大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第五章 弟子

第128話 ……分かった

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「ち! 相変わらず、そのクソみたいな性格は変わってねえな。まあいい。お前、今の状況分かってるよな。ちょっとでも不審な動きしてみろ。お前の弟子の命はねえぞ!」

 僕の首にあてがわれるナイフの刃。このナイフが、ほんの少し力を入れて動かされればどうなるか。想像に難くありません。

 僕は、グッと歯を食いしばります。それでも、この恐怖から逃れることはできません。僕の目の前に広がるのは、紛れもない「死」。それが僕を飲み込むまで、あとどれくらいの猶予が残されているのでしょうか。

「……そう。じゃあ、どうすれば彼を解放してくれる?」

「…………は?」

 師匠の言葉に、男性の口から間抜けな声が飛び出しました。その目は大きく見開かれ、驚いていることがまるわかりでした。

 そして、数秒後。男性の口角がゆっくりと上がり、「クックック」と笑い声を漏らし始めました。

「…………」

「あっはははは。あの『戦花の魔女』が、人質を取られたくらいでみっともねえこと言いやがる。こりゃ、愉快だ」

「…………」

「よしよし。それなら、笑わせてくれた礼にこいつを解放してやるよ。ただし、こっちの言うとおりに動いてもらえたらだがな」

「……分かった」

 ああ……そんな……。

 まさか、師匠が、こんな奴の言いなりになってしまうなんて。それもこれも、僕が……僕が……弱いから……。

「それなら、まずはその杖を捨てて両手を挙げろ」

「…………」

 師匠は、無言で杖から手を離しました。杖が床に落ち、コツンという乾いた音が、倉庫内に響きます。床の杖に目もくれず、こちらをじっと見つめながら、師匠は両手を挙げました。

「よし。じゃあ次に、その杖をこっちへ蹴ってよこせ。両手は挙げたままだ」

「…………」

 蹴られて転がる杖。それは、男性の足元まで行き、ピタリとその動きを止めます。

 少しずつ。ですが着実に。僕と師匠にとって状況が悪くなっていくのが分かりました。
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