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《┈第二部┈》第四章
《千枝子》
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ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ
無数に、足音が響き渡る。軽いものから、重たいものまで。これだけ切り取れば、路地のようだ。
ここはどこであろうか。目を開いていても、とじていても、光景は変わらない。
わたしは路地で目をつぶっているのだろうか。
しかし、身体の感覚で、わたしは目を開けているのがわかる。
ただ、路地の喧騒と違うのは、暗闇と、人々のざわめきが聞こえないことだ。
足音が響けば、普通静かとは感じないはずだ。
尋常であれば喧騒を感じるだろう。
それでも、ここは静じゃくに支配されている。全く音が聞こえない────それが静寂であるはずだ。
だが、あまりの静けさにキーンと耳鳴りがするように感じ、気分が悪くなった。
足音が静寂を際立たせているのではない。耳が痛くなるような静寂と、不気味に響く足音が、両者主張しているのだ。
墨の中に落ちたような、重たい闇の中、わたしはただ一人。
孤独だという実感が波のように押し寄せ、やがてわたしを飲み込んで行った。気づけば涙が溢れ出し、その涙も闇に溶けていく。絶望が心を満たしてゆき、感情が闇に染る。
もう、希望など抱けない。
希望に満ちてこの街にやって来たのが嘘のようだ。希望が絶望に染まり、今や絶望一色が、心を覆っていた。
歩けば、逃げられるかもしれない。何とかそう思い、わたしは歩き出した。
無理やりに希望を見つけたが、内心ではそう思えなかった。
ヒタ、ヒタ、ヒタ
わたしの足音が、無数の足音に混ざり、溶け込んでゆく。ここは足場が悪い。ゴツゴツと、靴底にあたり、鈍い痛みが足裏を指す。木の根が貼っているのだろうか。
突然、絶望が押し寄せ、しばらくして我を取り戻す。
それが、地面の凹凸のように、繰り返された。
恐ろしい────。忘れていた感情が溢れ出す。
恐怖心に胸が締め付けられ、キリキリと痛む。
わたしは動くともう出られなくなるような気がして、その場に蹲る。
絶望と恐怖、そして孤独感、そんな負の感情しか抱けず、わたしは逃げ出したい衝動に駆られた。
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ
わたしは、耳をすませる。足音に混ざり、他の音が聞こえる気がする。
カチッ、カチッと何かを打つ音。時計かもしれない。
それは、ここが室内だということだ。それでは、ゴツゴツとした地面は何だろうか。
ここに居ては、一生帰れないのかもしれない。しかし、歩いては、遠ざかるかもしれない。
どうすれば良いのだろうか。なぜ、わたしはこんな絶望的な状況に置かれなくてはならないのだろうか。
わたしは恐怖に打ちひしがれながらも、出口を探そうと、歩き出した。
ひた、ひた、ひた
地面の突起に、幾度も転びそうになりながら、わたしは出口を探した。
どれくらい歩いただろうか。
いくら歩を進めても、光が見えない。希望が見えない。
恐怖と絶望に染まり、もう、帰れないだろうと、落胆する。
もう、希望に満ちていた頃には戻れない。
無数に、足音が響き渡る。軽いものから、重たいものまで。これだけ切り取れば、路地のようだ。
ここはどこであろうか。目を開いていても、とじていても、光景は変わらない。
わたしは路地で目をつぶっているのだろうか。
しかし、身体の感覚で、わたしは目を開けているのがわかる。
ただ、路地の喧騒と違うのは、暗闇と、人々のざわめきが聞こえないことだ。
足音が響けば、普通静かとは感じないはずだ。
尋常であれば喧騒を感じるだろう。
それでも、ここは静じゃくに支配されている。全く音が聞こえない────それが静寂であるはずだ。
だが、あまりの静けさにキーンと耳鳴りがするように感じ、気分が悪くなった。
足音が静寂を際立たせているのではない。耳が痛くなるような静寂と、不気味に響く足音が、両者主張しているのだ。
墨の中に落ちたような、重たい闇の中、わたしはただ一人。
孤独だという実感が波のように押し寄せ、やがてわたしを飲み込んで行った。気づけば涙が溢れ出し、その涙も闇に溶けていく。絶望が心を満たしてゆき、感情が闇に染る。
もう、希望など抱けない。
希望に満ちてこの街にやって来たのが嘘のようだ。希望が絶望に染まり、今や絶望一色が、心を覆っていた。
歩けば、逃げられるかもしれない。何とかそう思い、わたしは歩き出した。
無理やりに希望を見つけたが、内心ではそう思えなかった。
ヒタ、ヒタ、ヒタ
わたしの足音が、無数の足音に混ざり、溶け込んでゆく。ここは足場が悪い。ゴツゴツと、靴底にあたり、鈍い痛みが足裏を指す。木の根が貼っているのだろうか。
突然、絶望が押し寄せ、しばらくして我を取り戻す。
それが、地面の凹凸のように、繰り返された。
恐ろしい────。忘れていた感情が溢れ出す。
恐怖心に胸が締め付けられ、キリキリと痛む。
わたしは動くともう出られなくなるような気がして、その場に蹲る。
絶望と恐怖、そして孤独感、そんな負の感情しか抱けず、わたしは逃げ出したい衝動に駆られた。
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ
わたしは、耳をすませる。足音に混ざり、他の音が聞こえる気がする。
カチッ、カチッと何かを打つ音。時計かもしれない。
それは、ここが室内だということだ。それでは、ゴツゴツとした地面は何だろうか。
ここに居ては、一生帰れないのかもしれない。しかし、歩いては、遠ざかるかもしれない。
どうすれば良いのだろうか。なぜ、わたしはこんな絶望的な状況に置かれなくてはならないのだろうか。
わたしは恐怖に打ちひしがれながらも、出口を探そうと、歩き出した。
ひた、ひた、ひた
地面の突起に、幾度も転びそうになりながら、わたしは出口を探した。
どれくらい歩いただろうか。
いくら歩を進めても、光が見えない。希望が見えない。
恐怖と絶望に染まり、もう、帰れないだろうと、落胆する。
もう、希望に満ちていた頃には戻れない。
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