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空の世界
脱獄
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「何言ってんだ? お前は」
ダンテと名乗った天使の言葉にシンは耳を疑う。
天使によって捕縛されたシンが、何故天使に脱獄を手伝われるの事になるのか理解が追い付かないのだ。
「ん? 信用出来ないか?」
「当たり前だろ。 お前みたいな不真面目そうな奴の言葉はな。 それにお前とは初対面だしな」
ダンテは見た目から不真面目そうな雰囲気が感じられる。
これまで出会った天使と違い、服装は着崩れているし何より口調が軽い。
天使から感じた威厳どころか、天使という存在のイメージすらこのダンテにより崩されてしまう。
だいたい、大天使候補とか言うのも怪しいくらいだ。
この男がそんな大層な役職に就けるとも思えない。
「あんた、ローウェルちゃんと関わっただろ? で、その事でここに囚われている」
シンの考えを知ってか知らずか、ダンテはシンが捕らえられている経緯を語る。
「あんたをここに連れ出したのは俺様と同じ大天使候補のネヴィスって奴だ。 まあ、何か手柄でも欲しかったんだろ」
ダンテの話により大天使候補が複数いる事がわかる。
そして、その候補者が大天使となる為に有利となる手柄をシンを捕らえる事であげようとした事も。
「あんたも運が悪い。 まさか、あんなとこでローウェルちゃんと関わるなんてな」
シンがローウェルと接触した時の事をダンテも知っているのだろう。
先ほどまでの飄々とした表情と違い、今はシンが気の毒そうな表情をしている。
「あんたは知らないだろうが、ローウェルちゃんは先々代の大天使様の娘だ。 まあ、あの娘の存在は秘匿されてるけどな」
ローウェルが一人前の天使と認められないのは自由に飛行出来ないから、そう考えていたシンであるがそれ以上に深い理由がありそうだ。
秘匿と言うからには決して外にその存在を知られたくないのだろう。
そのローウェルと関わった事で、シンはここに囚われているのだ。
シンとしてはいい迷惑だ。
秘匿されているのなら、あんな場所に連れ出さなくてもいい。
確かに浮遊島ステップには、人は皆建物の内部に閉じこもっていたが、だからと言ってそこに向かわせなくてもいい。
ダンテが言うようにシンは運が悪かったのだ。
偶然、あの場で居合わせた事がだ。
何かが欠けていれば、あの場にシンはいなかったはずだ。
ノアの転移にエウリスが介入した事。
ティナとサリスが最初に着いた浮遊島があの無人島でなければ。
そして、ティナの生命探知で浮遊島ステップ以外の場所に向かう事になれば。
最後にサリスがあの場所に異空間による移動をしなければ、だ。
「そこで、何で俺様があんたを助けるかだ」
ダンテは、ここで本題に入る。
ここの提案次第では、様子を見つつだがシンはダンテと協力する事にする。
「その前に、ここでの会話は気にしなくてもいい。 今この場所を監視してる奴は排除した。 俺様の力でな」
「わかった。 話を聞くよ」
牢獄のど真ん中で脱獄の話をする事が気になっていたシンだが、ダンテはその心配がないと言う。
仮にも大天使とやらの候補なのだ、それなりに力はあるのだろう。
「実は、俺様は大天使候補だが、そこまで有力じゃない」
信じられないと言いたげな顔をするダンテだが、シンは当然だと感じていた。
こんな男を上司にするなど、シンでも嫌である。
「そこで、あんたの力を借りたい」
「俺? 何でそうなる」
見ず知らずのシンに助けを求める理由がわからない。
それにシンはこの空の世界の敵とも言える存在だ。
そのシンに天使であるダンテは、本来なら敵対関係に当たるはずだ。
「俺様は不思議な能力を持っててな。 まあ、普段は使い物にならないんだが、こう言う時は役に立つ。 あんた、空の証と獅子の強心が欲しいんだろ?」
ダンテはシンの欲している物をぴたりと当てる。
その事は、シンの仲間以外には知らないはずである。
