大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第一章 森の魔女

第17話 き、気のせいです!

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「この岩、何ですか?」

 僕が戻ると、師匠は、湖からかなり離れた所にいました。その前には、なぜか先ほどまではなかったはずの大きな岩があります。

「張り込みなのに隠れるところがなかったから。君が戻ってくる前に、魔法でちょちょっとね」

「なるほど。あ、パンとミルク買ってきましたよ」

「やった! 私、もうお腹ペコペコ。こんなに頑張るのは久しぶりだからね」

「普段からだらけすぎなんですよ。もっとしっかりしてください」

「それは断る!」

「なんでですか!」






「このパン、いつもと違うやつだけどおいしいね」

「それはよかったです。探したかいがありました」

 岩陰に座って食事をする僕と師匠。ぽかぽかと温かい日差しが降り注ぎ、時折、優しい風が頬を撫でます。風が吹き抜ける音、鳥たちが戯れる声。平和と言っても差し支えない状況です。

 ですが、今は張り込み中。いつ、湖に魔法をかけた人物が現れるのか分かりません。僕は、岩陰から湖の方をチラチラと覗き見ながら、怪しい人物が来るのを待っていました。

「なかなか来ませんね」

「まあ、気長にいこうよ。焦っても仕方ないしね。あ、こっちのパンもなかなか……」

「師匠、何だか楽しんでません?」

「そう?」

 とても穏やかな師匠の表情。どう見ても、今この状況を楽しんでいます。

 そりゃ、傍から見れば、まるで僕と師匠がピクニックをしているような状況ですし、楽しいと思う心はちょっぴりありますけど。実際のところは張り込み中なわけで。もうちょっと緊張感をですね……。

 その時、少しだけ強い風が吹きました。師匠の白銀色の髪が、フワリと風に揺れます。穏やかな表情を浮かべたまま、左手で髪を押さえる師匠。その姿は、とても綺麗で、魅力的で……。

「弟子君? 顔が赤いけど、もしかして体調悪かった?」

「き、気のせいです!」

 師匠の言葉に、僕は急いで顔をそらすのでした。
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