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第一章
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異世界転生。この世の誰もがが悶えるほどの甘美な響き。しかし理想と現実は程遠く、日常とは得てして毎日退屈なものだった。はぁ、しょーもない世界……
…だった頃が懐かしい。
「イリス様、朝ですよ!お食事の用意ができています」
「…そうか、よし、今すぐ向かおう」
眠気の取れない頑固な瞼に朝日を浴びせ、ふと窓の外を見る。
霧がかった空はどこまでも続き、漏れた光は広大な庭や宮廷を照らしている。静寂の中の小鳥のさえずりは耳をツンと刺し…ここが異世界であると教えてくれていた。
(今日もちゃんと異世界だ…!)
「「おはようございます!!」」
「ああ、おはよう」
召使いなどの世話係は元気がいい。朝からマンキンスマイルを貰うというのもなかなか悪くはないものだ。俺は緩んだ口角と襟をキュッと引き締めて自室を後にした。
まったく、異世界転生ってやつは最高だ。顔立ちは凛々しく美しく、手に入らないものなど存在しない。四畳半の豚小屋生活とはすべてが対極に等しい。
あまりの変容ぶりだ。もちろん転生したばかりの頃は召使いにここがどこなのかと執拗に尋ね、あまつさえ自分の容姿はカッコいいか、美しいかと質問攻めをした。
その答えはみな同じだった。
「イリス様はフィグリスタ王国の女王であるイグリルド様に使える、容姿端麗、眉目秀麗、誰もが振り向く誇り高き」
『奴隷です』
…………俺は…奴隷?
容姿端麗で眉目秀麗、誰もが振り向く誇り高き……奴隷?ふざけているのか?
奴隷といえば…やはり思い浮かぶのは足に枷を付けられ、身体は傷み手には血がにじむ哀れな姿だ。かく言う俺はどうだ。一体どこが奴隷だというのだ。
一体どこが……
「イリス様、お待ちしておりました。イグリルド様たちは既にお見えになっています」
あぁ、下らんことに気を取られて足取りが遅くなっていたらしい。
「すまない、女王陛下の機嫌はどうだ?」
「問題ありませんよ、いつも通り聖母のような笑顔でした」
満面の笑みを浮かべる彼女の顔を見ればそれは嘘ではないとすぐに理解できた。了解したと頷き、自分の背を遥かに超える扉にグッと力をかける。
「食事を冷ましてしまいました。大変申し訳ございません」
背筋に力を入れ深々と頭をさげ、陛下の言葉を待つ。
「いいのですよ、遅刻と言ってもたったの三分。私は猫舌ですから」
「お母様は優しすぎるわ。こういうときは一喝するのだって立派な仕事でしょ?」
多少の緊張はあったものの、陛下の物腰の柔らかさと慈愛の心にはいつも助けられている。
「さぁ、陛下の寛大さに感謝して席に着きなさい」
「はい、お父様」
父親の声に促され自分の席へと向かう。
その声は地面に近いところから聞こえてくる。それも女王陛下の真下から……
その姿はまさに……
奴隷だった。
…だった頃が懐かしい。
「イリス様、朝ですよ!お食事の用意ができています」
「…そうか、よし、今すぐ向かおう」
眠気の取れない頑固な瞼に朝日を浴びせ、ふと窓の外を見る。
霧がかった空はどこまでも続き、漏れた光は広大な庭や宮廷を照らしている。静寂の中の小鳥のさえずりは耳をツンと刺し…ここが異世界であると教えてくれていた。
(今日もちゃんと異世界だ…!)
「「おはようございます!!」」
「ああ、おはよう」
召使いなどの世話係は元気がいい。朝からマンキンスマイルを貰うというのもなかなか悪くはないものだ。俺は緩んだ口角と襟をキュッと引き締めて自室を後にした。
まったく、異世界転生ってやつは最高だ。顔立ちは凛々しく美しく、手に入らないものなど存在しない。四畳半の豚小屋生活とはすべてが対極に等しい。
あまりの変容ぶりだ。もちろん転生したばかりの頃は召使いにここがどこなのかと執拗に尋ね、あまつさえ自分の容姿はカッコいいか、美しいかと質問攻めをした。
その答えはみな同じだった。
「イリス様はフィグリスタ王国の女王であるイグリルド様に使える、容姿端麗、眉目秀麗、誰もが振り向く誇り高き」
『奴隷です』
…………俺は…奴隷?
容姿端麗で眉目秀麗、誰もが振り向く誇り高き……奴隷?ふざけているのか?
奴隷といえば…やはり思い浮かぶのは足に枷を付けられ、身体は傷み手には血がにじむ哀れな姿だ。かく言う俺はどうだ。一体どこが奴隷だというのだ。
一体どこが……
「イリス様、お待ちしておりました。イグリルド様たちは既にお見えになっています」
あぁ、下らんことに気を取られて足取りが遅くなっていたらしい。
「すまない、女王陛下の機嫌はどうだ?」
「問題ありませんよ、いつも通り聖母のような笑顔でした」
満面の笑みを浮かべる彼女の顔を見ればそれは嘘ではないとすぐに理解できた。了解したと頷き、自分の背を遥かに超える扉にグッと力をかける。
「食事を冷ましてしまいました。大変申し訳ございません」
背筋に力を入れ深々と頭をさげ、陛下の言葉を待つ。
「いいのですよ、遅刻と言ってもたったの三分。私は猫舌ですから」
「お母様は優しすぎるわ。こういうときは一喝するのだって立派な仕事でしょ?」
多少の緊張はあったものの、陛下の物腰の柔らかさと慈愛の心にはいつも助けられている。
「さぁ、陛下の寛大さに感謝して席に着きなさい」
「はい、お父様」
父親の声に促され自分の席へと向かう。
その声は地面に近いところから聞こえてくる。それも女王陛下の真下から……
その姿はまさに……
奴隷だった。
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