「俺様は、何となくだが他人が欲しい物が何かわかるんだ。 上手く説明出来ないが、イメージとしては、見ている相手の背後にその欲しい物が見える感じだな」
シンの目的を的中させたからにはダンテの言う通りなのだろう。
しかし、それが何故シンと協力する理由になるのかわからない。
空の証が目的とわかるなら、シンを抹殺でもしようとするのが、天使の役目のはずだ。
「それを手に入れるのに俺様が協力してやる。 だからあんたは俺様が大天使となるのに協力してくれ」
ギブアンドテイクの関係、そうダンテはシンに協力を求めてくる。
今のところ、シンにとっても悪い話ではない。
ユナ達と別れてしまいシンは1人であるし、この空の世界の事を知るダンテがいるのは心強い。
脱獄の方法も思い付いてはいなかったので、最悪裏切られる事となっても脱獄まで出来たならそこから単独で逃げ切る事は可能なはずだ。
「脱獄が先、それが条件だ」
「了解、よろしくな」
厳しめの口調のシンに対し、ダンテの返事は軽い。
いまいち信用する事の出来ない男だが、現状を変える意味では良いのかもしれない。
「よし、なら早速行くぞ」
「はっ?」
「ちょっと待ってろな」
急激にやる気を出したダンテにシンはついていけない。
しかし、そんなシンを傍目にダンテはその場を立ち去る。
「あんたの荷物はこれで全部か?」
しばらくして戻って来たダンテが持って来たのは、シンが身に付けていた腕輪と魔導具の袋だ。
基本的に持つ物を少なくするシンは、そのぐらいしか持ち歩いていない。
「ちょっと離れてくれ」
ダンテの指示に従い、シンはダンテから遠ざかる。
「時間が勝負だからな」
直後、ダンテは力を込め透明な壁を殴りつける。
シンがあれほど打撃を加えても崩れなかった透明な壁は、ダンテの一撃で音を立て崩れ落ちる。
「行くぞ、走れ!」
ダンテの一撃は、壁を崩れさせる音を出すにとどまらない。
耳を覆いたくなるほどの警報が鳴り響き、静寂に包まれていたはずの牢獄に、一瞬にして騒音が響き渡る。
「こっちだ!」
「お前、後で覚えてろよ!」
こうなれば、もうこの場をすぐに立ち去る他ない。
シンの脱獄に、知略や策の類いはありえない。
どこの牢獄であろうと力を持って脱出する。
シンの脱獄の逸話は、本人の意向を無視して後世に語られる事となる。
ダンテと名乗った天使の言葉にシンは耳を疑う。
天使によって捕縛されたシンが、何故天使に脱獄を手伝われるの事になるのか理解が追い付かないのだ。
「ん? 信用出来ないか?」
「当たり前だろ。 お前みたいな不真面目そうな奴の言葉はな。 それにお前とは初対面だしな」
ダンテは見た目から不真面目そうな雰囲気が感じられる。
これまで出会った天使と違い、服装は着崩れているし何より口調が軽い。
天使から感じた威厳どころか、天使という存在のイメージすらこのダンテにより崩されてしまう。
だいたい、大天使候補とか言うのも怪しいくらいだ。
この男がそんな大層な役職に就けるとも思えない。
「あんた、ローウェルちゃんと関わっただろ? で、その事でここに囚われている」
シンの考えを知ってか知らずか、ダンテはシンが捕らえられている経緯を語る。
「あんたをここに連れ出したのは俺様と同じ大天使候補のネヴィスって奴だ。 まあ、何か手柄でも欲しかったんだろ」
ダンテの話により大天使候補が複数いる事がわかる。
そして、その候補者が大天使となる為に有利となる手柄をシンを捕らえる事であげようとした事も。
「あんたも運が悪い。 まさか、あんなとこでローウェルちゃんと関わるなんてな」
シンがローウェルと接触した時の事をダンテも知っているのだろう。
先ほどまでの飄々とした表情と違い、今はシンが気の毒そうな表情をしている。
「あんたは知らないだろうが、ローウェルちゃんは先々代の大天使様の娘だ。 まあ、あの娘の存在は秘匿されてるけどな」
ローウェルが一人前の天使と認められないのは自由に飛行出来ないから、そう考えていたシンであるがそれ以上に深い理由がありそうだ。
秘匿と言うからには決して外にその存在を知られたくないのだろう。
そのローウェルと関わった事で、シンはここに囚われているのだ。
シンとしてはいい迷惑だ。
