大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第一章 森の魔女

第4話 今日はダラダラするって決めてたから!

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「師匠、今日は仕事に行きましょうね」

 師匠が二杯目の紅茶を飲み終えたタイミングを見計らい、僕はそう切り出しました。

「…………」

「師匠?」

 一体どうしたというのでしょうか。師匠は、マグカップをじっと見つめながら固まってしまいました。数秒後、ゆっくり顔を上げたかと思うと、ぎこちない笑顔を僕に向けます。

「いやー。弟子君の入れてくれた紅茶、おいしかったよ。さすがだね」

「ああ、どうも。それで、仕事についてなんですが」

「今日はいい天気だね。お散歩日和だ」

 窓の外に視線をやりながらそう告げる師匠。

 …………何となく察しました。

「今日の仕事は」

「あ、でも、あえて二度寝をするのもいいなあ」

「…………」

「…………」

「仕事に行きますよ」

「やだ!」

 そう叫びながら、師匠は、バンッと両手でテーブルを叩きました。ですが、相当勢いよく叩いたせいでしょう。次の瞬間には、両手をテーブルから離し、痛そうにヒラヒラと振り始めました。

「どうしてですか!?」

「今日はダラダラするって決めてたから!」

「ええ……」

 師匠と出会って、呆れるということを何度経験してきたでしょうか。軽く百は超えているように思います。

「もう! そう言っていつも仕事さぼるじゃないですか。今日こそ行きますよ」

「やーだー」

「昨日の夜、役所から催促の手紙も来てるんです」

「それでもやだ」

 顔を膨らませてプイッと横を向いてしまう師匠。なかなか折れてくれそうにありません。

 …………はあ。

 僕は、心の中で溜息をつきながら、ゆっくりと椅子から立ち上がりました。テーブルに片手をつきながら、自分の顔を、師匠の耳元に近づけます。師匠の花のように甘い香りが、僕の鼻腔をくすぐりました。

「師匠」

 師匠にそっと耳打ちする僕。

「今回は、かなりの報酬が出るらしいですよ」

「よしやろう!」

 そう宣言しながら、師匠はバッと立ち上がりました。僕に向けるその笑顔は、百点満点、いや、百二十点満点と評しても差し支えないでしょう。

 そんな師匠を見ながら、僕はこう思うのでした。

 ふっ、ちょろいですね。
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