浦町ニュータウン～血塗られた怪異～

《┈第四部┈》第一章

《鶫実》

佐藤商事は、人事不足から、三月に浦町ニュータウン支店を撤退すると発表した。
今は、十月────残りはあと五ヶ月だ。
中心事業が撤退する。それは、街の終わりを意味するのだろう。その言葉だけ聞けば、わたしの心は喜びにみちるだろう。だが、復讐を済ませてから、街を亡びさせなくてはならない。
わたしに残された時間は、五ヶ月しかない。その短い間に、復讐を終えなければならない。
焦燥が、わたしの心を焦がす。それは、燃え盛る炎のように、わたしの思考を支配する。急ごうと思えば急ぐほど、から周りをしてしまい、それを聞いてからの成果は、半減していた。
わたしは、復讐の計画を練り直す。より効率的に、より確実に、彼らを絶望の淵へと突き落とすために────。
時間は、刻一刻と過ぎていく。それは、わたしの命を削り取るように、残酷に、そして無慈悲に。
時間の流れが、十倍以上に早く感じられた。
わたしは、焦る。しかし、焦りだけでは、何も成し遂げられない。

わたしは、冷静になろうと藻掻いた。冷静になりきれず、成果も出せず、一ヶ月が過ぎていった。
時間が過ぎるのを我慢できず、焦りに支配されたまま綿密な計画を立てようとする。
五ヶ月────。わたしにとって、あまりにも短い時間だ。しかし、わたしは、その短い時間の中で、必ず復讐を成し遂げる。
それは、わたしにとって、唯一無二の生きる意味だ。そして、わたしを、絶望から解放できる、唯一の希望────。
覚えたてのパソコンで、仕事の資料ではなく、復讐の手順を書き記してゆく。
─────外では、街路樹が紅葉していた。赤や黄色に染まった葉が、夕日に照らされて、炎のように輝いていた。
この街の終わりを嘲笑うかのような、鮮やかな道が、長く、遠くへと伸びてゆく。
しかし、その美しさも、街にとっては、ただの虚飾に過ぎなかった。
この街に蔓延る死の影は、紅葉の美しささえも、黒く染め上げていく。
わたしは、窓から、その光景を眺めていた。
赤や黄色に染まった葉が、風に吹かれて、ひらひらと舞い落ちる。
まるで、この街に住む人々の、儚い命のようである。
わたしは微笑む。だがそれは、紅葉の美しさに対する笑みではない。酷く歪み、絶望を移していた─────。
十一月になっていた。一日がすぎる度、焦りがわたしを追い込む。決してひとりも絶望から逃がさない。絶望を全員に味合わせる。
決意を固めながら、わたしは必死でパソコンに、文字を打ち込む。