秘匿されているのなら、あんな場所に連れ出さなくてもいい。
確かに浮遊島ステップには、人は皆建物の内部に閉じこもっていたが、だからと言ってそこに向かわせなくてもいい。
ダンテが言うようにシンは運が悪かったのだ。
偶然、あの場で居合わせた事がだ。
何かが欠けていれば、あの場にシンはいなかったはずだ。
ノアの転移にエウリスが介入した事。
ティナとサリスが最初に着いた浮遊島があの無人島でなければ。
そして、ティナの生命探知で浮遊島ステップ以外の場所に向かう事になれば。
最後にサリスがあの場所に異空間による移動をしなければ、だ。
「そこで、何で俺様があんたを助けるかだ」
ダンテは、ここで本題に入る。
ここの提案次第では、様子を見つつだがシンはダンテと協力する事にする。
「その前に、ここでの会話は気にしなくてもいい。 今この場所を監視してる奴は排除した。 俺様の力でな」
「わかった。 話を聞くよ」
牢獄のど真ん中で脱獄の話をする事が気になっていたシンだが、ダンテはその心配がないと言う。
仮にも大天使とやらの候補なのだ、それなりに力はあるのだろう。
「実は、俺様は大天使候補だが、そこまで有力じゃない」
信じられないと言いたげな顔をするダンテだが、シンは当然だと感じていた。
こんな男を上司にするなど、シンでも嫌である。
「そこで、あんたの力を借りたい」
「俺? 何でそうなる」
見ず知らずのシンに助けを求める理由がわからない。
それにシンはこの空の世界の敵とも言える存在だ。
そのシンに天使であるダンテは、本来なら敵対関係に当たるはずだ。
「俺様は不思議な能力を持っててな。 まあ、普段は使い物にならないんだが、こう言う時は役に立つ。 あんた、空の証と獅子の強心が欲しいんだろ?」
ダンテはシンの欲している物をぴたりと当てる。
その事は、シンの仲間以外には知らないはずである。
「俺様は、何となくだが他人が欲しい物が何かわかるんだ。 上手く説明出来ないが、イメージとしては、見ている相手の背後にその欲しい物が見える感じだな」
シンの目的を的中させたからにはダンテの言う通りなのだろう。
しかし、それが何故シンと協力する理由になるのかわからない。
空の証が目的とわかるなら、シンを抹殺でもしようとするのが、天使の役目のはずだ。
「それを手に入れるのに俺様が協力してやる。 だからあんたは俺様が大天使となるのに協力してくれ」
ギブアンドテイクの関係、そうダンテはシンに協力を求めてくる。
今のところ、シンにとっても悪い話ではない。
ユナ達と別れてしまいシンは1人であるし、この空の世界の事を知るダンテがいるのは心強い。
脱獄の方法も思い付いてはいなかったので、最悪裏切られる事となっても脱獄まで出来たならそこから単独で逃げ切る事は可能なはずだ。
「脱獄が先、それが条件だ」
「了解、よろしくな」
厳しめの口調のシンに対し、ダンテの返事は軽い。
いまいち信用する事の出来ない男だが、現状を変える意味では良いのかもしれない。
「よし、なら早速行くぞ」
「はっ?」
「ちょっと待ってろな」
急激にやる気を出したダンテにシンはついていけない。
しかし、そんなシンを傍目にダンテはその場を立ち去る。
「あんたの荷物はこれで全部か?」
しばらくして戻って来たダンテが持って来たのは、シンが身に付けていた腕輪と魔導具の袋だ。
基本的に持つ物を少なくするシンは、そのぐらいしか持ち歩いていない。
「ちょっと離れてくれ」
ダンテの指示に従い、シンはダンテから遠ざかる。
「時間が勝負だからな」
直後、ダンテは力を込め透明な壁を殴りつける。
シンがあれほど打撃を加えても崩れなかった透明な壁は、ダンテの一撃で音を立て崩れ落ちる。
「行くぞ、走れ!」
ダンテの一撃は、壁を崩れさせる音を出すにとどまらない。
耳を覆いたくなるほどの警報が鳴り響き、静寂に包まれていたはずの牢獄に、一瞬にして騒音が響き渡る。
「こっちだ!」
「お前、後で覚えてろよ!」
こうなれば、もうこの場をすぐに立ち去る他ない。
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