瑠璃の誘惑。メロンパンの誘惑。

本宮 秋

文字の大きさ
3 / 19
第1章 幻の石

第3話

しおりを挟む
 小さく三つに割れた黒曜石。

いきなり一つ目の石で『瑠璃黒曜』が出る訳が無いと思っていたが、気持ちは昂ぶっていた。
三つに割れた石の欠けら。その中で一番大きな欠けらを手にし、じっくり見てみる。

…… 真っ黒。

黒いガラスの様な石には、何一つ他の色が入って無かった。
残りの二つの欠けらも……

勿論、真っ黒。

「そりゃそうだろ。幻の石なんだから…… 」

そう自分を慰め、昂ぶっていた気持ちを押さえた。
「よし! 次、次」
また下を向きながら黒曜石を探す。
昔の微かな記憶では、もっと簡単に黒曜石は取れた様な気がしたが意外に黒曜石自体が中々見つからない。

やはり黒曜石自体が少なくなったから『瑠璃黒曜』も取れなくなったのだろうか…… 

気が付けば二時間程過ぎていた。

広い範囲を探している訳では無く、初めに見つけた黒曜石の周りを中心に隈なく探していた。

結果的にあの後、取れた黒曜石は三つ。

どれも小さく指先程度の大きさ。
どれもが既に欠けていて、普通の黒い黒曜石だった。
意気揚々と石探しを始めたが、どっと疲れが出た。
神社の階段の登り降りが影響したらしく足腰がぐらつく位、疲れが出た。

石がゴロゴロとしている川辺。
転んだだけでもケガをする所ゆえ、今日は石探しを打ち切る事にした。

「瑠璃黒曜なんて、無理か~~? 黒曜石すら満足な大きさの物もみつけられないのに…… 」

初日にして心が折れそうになる位、石探しの難しさにぶちあたった。
既にガクガクの足で、何とか橋まで戻る。橋の上から見える神社。

「あの神社に登って、決意したんだな」

「まだまだ、一日目。明日、明日! 」
神社を見たせいで気持ちを切り替える事が出来た。まだ日は明るかったが帰る事に。
帰り道、何も無い道路沿いにポツンと一軒、家があった。農家でも無さそう。
集落から離れた所の一軒家で、家の側には沢山の薪が積んであった。
何をやってる人が住んでるのだろうと不思議に思い…… スクーターを止め、家の敷地を覗いて見る。
人が住んで居ない位、静かな雰囲気。

スクーターを走らせようとした時、ふとある物が目に入った。
家の玄関横に無造作に置かれた石。
目を凝らして見ると…… 黒曜石の様に見える。

まさか……

スクーターを道路脇に止め、勝手に家の敷地内に足を踏み入れた。

「こんにちわ~~ 」

か細い声で言いながら、恐る恐る家の玄関の近くまで足を進めた。

やっぱり黒曜石だ。

大きな物から欠けた物まで沢山の黒曜石が玄関横に置かれてと言うよりかは、投げ捨てられてる様にあった。

石の近くに、しゃがみこみ黒曜石を手に取り見てみた。
自分が今日、見つけた黒曜石とは比べ物にならない程、大きな物や白や赤茶色の模様が入った物があった。
 『瑠璃黒曜』では無いものの、ただの真っ黒な黒曜石では無い石を見て感動してしまった。

「もしかして『瑠璃黒曜』が、あるのでは? 」
と思い、沢山の黒曜石を漁り始めた。

「な~~に、やってんだ~~? 」

男の声が後ろから……

ビクっとした自分。
慌てて振り向き
「あっ! すいません。誰も居ないかと」

「何だ、なんか用か? 」

「あ、いえ。黒曜石が目に入って……つい」

「石好きか? 幾らでも持っていっていいぞ! 邪魔だからな」

「あの~~ 黒曜石集めているんですか?
もしかして…… 『瑠璃黒曜』探しているとか? 」

「ははは。『瑠璃黒曜』だと。そんなもんもう無いわ! 」
豪快に笑い飛ばしながら『瑠璃黒曜』を口にした自分を否定した。

「やっぱりないんですかね? 」

「昔、昔の事だ。何だ兄ちゃん『瑠璃』探しに来たんか? 」

「あ、は…… はい」
小さく、とても小さな声で応えた。

「無駄な事は、やめとけ~~  時間の無駄だ~~  どっから来たんだ? 」

「最近、あの集落に来たんですけど。昔、祖父が住んでて…… 」

「祖父⁈ 爺さんか? なんて言う爺さんだ? 名前」

「えーーと、野上《ノガミ》です。
タケ爺…… じゃなくてタケ……シだったかな? 」

「野上⁈   ……じゃ兄ちゃんは、タケ爺の孫か? 」

「は、はい。あの爺ちゃんの事、知って…… 」

「ははは、良く知ってるさぁ~~  ふふっ流石、血筋だな。タケ爺の孫も石好きだとは!『瑠璃』探しも爺さまの影響か? 」

「え? 爺ちゃんも『瑠璃黒曜』探していたんですか? 」

「知らんかったんか? タケ爺が此処で初めて『瑠璃』を見つけたそうだ。俺もまだ小さかった時だからよく知らんけど、よくタケ爺から聞かされていたんだ~~
そっかタケ爺の孫か! じゃヨシさんの所に居るのか? 」

「あ、はい。ヨシばあも知っているんですか? 」

「こんな田舎じゃ知らない人なんて居ないわ! みんな知り合いみたいなもんだ~~ 」

「あの…… 本当に『瑠璃黒曜』は無いのですか? 」

「……あったら、とっくに俺が見つけて売っ払ってるさぁ~~ 」

その言葉に、落胆する自分。
肩の力が抜け、思わず俯いてしまった。

「兄ちゃん。でもな! タケ爺もコツコツ諦めずに探し続けて『瑠璃』見つけたんだと。まぁ埋蔵金探しみたいに夢追うのも良いかもな! 浪漫ってやつか? はは」

祖父(タケ爺)の事を良く知る人に会い嬉しかったが…… それ以上にショックが大きかった。

やはり……

『瑠璃黒曜』は、もはや存在しない本当に幻の石となってしまったのだろうか……


第3話   終
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

処理中です...