標識上のユートピア

さとう

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二章

三十八話

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弾けとんだ父のブレスレット。
気付いた時、とてつもなく胸騒ぎがした。一度深呼吸をして、自分を落ち着かせる。
きっと大丈夫なはずだ。ブレスレットが弾けたから縁起悪く感じただけだ。
しかし、どうしても佐久間のメールを想起してしまうのだった。  
俺の父親は、本当に仕事に行ったのだろうか? 疑念が浮かぶ。  
もしかして、母が入院している今だからこそ……。それ以上は考えたくなかった。
朝食を温める間に、携帯電話を開く。岸本からメールが来ていた。板垣の見舞いに行かないかという誘いだった。 
少々気が早いと思うが、今日はこれといった予定もない。岸本に『いいよ』と返信して、用意を始めることにした。
 
 
 
 
 待ち合わせ場所に指定されたのは、病院の前だった。
まだ見舞品を購入してないとのことだったので、二人で近くの店に行くことにした。
「そういえば、許可もとらずに板垣の見舞い行っても大丈夫なのか?」 
 最初は生花にしようと思ったが、病院によっては許可が下りない場合もあるらしい。無難に果物ゼリーを選び、かごに入れる。
「その点なら平気なのだ」  
 岸本が胸を張った。 
「お父さんを通じて、佐久間がアポをとってくれたのだ」
「……そうか」
 俺の表情が歪んだのを、岸本は見逃さなかった。
「どうしたのだ? 佐久間が何かやったか」
 不安げに尋ねてくる。
正直に言おうか迷ったが、佐久間は岸本の友人だ。しかも善意で紹介してもらった人とだけあり、悪評を伝えるのはどうにも気が引けた。
「いや、なんでもない」 
 無理やり笑顔を作り、俺は財布を取り出した。
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