130 / 164
第五章 弟子
第129話 私を……
しおりを挟む
「これで、杖のないお前は魔法を使えない。観念するんだな」
ケタケタケタと笑う男性。勝利への確信。その感情が、状況を傍観するしかない僕の方にもありありと伝わってきました。
「……言うとおりにしたのに、まだ彼を解放してくれないの?」
冷たい師匠の声が、倉庫内に小さく響きます。
そう。師匠がここまで男性に従ったのは、ひとえに人質である僕を解放させるためです。ですが……。
「は! 何言ってやがる。解放なんてするわけねえだろ!」
「そんな!」
「…………」
男性の返答に、思わず情けない声を発してしまう僕。しかし、そんな僕とは対照的に、師匠は無言で男性を睨みます。
「やっとだ。やっと、俺の復讐が……」
男性が持つ杖の先。そこから灰色の光が放たれます。次の瞬間、杖の周りを囲むように数本のナイフが現れました。ギラリと怪しく輝く刃先。ひとたび男性が杖を振れば、それらは師匠に向かって飛んで行ってしまうのでしょう。
「じゃあな、くそ野郎。あの世で後悔……」
「ねえ」
不意に、師匠が口を開きました。言葉を遮られた男性の顔が、ほんの少し歪みます。
「けっ、命乞いか?」
「あなた、勘違いしてない?」
「は? 急に何言って……がああああ!」
倉庫内に響き渡る叫び声。自らの右目を押さえながら地面に倒れこむ男性。傍には、床に転がされた師匠の杖。その先に付着した、赤黒い血。
それは、ほんの一瞬のうちに起こった出来事でした。床にあった師匠の杖がひとりでに動き出し、男性の右目を勢いよく突いたのです。
ほとんどの魔法は、杖を使わなければ使用できません。ですが、僕は知っています。杖を使わずとも使用できる魔法も存在するということを。そして、師匠がそれを習得しているということを。
「私を……」
脱兎のごとく駆け出す師匠。床に落ちている杖を素早く拾い、のたうち回り続ける男性に向かって魔法を放ちます。
「私を怒らせると、こうなる」
そんな、冷たい言葉とともに。
ケタケタケタと笑う男性。勝利への確信。その感情が、状況を傍観するしかない僕の方にもありありと伝わってきました。
「……言うとおりにしたのに、まだ彼を解放してくれないの?」
冷たい師匠の声が、倉庫内に小さく響きます。
そう。師匠がここまで男性に従ったのは、ひとえに人質である僕を解放させるためです。ですが……。
「は! 何言ってやがる。解放なんてするわけねえだろ!」
「そんな!」
「…………」
男性の返答に、思わず情けない声を発してしまう僕。しかし、そんな僕とは対照的に、師匠は無言で男性を睨みます。
「やっとだ。やっと、俺の復讐が……」
男性が持つ杖の先。そこから灰色の光が放たれます。次の瞬間、杖の周りを囲むように数本のナイフが現れました。ギラリと怪しく輝く刃先。ひとたび男性が杖を振れば、それらは師匠に向かって飛んで行ってしまうのでしょう。
「じゃあな、くそ野郎。あの世で後悔……」
「ねえ」
不意に、師匠が口を開きました。言葉を遮られた男性の顔が、ほんの少し歪みます。
「けっ、命乞いか?」
「あなた、勘違いしてない?」
「は? 急に何言って……がああああ!」
倉庫内に響き渡る叫び声。自らの右目を押さえながら地面に倒れこむ男性。傍には、床に転がされた師匠の杖。その先に付着した、赤黒い血。
それは、ほんの一瞬のうちに起こった出来事でした。床にあった師匠の杖がひとりでに動き出し、男性の右目を勢いよく突いたのです。
ほとんどの魔法は、杖を使わなければ使用できません。ですが、僕は知っています。杖を使わずとも使用できる魔法も存在するということを。そして、師匠がそれを習得しているということを。
「私を……」
脱兎のごとく駆け出す師匠。床に落ちている杖を素早く拾い、のたうち回り続ける男性に向かって魔法を放ちます。
「私を怒らせると、こうなる」
そんな、冷たい言葉とともに。
0
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里いちご
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
ルーカスと呪われた遊園地(上)
大森かおり
児童書・童話
このお話のつづきは、ルーカスと呪われた遊園地(中)に公開しました。ご覧いただく方法は、大森かおりの登録コンテンツから、とんで読むことができます。
かつて日本は、たくさんの遊園地で賑わっていた。だが、バブルが崩壊するとともに、そのたくさんあった遊園地も、次々に潰れていってしまった。平凡に暮らしていた高校二年生の少女、倉本乙葉は、散歩に出かけたある日、そのバブルが崩壊した後の、ある廃墟の遊園地に迷い込んでしまう。そこで突然、気を失った乙葉は、目を覚ました後、現実の世界の廃墟ではなく、なんと別世界の、本当の遊園地に来てしまっていた! この呪われた遊園地から出るために、乙葉は園内で鍵を探そうと、あとからやってきた仲間達と、日々奮闘する。
下出部町内漫遊記
月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。
ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。
「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。
そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。
あんなに練習したのに……。
意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。
迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった!
あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。
じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。
それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。
ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。
ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん!
七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。
奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。
ママのごはんはたべたくない
もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん
たべたくないきもちを
ほんに してみました。
ちょっと、おもしろエピソード
よんでみてください。
これをよんだら おやこで
ハッピーに なれるかも?
約3600文字あります。
ゆっくり読んで大体20分以内で
読み終えると思います。
寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。
表紙作画:ぽん太郎 様
2023.3.7更新
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」
山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち
スピンオフ作品
・
ウルが友だちのメロウからもらったのは、
緑色のふうせん
だけどウルにとっては、いらないもの
いらないものは、誰かにとっては、
ほしいもの。
だけど、気づいて
ふうせんの正体に‥。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる