奴隷達と異常な日々

青海 兎稀

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第一章 異世界の常識

第3話 常識を教えてもらいましょうか1

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「あ、ごめんっ!その、ファリエスってリヒートとヴァルナと違って小さいから、可愛いなーって……」

「うぅっ……アズサ、酷いよ…」

「あ、あれ?ファリエス!?な、泣かないで??」

何故か私の言葉にショックを受けた様子のファリエスに、動揺が隠せない。
挙句にポロポロと涙を零し、静かに泣かれてしまっては…もうお手上げ状態だ。


「リ、リヒート…」

助けを求めるようにリヒートに視線を向けたら、苦笑を浮かべて一つ頷いて、ゆっくりとファリエスに近づいていく。

「ファリエスはこれから成長期でしょう?まだ100年しか生きていないのですから」

「ひゃ、百年!?え、ファリエスって100歳!?」

リヒートに任せようとしたが、まさかの発言に素っ頓狂な叫び声が出てしまった。
だが、驚いているのは私だけらしく、ヴァルナは「こいつ何言ってんだ?」という目で見てきているし、リヒートとファリエスはキョトンとしている。

「…ああ、アズサは異世界人でしたね。では、折角ですのでこの世界について、恐れながら私めからご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」


リヒートは私のさっきの言葉を思い出したようで、一つ頷くと自ら説明役を名乗り出てくれた。
折角なので、ここはリヒートの言葉に甘えておくことにしよう。

「ご、ごめんね…?よろしくお願いします」

何せ奴隷を買った理由がこの世界の常識を得るためだとは…今更言えるわけもなく、ペコリと頭を下げた。
そしてフッとテーブルの上を見て、何も出していないことをに気付く。

「あ…お、お茶用意するね!」

流石に説明してもらう側だ。お茶とお菓子くらいは用意するべきだろうと思い、ソファから立ち上がろうとした時――ヴァルナがゆっくりと立ち上がった。

「――アズサ、お茶を用意するのは奴隷の役目だ。俺が用意するから、座って待ってろ。勝手に調理場漁るが、いいか?」

「う、うん。ちょっと汚いかもしれないけど…」

ヴァルナの言葉はどこか有無を言わせぬ威圧感があり、視線を彷徨わせながら頷くことしかできなかった。
何だか奴隷であるヴァルナたちの方が立場が上な気がしてならないのだが…気のせいだろうか。いや、気のせいではないだろう。

ただ考えれば考えるほど虚しくなるため、考えることをやめた。

「んじゃ、ちょっと待ってろ」

ヴァルナは私の言葉にニィっと爽やかな笑みを浮かべるとリヒートとファリエスをチラっと見てから、キッチンへと向かって行ってしまった。
その意味ありげな視線に首を傾げながら二人を見れば…目線が合ってしまい、ぎこちなく笑みを向ければ、ニッコリと綺麗な笑みを浮かべられた。

未だに慣れない綺麗な顔立ちの奴隷達に、ずっと私の胸はドキドキしっぱなしだ。
そのうち親族が爆発して死んでしまうかもしれない…なんて馬鹿げたことを考えながら、ヴァルナが戻ってくるのを待つことにした。


そしてすぐに、ヴァルナはシンプルな銀のトレーにカップを4つと、小皿に可愛らしいクッキーを乗せて戻ってきた。

湯気が上がるカップをまず私の前に音もなく置き、クッキーの乗ったお皿を私が取りやすい位置に置いた後に、リヒート、ファリエス、そして最後にヴァルナ自身が座る場所の前のテーブル置く。
一つ私に頭を下げてから、リヒートの隣に腰掛けた。

まるで本物の執事のような振る舞いに、思わずうっとりと眺めてしまう。
訓練を受けたかのような洗練された立ち振る舞いは、だれがどう見ても完璧な程だ。

「…ヴァルナも執事としての仕事が出来たのね」

「はあ?当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだよ?」

「こんな乱暴な言葉遣いだから、あんまり期待してなかったんだけど…トレーを運ぶ動作は、素人の私から見ても完璧だったから、素直に驚いただけ」

「ひでー言われようだな…。まぁ、どう思われようが気にしないけどな」

まさかこんな口の悪いヴァルナが執事なんて、人に傅く仕事が出来るなんて誰も思わないだろう。
逆に主人をアゴで使っていそうな……そんなイメージしかない。

(ああ、だから…返品とかされたのかな?)

我ながら酷い考えが思い浮かんで、苦笑いを浮かべる。
でも――私は、彼らを捨てたりなんてしない。

こう言うと嘘くさく感じるけど、やっぱり運命だと思うのだ。
奴隷を買いに出かけて、目に入った店に入ったら男の奴隷しかいなくて…動揺していた私に、最初に話しかけてきた3人の美丈夫。
流されるがままに3人と契約してしまったが、今さら後悔はないとは言い難いが…きっと大丈夫。
何だかんだこの3人と上手くやっていけそうな気がする。



「――さて、ティータイムを楽しみながら、この世界の説明をさせて頂きますね」

リヒートが私にティーを飲むように促しながら、ゆっくりと口を開く。

「よ、よろしくお願いします…!!」

カップを両手で持って、カラカラになっていた喉に流し込む。
丁度良い温度の甘さ控えめの紅茶が喉を潤していく感覚に、知らず知らずのうちに張っていた気が緩む気がした。

「この世界には、神が存在します。ですが、誰もその姿を見たことはありません。神によって我々は、生み出されております。まず、この世界にはアズサのような人間、そして私のような天使、ヴァルナのような堕天使、ファリエスのような吸血鬼がいます。他には、獣人、妖精、エルフ。そして――魔族と言った種族があります」

「やっぱこの世界ってエルフとかいるんだ…!!私最初は、エルフの可愛い女の子奴隷がほしくて買いに行ったんだよねー。まさか、リヒートたちを買うことになるとは思わなかったけど…」

「僕たち…迷惑だった?」

興奮気味な私の言葉に、きゅるるんっと潤んだ瞳でファリエスが小首を傾げて上目遣いで見上げてくる。
その計算しつくされた仕草であっても、可愛すぎて思わず言葉詰まってしまう。

「そそそ、そんなことないよ!今ではファリエス達を買って世界だったと思ってるから、ね!」

「えへへへーそうだよね!」

まるで私の返答を知っていたかのような反応に、驚きを通り越して呆れてしまう。
もう何も言うまいと、視線でリヒートに続きを促す。
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