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《┈第四部┈》プロローグ
《鶫実》
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葉月の体を回復できないほどに衰弱させる。
彼女に体を返し、わたしは次の人に憑依する。だが、わたしが体を返しても、彼女が回復しないようにしなければならない。
しかし、わたしはその作戦に憂慮を抱いた。どんなに効率よく衰弱させても、一年はかかるだろう。
もちろん、死ぬまで体に留まるつもりは無い。
わたしがこの身体に留まっていても、効率が悪くなるだけなのだ。
霧島家は美湖一家の死により完全に途絶えた。それでもやはりわたしの復讐心は収まらない。
わたしが葉月として会社にいるのを、生かす事にした。
葉月の体が持つ間、地道にこの街の人々を絶望へと追い込むのである。
街から逃げようとすれば、必ずいのちをおとすのだ。
この街にいることの恐怖を、人々に勧告し、町から逃げるのを推進する。
逃げたもの数だけ確実に人口はへり、破滅へと落とせる。
そして死者は暗闇へ行く。
彼らは、逃げることも、抗うこともできず、ただ、絶望の中で生きるしかない。
これで完璧だ。わたしは実行しようと、意気揚々と会社へ向かった。
スライドドアを開けると、異様な光景が目に飛びこむ。
社員が皆、掲示板の前に集まっている。誰かが死んだのだと瞬時に解り、笑みが毀れる。
しかしすぐにわたしの意図を隠そうと、笑みを消した。
誰かが死んだところで、みななれて誰も何も感じない────誰も何も、しない。
だが、今日は違った。異様なざわめきが、オフィス全体を覆っていた。
ヒソヒソと数人で話す女性社員。収めようとするが自分も戸惑う部長────。全員がいつもと違っていた。
わたしは、その異様な雰囲気に疑問を覚えながら、近くにいた社員に声をかけ、何事かと尋ねた。
社員は、顔を蒼白にしながら、震える声で答える。
社長がこの世を去ったという。
何も思わないどころか、わたしは復讐が進み喜びすら感じた。
社長の死────。それは、この街で頻繁に起こる、不条理な死の連鎖の一つだ。しかし、今回は、いつもとは違っていた。
社長の死は、社員たちに、深い衝撃を与える。
社長がいなければ、会社は倒産するかもしれない。それについては、わたしも復讐が滞ることを危惧した。
会社がなくては、みなの生活は困窮する。貯金の少ない若手社員も多いはずだ。
社員たちの顔には、恐怖と不安が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいた。
その事はどうでも良いが、ただただ今後の復讐への不安は隠せなかった。
オフィスには、重苦しい沈黙が漂っていた。
わたしはその混乱を利用し、社長の死はこの街の呪いだと言って回った。人々は愚かだ。わたしの言葉を直ぐに信用し、次の日掲示板を見れば、彼らの訃報で社長の訃報が埋もれつつあった。わたしはこの事態に感謝し、人々を逃亡に向かわせてゆく。
社長の事は、一瞬だけこの会社に波紋を広げた。
だが、その波紋はすぐに静まり、わたしのうんだ犠牲を残して何事もなかったかのように、日常が戻ってきた。
空いた社長の座は、副社長が埋めることが、あっという間に決まった。それは、予め決められていたかのような、スムーズな移行だった。
訃報の次の日までは、多くの人が集まっていた掲示板の前も、一週間がたった今では、誰ひとりとはさていない。
そこには、新しい社長の名前が書かれた紙が、訃報に囲まれながら貼られているのであった。
人々は、新社長が決まると、不安も消え、完全に日常を取り戻した。
空席だらけのオフィスに、キーボードの音が響く。
この会社に────、そしてこの街に、死の影が迫っていることをわたしは嘲笑する。
彼女に体を返し、わたしは次の人に憑依する。だが、わたしが体を返しても、彼女が回復しないようにしなければならない。
しかし、わたしはその作戦に憂慮を抱いた。どんなに効率よく衰弱させても、一年はかかるだろう。
もちろん、死ぬまで体に留まるつもりは無い。
わたしがこの身体に留まっていても、効率が悪くなるだけなのだ。
霧島家は美湖一家の死により完全に途絶えた。それでもやはりわたしの復讐心は収まらない。
わたしが葉月として会社にいるのを、生かす事にした。
葉月の体が持つ間、地道にこの街の人々を絶望へと追い込むのである。
街から逃げようとすれば、必ずいのちをおとすのだ。
この街にいることの恐怖を、人々に勧告し、町から逃げるのを推進する。
逃げたもの数だけ確実に人口はへり、破滅へと落とせる。
そして死者は暗闇へ行く。
彼らは、逃げることも、抗うこともできず、ただ、絶望の中で生きるしかない。
これで完璧だ。わたしは実行しようと、意気揚々と会社へ向かった。
スライドドアを開けると、異様な光景が目に飛びこむ。
社員が皆、掲示板の前に集まっている。誰かが死んだのだと瞬時に解り、笑みが毀れる。
しかしすぐにわたしの意図を隠そうと、笑みを消した。
誰かが死んだところで、みななれて誰も何も感じない────誰も何も、しない。
だが、今日は違った。異様なざわめきが、オフィス全体を覆っていた。
ヒソヒソと数人で話す女性社員。収めようとするが自分も戸惑う部長────。全員がいつもと違っていた。
わたしは、その異様な雰囲気に疑問を覚えながら、近くにいた社員に声をかけ、何事かと尋ねた。
社員は、顔を蒼白にしながら、震える声で答える。
社長がこの世を去ったという。
何も思わないどころか、わたしは復讐が進み喜びすら感じた。
社長の死────。それは、この街で頻繁に起こる、不条理な死の連鎖の一つだ。しかし、今回は、いつもとは違っていた。
社長の死は、社員たちに、深い衝撃を与える。
社長がいなければ、会社は倒産するかもしれない。それについては、わたしも復讐が滞ることを危惧した。
会社がなくては、みなの生活は困窮する。貯金の少ない若手社員も多いはずだ。
社員たちの顔には、恐怖と不安が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいた。
その事はどうでも良いが、ただただ今後の復讐への不安は隠せなかった。
オフィスには、重苦しい沈黙が漂っていた。
わたしはその混乱を利用し、社長の死はこの街の呪いだと言って回った。人々は愚かだ。わたしの言葉を直ぐに信用し、次の日掲示板を見れば、彼らの訃報で社長の訃報が埋もれつつあった。わたしはこの事態に感謝し、人々を逃亡に向かわせてゆく。
社長の事は、一瞬だけこの会社に波紋を広げた。
だが、その波紋はすぐに静まり、わたしのうんだ犠牲を残して何事もなかったかのように、日常が戻ってきた。
空いた社長の座は、副社長が埋めることが、あっという間に決まった。それは、予め決められていたかのような、スムーズな移行だった。
訃報の次の日までは、多くの人が集まっていた掲示板の前も、一週間がたった今では、誰ひとりとはさていない。
そこには、新しい社長の名前が書かれた紙が、訃報に囲まれながら貼られているのであった。
人々は、新社長が決まると、不安も消え、完全に日常を取り戻した。
空席だらけのオフィスに、キーボードの音が響く。
この会社に────、そしてこの街に、死の影が迫っていることをわたしは嘲笑する。
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