異世界転生したけど女王の椅子役の一族に生まれてしまった…。流石に逆転無理ですか?

わっさん

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第一章

1話 おぎゃりました。奴隷でした

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「よっしゃぁぁ!」

そこに一つの生命が誕生した。
 転生に成功した俺は勝利の雄叫びを上げると辺りを見回した。

「あぁ、イリス。無事生まれてくれて……」

(この人が俺のお母さんか…、美しい。これは俺の容姿にも期待が膨らむな)

その他には…、恐らく召し使いの者たちだろう。
 (召し使いに囲まれている?)
……ということはもしや俺って貴族の家系に生まれたのでは…?

 やばい、勝ってしまった。俺にはこれから先なに不自由ない暮らし、それはそれは素晴らしく明るい未来が待っている。そうに違いない。

「まぁ、リゼナに似てとても可愛いらしい男の子ですね。これからの成長が楽しみです」

「はい!イグリルド様のお力添えでこんなに元気に生まれてくれました。ありがとうございます…」

 その声のする方へ体を傾けると、召し使いと呼ぶには高貴すぎる姿。絹のようにきめ細かい白髪と整いすぎた顔。母親の姿からしてこの人はこの家の当主かそのクラスの貴族なのだろう。

 しかし俺の目にはイグリルド様、そしてもう一人の人間の姿が見えている。視線を地面に落とすと見えるのは一人の成人男性だった。

(この国では奴隷制度が存在するのだろう。あまり気分が良いものではないな……)

ここは異世界だ。奴隷のようなものが存在するのはあるあるみたいなもの。しかし、いざその光景に当事者として直面するとなんとも言えない気持ちになる。

 ところで、母親がいて召し使いがいて、肝心な存在が一人欠けているみたいだが…

「リゼナ!よく頑張った!!これで我が家の将来も安泰だ」

「はい…!」

(おお、やはり父親もいるのか。ところでどこにいるのだろうか、できれば美形で超絶イケメンな父親であると嬉しいのだが……)

 体を右へ左へと傾け全体を見渡す。この部屋はとても広い。開けているため見つけやすいかと思ったがそもそも男が見当たらない。

(いや、いないこともないのだが……)

そっとその男へと視線を合わせる。

「おぉ!今イリスと視線があったぞ!!我が息子ながらとても美しい」


…………ん?

いやいや、ちゃいますやん。あんた踏まれてますやん。

状況と発言が噛み合わないとはまさにこのことだ。奴隷が俺の父親?まさか、奴隷の子供がここまで大袈裟に祝われるわけがない。
 そうだ、過酷な労働で頭がおかしくなっているのだ。自分が父親だと勘違いしてるに違いない。

「俺が父親だぞ~、ダリスパパだぞ~!!」

などと言っている。まったく勘弁してほしいものだ。貴様が俺の父親なわけ…

「これでダリスの跡継ぎも安心ですね。父親としてしっかりとイリスを育てるのですよ?」

「もちろんです!必ずやイグリルド様も認める立派な奴隷にしてみせます!!」

 あぁ、終わったこれ。この尻に敷かれてる人俺の父親です。自分で奴隷とか言っちゃってるし。

「見ろ!イリスも嬉しそうだぞ」

んな訳あるか!!

「本当ね、この子は立派に育ってくれるはずだわ」

どいつもこいつも好き勝手言いやがって…!
この先どうすればいいんだ……

「それは楽しみですね、頑張るのですよイリス」

…………………


      イリス·イリエスタ爆誕





 





 フィグリスタ王国。世界でも最も権威を持っていると言われている五稜星の一つである大国だ。 
エネルギー変換率が特段高いとされるフィグリス鉱石が多く産出され、国名にもなっている国の生命を担った鉱石。

 しかしそれも昔のはなし。

 今となっては鉱石を用いらずとも効率の良いエネルギーの搾取ができてしまう。
剣と魔法の世界と言うほどのファンタジーはないが、科学技術を用いて似通った力を得ることはできる。
 つまりは、転生前よりも幾分近未来化が進んだ世界のようだ。
 まるで素晴らしい異世界。もろ手を挙げて楽しむ新たな人生。そんなものが待っていると思っていたのに……

「奴隷はないだろう!!」

部屋中に響く声が反響して消えて行く。

時代錯誤も甚だしい。わざわざ異世界に転生してまで下等な人生を送らねばならないのか?いやむしろもっと酷い。ニートの頃は社会の底辺ではあれど自由だった。今の俺は翼を捥がれ飛ぶこともできない。
 しかしこの世界の奴隷はなんだかおかしい。
奴隷と言えどその仕事は女王の椅子として働くことで…、もちろんそれも意味分からんのだが、一番理解ができないのはその地位にある。

 フィグリスタ王宮に仕える役職の一つとされていて、その地位は女王陛下の一族の一つ下。要するに仕える者としては最高権力を有しているのだ。

 まるで王族とも遜色ない生活を送りながら、その役職は奴隷。女王やその令嬢の座り心地よき椅子として人生を全うする。
 この世界では女王の椅子になることは大変素晴らしいこと。その姿には羨望の眼差しが注がれ、憧れを抱くらしい…

 「まったく、この国には馬鹿しかいないのか!」

 思わず声を荒らげ、机上に拳を振り上げる。

「まったく、うるさい椅子ね。そんなことて私の奴隷が務まるのかしら」

どこからともなく響く声と扉の閉まる音。毒を吐きながら俺の部屋に入ってきたのは女王イグリスタ様の令嬢であるルルシアお嬢様だ。その姿はイグリスタ様の美しさの全てを受け継ぎ、洗礼された顔立ちは聖女のようだ。ミルク色の髪の毛は透き通るほど細かく、花や自然がよく似合う。

「相変わらず毒を吐くのが得意なようですね、ルルシアお嬢様」

「毒ではないわ。ご褒美と呼びなさい」

 しかし相変わらず鼻につくガキだ。中身は容姿と釣り合わない傍若無人な野生の虎。慎ましくいてくれればどれだけ楽なことか。

ルルシアは俺が生まれてから一年遅れて生まれてきたイグリスタ様の娘。次期の女王となるルルシアに仕えて専属の奴隷として共に過ごす。それが俺に課せられた仕事だ。

 そして七年と2ヶ月、今に至るまで身の回りの世話をこなしてきた。それもこれも女王となったルルシアの椅子として生涯をまっとうするため…

………ではない

俺の人生逆転のためだった。
その鍵となるのが、次期女王であるルルシアなのである。

「何ボケッとしてるのよ、私の奴隷ならもっとシャキッとしなさい」

「すいません…。ルルシアお嬢様は本当に可愛いなと思って、ついつい見惚れてしまいまして」

 ニコリと微笑みルルシアと視線を合わせる。少し顔を赤らめる彼女を見るとどうやら俺の作戦は上手く進行できているようだ。

 ここまでに何年もかかった。最初はただの奴隷とお嬢様。その目に写っている俺の姿はただの椅子だった。毎日のように時を重ね、毒を吐く彼女を優しく包み、なるべく立場が対等になるように、そして自分に惚れるように…!努めてきた。

「そ、そんなことはどうでもいいのよ!いいから今日の予定を読み上げなさい」

「かしこまりました」

 ここ最近は本当にその効果がよく見てとれる。濃度100%の毒をゆっくり、ゆっくりと中和していく。

主従の関係性が解けたとき。そのときにこそ晴れて俺は自由を手にする。

 俺はルルシアを妻にする。



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