ネオンと再生

ふら

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2. 追放

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それから三日後のことだった。山下は社長室に呼び出された。壁一面が濃紺の木材で覆われた社長室は、山下の営業部長室とは対照的に、外の光を遮る重々しい空間だった。

社長の岸田は、山下よりも数歳若いが、その顔には冷酷な経営者の非情さが張り付いていた。岸田は山下を座らせることもなく、重役椅子に深く腰掛けたまま、机の上の資料を指先で叩いた。

「山下。K社の件だ。君の責任問題は免れない」

山下は、三日間の間に想定しうる最悪の事態を脳内で何度もシミュレーションしていた。彼は、責任は取るが、降格の上で会社に残る道を探るつもりだった。長年会社に尽くしてきた自負があった。

「今回の事態は、私の監督不行き届きに尽きます。しかし社長、私はこの会社に二十五年尽くしてきました。役員になるまでもなく、現場の指導という形で――」

山下の言葉を、岸田は冷たく遮った。

「その長年の功績は認める。だが、世間は許さない。東亜ハウジングのブランドイメージ失墜は、君一人の功績では挽回できない。会社を守るためだ。君には辞めてもらう」

「辞める、ですか……」山下は、脳が言葉の意味を理解するのに数秒を要した。リストラ。それは成功者であった彼にとって、対岸の火事、あるいは敗者に与えられる烙印だった。

「早期退職という形を取る。慰労金は出す。君のこれまでの功績に見合う額だ」

山下は血の気が引くのを感じた。「待ってください。私が退けば、社内の混乱は収まるでしょうが、私はまだ働けます。何より、私は……」

「もう結構だ」岸田は山下の言葉を拒絶した。「君の席はもうない。会社の方向転換に、君の古いやり方はそぐわなくなった。これは不祥事の処理であると同時に、新陳代謝だ。わかってくれ」

山下は反論の言葉を失った。冷たい風が、彼の過去の栄光を吹き飛ばす音を聞いた気がした。

社長室を出た山下を待ち受けていたのは、より残酷な現実だった。

廊下を歩く彼の姿を見た部下や同僚たちは、一様に目を逸らした。かつては彼に媚びへつらい、その判断を仰いだ者たちだ。彼らの間には、すでに情報が共有されているのだろう。

「お疲れ様です、山下さん」と声をかけてきた若手社員がいた。かつて山下が引き上げた男だ。しかし、その目には同情ではなく、安堵と冷たい観察の色が宿っていた。

「残念ですね。お身体、お大事に」という言葉は、彼らが「自分は助かった」と心の底で思っていることを雄弁に物語っていた。

山下は誰とも目を合わせなかった。彼らはもう、自分の仲間ではない。自分は、彼らが安全を確保するために、切り捨てられた部品に過ぎないのだ。

「ああ、ありがとう」

そう言って、山下はまるで異物のように、自分の聖域だったフロアを後にした。東京の午後の陽射しが、彼の背中を冷たく照らしていた。
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