女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀

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この世界の食事

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「あ…お口に合わなかったですか?」

「え!?あ…そんなことないです!」

私の反応に、シュンっと落ち込んでしまったリーリエに慌てて否定する。
ただ、私に出来る料理を全力で作ろうと心で決めた。

使われてる食材を見る限り、私の世界と似てるし。
今日の夜には、美味しいって思ってもらえるモノを作ろう。


「女性には、我々の料理は合わないみたいですね…すみません」

「うっ……私こそ、ごめんなさい」

ヴェルアにもションボリと肩を落とされてしまい、私は居たたまれなくなる。
この世界では、この味付けが普通なのかもしれない。それなのに、私の反応一つでこんなに、あからさまに落ち込まれると心が痛む。


「ユヅキが謝ることではありませんよ。私たちの配慮が足りなかったせいですから」

「すみません、ユヅキ…。これでも、ヴェルアとランディの腕は一流なんですが、女性の口に合わないと思っていなかったんです」

何故かリーリエとヴァルアから更に謝罪され、ランディもションボリと肩を落としている。
私の反応一つで、美形達がこうも表情をコロコロと変えるのを見ていると、心が痛むけど、ちょっとだけ…くすぐったく感じる。

シーンとした空気をどうにかしないと、と考えた結果――。

「きょっ、今日の夜!私がご飯作るから、食べてくれる?」


「………」

声が裏返って、変な声が出てしまった…。恥ずかしい……。
シーンとした空間が、更に静まりかえる。
3人がキョトンとした表情で不思議そうに私を見つめてきた。


「――喜んで、ユヅキ」

すぐにリーリエが花が咲いたような笑みを浮かべ、頷いてくれた。
どんな人も魅了するような笑みを間近で見てしまった私は、顔を真っ赤にして俯くことしかできなかった。


(女の人が周りにいないから、この世界の男の人達って…自分の容姿の良さに気付いてない人が多いのかも…)


リーリエがこんな綺麗な笑みを私に向けるのも、きっと…女性に慣れてないから、だと思うし。


何が言いたいのかと言うと、自覚してほしいのだ。自分たちが、どれだけイケメンなのかを。
この世界で生きていくなら、この美形達の紳士すぎる対応にも慣れないといけないんだよね…。
慣れることなんてできるのかな…。日本人の私にはちょっと難易度が高すぎるんだけど。


「ユヅキが作る料理、とても興味深いですね。是非、私にも味見させてください」

「おおおっ、お、俺も!ぜっ、是非……!!」

リーリエに続き、ヴェルアは素敵な笑みを浮かべて頷き、ランディは顔を真っ赤にしながらも頷いてくれた。
ランディは真っ赤な顔を隠すように顔を俯かせていたけど、赤い耳が丸見えで…すぐに照れているのが分かった。だけど、そのことには触れないでおいた。
ここでからかったりしたら、ランディにさらに距離を置かれそうだからね。

「ありがとう。がんばって作るから楽しみにしててね!」

皆の期待に応えられるか分からないけど、今夜は私の得意な料理を作ろう。
その前に、今この家にどんな食材があるのか確認しないといけないね。

後で確認しようと心で決めて、今はお腹を満たすことに集中した。



「――ご馳走様でした」

何とかご飯を食べ終わり、ホッと一息ついた頃を見計らって、リーリエが紅茶に口をつけながら口を開いた。


「さて、ユヅキ。休憩をさせてあげたいんですが、先にこの世界のことについて、もっと詳しく説明しますね」

「ううん、私もこの世界のこともっと知りたいから、お願いします」

「ではまず―――」

最初にも説明してもらった情報を、もっと詳しく教えてくれた。

この世界の人口を表すなら、98%が男性で、後の2%が女性とのこと。
今私がいるこの国には、女性は10人くらいらしい。なぜ「らしい」のかと言うと、見たことが無いから、断言が出来ないんだと、リーリエが苦笑いを浮かべながら話してくれた。

女性が少ないため、この世界では男同士の結婚も認められている。
その為、ゲイもいるらしいが…バイの割合の方が高く、ノンケもゲイよりは多い。


大体の国は、女性が生まれたとき、王族が保護し、育て――王族か貴族と結婚させられる。
学校にも通うことが強制されており、王族が作った学校に通わなければならない。
大体は、その学校で出会った王族、貴族と結婚するんだとか。

まるで道具なような扱いだ。
確かに王族や貴族と結婚すれば、不自由なく生活はできるだろう。だけど、女なら…好きな人が出来て、恋愛をして…好きになった人と結婚をしたい、と私は思う。

女性にとって、この世界は不自由しかない気がする。

ただ、一妻多夫が認められているから、平民とも結婚は可能らしい。


「なんだか頭が痛くなるシステムだよね…。私は、決められた人とじゃなく、好きな人と結婚したいなぁ」

「ええ、ユヅキの言うとおりです。ただ、こうしないと、私たち、男性が滅んでしまいますので……」

確かに、女性が滅んでしまえば男性も自然と滅んでしまうだろう。
子孫を残せないのだから、仕方ないことなのかもしれないけど…でも、こう考えると男性たちも大変なんだよね。


「ワガママは言えない、よね…。ごめんなさい、私自分のことしか考えてなくて……」

「ユ、ユヅキが謝ることじゃないです!……こんな法を作った王族が悪いんですから」

どこか表情を暗くし、まるで懺悔するかのようにリーリエは私に頭を下げる。
そんなリーリエの様子に心配になって、思わずリーリエの頭に手を伸ばしていた。

「…っ、ユヅキ?」

気付いたら私の手はリーリエの頭の上にあり、ポンポンと子供を慰めるように撫でていた。
リーリエは不思議そうに顔を上げたが、どこか不安そうな表情を浮かべていて、なんだか手を離そうとは思わなかった。それどころか、もっと撫でてあげたい、なんて思ってしまった。

「リーリエ、大丈夫。私は、リーリエを嫌ったりしないから、ね?」

何故かリーリエの表情が、母親と離れた迷子の子供のような表情をして見えたから。
だから、私は寂しさを紛らわせてあげようって思ったんだ。


「フフ……、ユヅキは、不思議な方ですね。何だか、心が軽くなりました」

「私は一般人だよ?だけど、リーリエと一緒にいることはできるから」

さっきの不安そうな表情が嘘のように消え、花が咲いたかのような温かな笑みを浮かべる。
元気になったリーリエの姿を見て、私はホッと胸をなでおろした。

こう…人を慰めるのが、ハッキリ言って上手じゃない。
だから、これでダメだったらパニックになっていたかもしれないんだよね。

(元気なってくれて良かった…。やっぱり、リーリエには、笑顔が似合ってるよ)


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