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第3話 はじめての魔王城生活!
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「すみません、これ……どこから手をつけたらいいと思います?」
私は途方に暮れていた。
目の前にあるのは、広すぎる厨房。そして積み上がる謎の食材たち。
異世界の魔王城の厨房――それは私の想像を遥かに超える、混沌の空間だった。
「左側が野菜庫、右が肉庫、奥は……保存魔法で封印されている長期保管用の倉庫です」
レオナルトさんが丁寧に説明してくれるのだけど、正直言ってどこからどう見てもカオスだ。
まず野菜がデカい。キャベツ一玉がスイカサイズってどういうこと?
そして肉が赤黒い。まるでモンスターの切り身みたい。ていうか、たぶん実際そう。
「これ、私、調理しなきゃダメですか?」
「はい。陛下の命により『聖女としての資質を示すため、自ら考えて行動せよ』とのことです」
「ずいぶん雑な指示だな……」
でもまあ、確かに試されてるんだと思う。聖女として、人として。
私にできることって、いきなり回復魔法とか言われても無理だし――でも、料理なら、まだワンチャンある。
「よし、やってやろうじゃないの」
◇
その日の午後、私は厨房の片隅で、戦っていた。
いや、物理的な意味で。
「だからなんでこの鶏っぽいやつ、羽まで生きてるのー!?」
異世界チキン、まさかの自衛機能搭載。包丁を振るたびに反撃してくる。涙出そう。
それでもなんとかさばき終えて、私はようやくひと息ついた。
久しぶりに包丁を握ったせいで、手が少し震えてる。けど、頭の中は妙に冴えていた。
この世界の食材の扱い方。加熱の方法。味付けの調整。全然わからないことばかりだけど、それでも――。
「誰かのために作るって、やっぱり好きかもしれないな……」
働き始めてからは料理なんてほとんどできなかった。忙しくて、コンビニ弁当かカップ麺ばかり。
でも、学生時代は好きだった。誰かに食べてもらって「美味しい」って笑ってもらえるのが、すごく嬉しかった。
この世界で、それをもう一度できるかもしれないなら――やってみたい。
◇
そして夕方、私はいよいよ彼らと対面することになった。
「聖女さまだ……!」
「ほんとに来たんだ……!」
集まったのは、十歳前後の魔族の子どもたち。角や翼がついている子もいれば、肌の色が淡い青だったり、目が金色に輝いていたりと、みんな見た目がバラバラだ。
でも、ひとつだけ共通しているのは――みんな、どこか怯えていた。
その理由は、レオナルトさんが説明してくれた。
「彼らは、戦争で親を失い、魔王陛下に保護された子どもたちです」
そうか。この世界、今は和平交渉中だけど、つい最近まで戦争してたんだよね。
「わたしが作った料理……よかったら、この子たちに食べてもらいたくて」
「……それは、きっと喜びます」
最初の空気はちょっとピリついていた。
子どもたちは私のことを聖女と呼びながらも、どこか疑っている。拒絶とまではいかないけど、壁がある感じ。
私はゆっくり腰を落とし、子どもたちの目線に合わせた。
「こんにちは。私の名前は神楽いちかっていいます。今日はね、みんなに食べてほしいごはんを作ってきました」
そう言って、私は持参した大きな籠を開けた。
中にあるのは、手製のシチューと、焼きたてのパン。形はちょっと不格好かもしれない。でも味には自信があった。
「この世界の食材で作ったから、初めての味かもしれないけど……良かったら、食べてみて?」
少しの沈黙の後――一人の男の子が、おそるおそるパンを手に取った。
ぱくっ。
もぐもぐ。
「……おいしい」
ぽつりと漏れたその声に、他の子どもたちがわらわらと集まり始める。
「ぼくも!」
「それなに? ちょうだい!」
気がつけば、そこには笑い声が広がっていた。
私はただ、黙ってそれを見ていた。心が、じんわりと温かくなっていくのを感じながら。
◇
その夜。
「ふむ。子どもたちが笑っていたと?」
魔王ルシフェルは、いつも通り無表情で言った。
「うん。あの子たち、みんな最初は警戒してたけど、ちゃんと食べてくれて……すごく、嬉しかった」
「……そうか」
彼の声が、少しだけ柔らかくなった気がしたのは、気のせいじゃないと思う。
「で? これで滞在、認めてくれますか?」
「……ああ。どうやら、ここに居させる理由ができたようだな」
「ありがとう。……ちょっとだけ、ほっとした」
「礼は要らん」
でも、彼の目は私をじっと見ていた。まるで、値踏みするように。だけど――ほんの少しだけ、その奥にある感情が読み取れた気がした。
興味。警戒。少しの驚き。
「俺はお前を妻として迎えるつもりはない。それは変わらん」
「うん、知ってる」
「だが――お前が、この城に必要な存在であるならば、話は別だ」
その言葉に、ちょっとだけ、胸があつくなった。
私は、ここに居てもいいんだ。
ここから、私の魔王城生活が始まる。
私は途方に暮れていた。
目の前にあるのは、広すぎる厨房。そして積み上がる謎の食材たち。
異世界の魔王城の厨房――それは私の想像を遥かに超える、混沌の空間だった。
「左側が野菜庫、右が肉庫、奥は……保存魔法で封印されている長期保管用の倉庫です」
レオナルトさんが丁寧に説明してくれるのだけど、正直言ってどこからどう見てもカオスだ。
まず野菜がデカい。キャベツ一玉がスイカサイズってどういうこと?
