リング上のエンターテイナー

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20話

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Fグループの第一試合の対戦カードは私と石井百合だった。

交流試合ではグループ内の人同士でセコンドにつく。だから前の試合が終わるまでの間、話したりすることもできる。お互いの部活や練習の話、全く関係なくアイドルグループの話をする人もいる。まだまだ女子プロレス部のある学校は多くないから、こうやって他校の人と交流する機会があるのは楽しい。

でも今はそんな和やかな雰囲気ではない。私の隣にいるのは高山美優だ。そして彼女は全然喋らない。

前の試合も5分以上かかるだろうし、ずっと無言なのも居心地悪いな。でも話しかけにくいオーラ出てるし、うーんどうしよう。あかねならこんな時でもお構いなしに話しかけるんだろうけど。

「高山さんって、中学からプロレスやってるの?」

せっかく話せる機会なのに黙っていることがもったいなく感じて話を振ってしまった。絶対中学からやってるに決まってるのに、我ながら雑な質問だ。

「ええ。小学生の時にテレビでプロレスを観て、やってみたいと思いまして」
「えっ、そうなの!?私も!誰の試合観たの?」
「お名前は覚えていないのですが、海外の方の試合だったと思います」
「へー。海外レスラーかっこいいもんね」

海外プロレスから入ったのか。プロレスと言えばやっぱりアメリカというイメージがある。日本の女子プロレスラーも海外挑戦といえば、アメリカの団体に移籍するケースが多い。

「将来はアメリカとか、海外でも試合したい?」
「いつかは行きたいと思っています。しかしまだまだ国内でやるべきことがありますから」

やるべきこと?と思ったけどそれが何かは聞けなかった。

「終わりましたね。前田さん、健闘を祈ります」
「あ、うん、ありがとう」

前の試合がちょうど終わったところだった。高山美優に堅苦しく送り出され、私はリングに上がった。

やるべきことって何だろう。
全国優勝のことかもしれない。だとしたら聞かなくてよかった。高校に入って既に結果を出している高山さんに先に口にされたくない。置いていかれそうな気がするから。都大会も突破してない私が南関東ベスト4の人に言えることじゃないけど。

この話の続きはまた今度しよう。何より今から私の試合が始まる。都大会以降の練習の成果を存分にぶつけてやるんだ。
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