女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね？

女性ならプレゼントは嬉しいモノ

「女性って、こんなに温かな笑みを浮かべるんですね…」

「そう、ですね……俺、胸が張り裂けそうですよ……」

ランディとヴェルアが私を見て、そんなことを話していたなんて知る由もなかった。

「それから外に出る時は、私かヴェルア、ランディの誰かと一緒に出掛けるようにしてください。後、ユヅキには顔を隠すためのマントも必要ですね…後、服もユヅキに似合う物を作らせないといけないですね…」

最初は私に話していたはずが、気付けばリーリエは一人で何かを考えながらブツブツ言いながら自分の世界に入り込んでしまった。

その呟く言葉に「オーダーメイドしないと…」なんて言葉が聞こえた気がするけど、きっと気のせいだよね…？

「私も是非、ユヅキに贈り物をしたいです。ネックレスなど身に付けたりしますか？」

「お、俺も！！…ユヅキが嫌じゃ、なければ……」


「ちょ、ちょっと待って！そんな、急にそんなこと言われても困るって！」


このままだと３人から、プレゼントを貰うことになってしまう。
流石に出会ったばかりの私なんかに、そこまでしてもらう理由が無いし。
ここはちゃんと断って………。

「ユヅキは嫌ですか？女性には贈り物をするものだと、聞いたことがあるんですが…」

今まで独り言を呟いていたリーリエが私の言葉に真っ先に反応し、シュンっとあからさまに落ち込んだ。
イケメンは何をしても様になるね…なんて現実逃避をする。

こんな反応をされてしまったら、否とは言えない…。

だけど、なんて言えばいいのか分からなくて、無言な私にヴェルアが優しげに目元を緩め、私の許に近寄ってきた。
そして、私の横で片膝をつき、自分の髪に付けていた髪飾りを外し、私の髪に付けてくれた。

「私達は、自分の意思でユヅキにプレゼントをしたいと思っておりますので、どうか受け取ってください」

「そ、そこまで言われたら、断れないじゃないですか…」

ヴェルアが付けてくれた髪飾りに触れながら困ったように笑えば、ヴェルアは「それが狙いですから」なんて綺麗な笑みを浮かべた。

これはやられたな…なんて苦笑いを浮かべ、素直にお礼を言う。

「ありがとうございます。でも、これ貰っていいんですか？」

ヴェルアが愛用している物では？と首を傾げて聞けば、ヴェルアは「ユヅキに使ってほしいので」と言うだけで、それ以上何を言っても無駄だと思い、このまま貰うことにした。

「ヴェルア……いつの間にそんなにユヅキと仲良くなったんですか？」

いつの間にか二人の世界に入っていたらしく、リーリエがムスっとした表情を浮かべて、どこかトゲのある言い方で聞いてくる。
今まで笑顔だったリーリエの態度の変化に少し驚く。

「あ、リーリエ、ごめんなさい。私、何か気に障ることしましたか…？」

「ユヅキ、リーリエ様はふて腐れているだけですから、気にしないで大丈夫ですよ」

「ヴェルア！ユヅキにそんなこと言わなくていいだろう！？」

ヴェルアの言葉にリーリエが思わず遮るように声を張った。
どこか慌てた様子で、顔を真っ赤にしていて…そんな様子が大人っぽく見えても、何だか子供みたいで可愛いなぁ…なんて思ってしまう。

「ふふっ。ヴェルアとリーリエは仲が良いんですね」

二人のやり取りはまるで、親と子のようで、見ていて癒された。
完璧だと思っていたリーリエがこんなに取り乱すなんて…ヴェルアって実はすごいのかも。


「ヴェルアばかりずるい……。私からも、これをユヅキに」

ボソっと何かを呟き、リーリエは私の許に寄って来ると、自分の首に付けていたネックレスを外し、そのまま両手を私の首に回して、ネックレスを付けてきた。


生まれて初めて男性との至近距離に、胸が破裂するかと思った。

「リリ、リーリエ！？」

「あ！？す、すみません！！つ、つい…！」

顔を真っ赤にして、リーリエの行動に驚いていると、リーリエも自分がした行動に気付いたのか、私同様顔を真っ赤にさせて慌てて離れて行った。

この世界の男性たち、ちょっと女性の扱いに慣れてないですか！？
どこが女性と初めて会ったのかな！？
こんな自然に私の髪に髪飾りを付けたり、ネックレスを付けたり……私はパニックなんですけど！

ヴェルアは表情なんて全然変えないから、動揺してるのかしてないのかわからないし。

だけど…リーリエは分かりやすすぎ、かな？


「リーリエ、ありがとう」


リーリエが勇気を出してプレゼントしてくれたんだから、ここは素直に受け取っておこう。

「い、いえ。……ユヅキ、とても似合ってます」

私の胸元で光っているネックレスに視線を向けてから、私に向けてハニカんだ。
私も片手でネックレスに触れて、その存在を確認する。
さっきまでリーリエがつけていた物が私の首にあるなんて、なんだか現実味が感じない。


「あ、ユヅキ。ずっと気になっていたんですが、その敬語、やめませんか？これから一緒に住むんですから、敬語だと他人行儀みたいで…」

「え…でも、それは流石に……」


リーリエが思い出したように口を開いたと思ったら、口調についてだった。
確かに、私は普段から敬語で話すキャラではない。どちらかと言うと、敬語は苦手な方だし。
だからって、タメ口でいいんだろうか？
流石に失礼な気がするんだけど……。


「お願いします。ユヅキには自然体でいてほしいんです」

「……わ、わかった」

リーリエが真剣にお願いをしてくるものだから、ついに頷いてしまった。


私は敬語をやめろって言いながら、リーリエは敬語のままだ。
どうやら、リーリエは敬語が自然体らしい。
たまに、焦ってる時とか敬語が崩れるのは、さっきのヴェルアとやり取りを見ていてわかった。