そして肉が赤黒い。まるでモンスターの切り身みたい。ていうか、たぶん実際そう。
「これ、私、調理しなきゃダメですか?」
「はい。陛下の命により『聖女としての資質を示すため、自ら考えて行動せよ』とのことです」
「ずいぶん雑な指示だな……」
でもまあ、確かに試されてるんだと思う。聖女として、人として。
私にできることって、いきなり回復魔法とか言われても無理だし――でも、料理なら、まだワンチャンある。
「よし、やってやろうじゃないの」
◇
その日の午後、私は厨房の片隅で、戦っていた。
いや、物理的な意味で。
「だからなんでこの鶏っぽいやつ、羽まで生きてるのー!?」
異世界チキン、まさかの自衛機能搭載。包丁を振るたびに反撃してくる。涙出そう。
それでもなんとかさばき終えて、私はようやくひと息ついた。
久しぶりに包丁を握ったせいで、手が少し震えてる。けど、頭の中は妙に冴えていた。
この世界の食材の扱い方。加熱の方法。味付けの調整。全然わからないことばかりだけど、それでも――。
「誰かのために作るって、やっぱり好きかもしれないな……」
働き始めてからは料理なんてほとんどできなかった。忙しくて、コンビニ弁当かカップ麺ばかり。
でも、学生時代は好きだった。誰かに食べてもらって「美味しい」って笑ってもらえるのが、すごく嬉しかった。
この世界で、それをもう一度できるかもしれないなら――やってみたい。
◇
そして夕方、私はいよいよ彼らと対面することになった。
「聖女さまだ……!」
「ほんとに来たんだ……!」
集まったのは、十歳前後の魔族の子どもたち。角や翼がついている子もいれば、肌の色が淡い青だったり、目が金色に輝いていたりと、みんな見た目がバラバラだ。
でも、ひとつだけ共通しているのは――みんな、どこか怯えていた。
その理由は、レオナルトさんが説明してくれた。
「彼らは、戦争で親を失い、魔王陛下に保護された子どもたちです」
そうか。この世界、今は和平交渉中だけど、つい最近まで戦争してたんだよね。
「わたしが作った料理……よかったら、この子たちに食べてもらいたくて」
「……それは、きっと喜びます」
最初の空気はちょっとピリついていた。
子どもたちは私のことを聖女と呼びながらも、どこか疑っている。拒絶とまではいかないけど、壁がある感じ。
私はゆっくり腰を落とし、子どもたちの目線に合わせた。
「こんにちは。私の名前は神楽いちかっていいます。今日はね、みんなに食べてほしいごはんを作ってきました」
そう言って、私は持参した大きな籠を開けた。
中にあるのは、手製のシチューと、焼きたてのパン。形はちょっと不格好かもしれない。でも味には自信があった。
「この世界の食材で作ったから、初めての味かもしれないけど……良かったら、食べてみて?」
少しの沈黙の後――一人の男の子が、おそるおそるパンを手に取った。
ぱくっ。
もぐもぐ。
「……おいしい」
ぽつりと漏れたその声に、他の子どもたちがわらわらと集まり始める。
「ぼくも!」
「それなに? ちょうだい!」
気がつけば、そこには笑い声が広がっていた。
私はただ、黙ってそれを見ていた。心が、じんわりと温かくなっていくのを感じながら。
◇
その夜。
「ふむ。子どもたちが笑っていたと?」
魔王ルシフェルは、いつも通り無表情で言った。
「うん。あの子たち、みんな最初は警戒してたけど、ちゃんと食べてくれて……すごく、嬉しかった」
「……そうか」
彼の声が、少しだけ柔らかくなった気がしたのは、気のせいじゃないと思う。
「で? これで滞在、認めてくれますか?」
「……ああ。どうやら、ここに居させる理由ができたようだな」
「ありがとう。……ちょっとだけ、ほっとした」
「礼は要らん」
でも、彼の目は私をじっと見ていた。まるで、値踏みするように。だけど――ほんの少しだけ、その奥にある感情が読み取れた気がした。
興味。警戒。少しの驚き。
「俺はお前を妻として迎えるつもりはない。それは変わらん」
「うん、知ってる」
「だが――お前が、この城に必要な存在であるならば、話は別だ」
その言葉に、ちょっとだけ、胸があつくなった。
私は、ここに居てもいいんだ。
ここから、私の魔王城生活が始まる。
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