と思われる人物が砂の世界にいたのだ。
エウリスが興味を持つには十分な理由である。
それに、研究好きのエウリスにも、魔族を研究した事はない。
神と同格の存在である魔王により、魔族達は守られていた。
いかにエウリスといえど、簡単には手出し出来なかったのだ。
「この子はぁ、ラドラスちゃんはいらないのぉ?」
「ああ、たまたま拾っただけだからな」
ラドラスは連れ込んだ人物の事を人とは考えていなかった。
エウリスに渡す為に持ち込んだのも、ちょっとした考えである。
「ならぁ、私の好きなようにするねぇ」
銀髪の女性を、エウリスは研究室へと送り込む。
エウリスの好きなようにする、それは連れ込まれた者にとって、決して良い事ではない。
これまで、エウリスにより研究された者は数多くいる。
だが、その中に無事に戻ってこれた者など1人もいない。
砂の世界でミアリスも同じ様な事をしているが、エウリスの研究はミアリスとは違う。
エウリスには、研究の目的はない。
連れ込まれた者がどの様な末路を辿るのか、それは誰にもわからない。
「ここは、どこ?」
最悪のタイミングで、連れ込まれた女性は目を覚ます。
四肢は既に動かす事が出来ず、自由はない。
「こんにちはぁ、お名前はなんて言うのぉ?」
ダボダボの白衣をだらしなく着込んだエウリスは、銀髪の女性に話しかける。
元赤姫ナンバー3であった、銀髪の女性、クレアの記憶は、この時を最後に永遠に途切れる事となる。
「さてぇ、今度は何しようかなぁ」
**
リリアナをノアのもとに送り、1日を休息に費やしたシン達は、次の81階層の試練に向け、足を進めていた。
シン達の中で、1番頭の良いリリアナの離脱は痛手だが、いつまでも立ち止まっている訳にはいかない。
休息を取ったおかげで、シン達の体調は万全である。
リリアナの守護という役目がなくなったエルリックは、主の不在に気を落としていたが、これも経験であると割り切り、さらなる成長をすると意気込んでいた。
「次は、どんな奴かな?」
エルリックと同じくリリアナの離脱に気を落としていたユナだが、エルリックと同じく気持ちの切り替えは済ませている。
試練の敵は、低階層の時と違い、強力になっている。
シン達にとって自分の力を高める為には、良い相手となる。
『王に打ち勝て』
試練の間に聞き慣れた声が響く。
王に打ち勝て、そう言われたシン達の前方に、人影が創り出される。
「あれは、先代様、それに先々代様」
シン達に立ちはだかるのは、シーナの前任の獣王。
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