標識上のユートピア

さとう

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二章

四十七話

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 板垣の見舞いに訪れた後、俺は母の病室に向かうことにした。これまで全然来られなかったので、せめてもの償いにこれからはなるべく来るつもりだ。
しかし、病室のドアを開けると、そこにいたのは俺が最も忌み嫌う人物だった。 
「翼か」
 父が振り向いて言った。
なんであんたがここにいる。お前にここにいる権利はない。そう言いたかったが、母がいる手前粗暴なことはできなかった。  
「翼、来てくれたのね」
 母は微笑んでくれたが、体調はあまり芳しくない様子だった。俺自身、前回の衝撃からまだ冷めていないのかもしれない。
「あら、立ち尽くしちゃってどうしたの。椅子ならもうひとつあるわよ」
 母が椅子を指して言った。とりあえず腰をかけたが、父の存在が気がかりで、内心落ち着かなかった。
昨日家を出て何をしていたんだ? まさかずっと病院にいたわけではあるまい。
「……翼?」
 母が心配そうに声をかけてきた。
咄嗟に「どうしたの?」と誤魔化したが、疑念を拭えたわけではなかった。
母が聞きたがったのは、俺の日常についてだった。学校のこと、部活のこと……。あまり愉快な返事はできなかったが、母は楽しそうに聞いてくれた。病気のことなど素知らぬ表情で。
しばらくして、父が腕時計を見る。
「翼、そろそろ帰るか」  
 確かに、長時間居座って母に負担をかけるわけにもいかない。不本意ながらもうなずき、母にまた来ることを告げた。
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