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第三話 最後に笑うのは誰?
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「これが……クラリス嬢の、私室?」
使用人のひとりが、目を丸くして呟いた。
そこには派手な装飾も、宝石を散りばめた家具もない。
けれど、調和の取れた空間には確かな品と整然さがあった。
「お迎えの馬車、手配いたしました」
「ありがとうございます。あと三十分ほどで参ります」
クラリスは落ち着いた口調で応じ、ふと机の引き出しに手をかけた。
鍵のかかった小箱。その中から、一冊のノートを取り出す。
──名付けて「ざまぁリスト」。
黒革のカバーに金の細い留め具。小さな鍵穴があるだけで、飾り気は一切ない。
けれどこのノートには、クラリスが長年記録し続けてきた「観察と皮肉」が、びっしり詰まっていた。
(人は他人を値踏みするけれど、自分が見られているとは思っていないのよね)
ページをめくると、整った文字が並んでいる。
【対象】伯爵令嬢ルディナ
【行為】授業中に「地味ね」と三回囁きながら袖を引っ張る
【結果】自作の恋文が教師に見つかり、校内掲示板にて公開処分
【現状】ざまぁ確認済✔
【一言】袖を引くより、自分の人生を引き締めた方がよろしいかと
クラリスは、喉の奥で小さく笑った。
声には出さない。ただ、目が少しだけ愉快そうに細められる。
それは復讐ではない。
自分の「目」で見たことを淡々と記すだけ。
そんな記録の中、ひときわ大きく囲まれた名前がある。
【対象】レオンハルト=セレフィア殿下
【行為】公開の場にて婚約破棄。「地味」「王妃に不適」と断言
【結果】新婚約者の振る舞い、貴族社会で早速不評。国王陛下の眉も動く
【現状】ざまぁ発動進行中
【一言】王冠より重いのは、民の視線ですのよ
くすり、と笑いが漏れた。
その瞬間、扉がノックされた。
「クラリス嬢、失礼いたします。……第二王子殿下が、お見えです」
一瞬、ペンが止まる。
クラリスはノートをすっと閉じ、留め具を音も立てずに留めると、いつもの穏やかな顔に戻った。
「お通しして。お茶の支度もお願いいたします」
彼女は椅子から立ち上がり、ゆっくりと身なりを整えた。
静かに呼吸を整えながら、心の中でノートの最後のページを思い出す。
そこにはまだ、白紙の行がいくつも残っている。
その余白を埋めるのは、今この瞬間から始まる「新しい物語」。
──私を笑った人たちへ。
最後に笑うのは、最後まで立っていた者ですわよ?
クラリスは扉に向かって歩き出した。
そして、その先に待つ「第二王子」と「隣国」へと、運命のページが静かに開かれていくのだった。
使用人のひとりが、目を丸くして呟いた。
そこには派手な装飾も、宝石を散りばめた家具もない。
けれど、調和の取れた空間には確かな品と整然さがあった。
「お迎えの馬車、手配いたしました」
「ありがとうございます。あと三十分ほどで参ります」
クラリスは落ち着いた口調で応じ、ふと机の引き出しに手をかけた。
鍵のかかった小箱。その中から、一冊のノートを取り出す。
──名付けて「ざまぁリスト」。
黒革のカバーに金の細い留め具。小さな鍵穴があるだけで、飾り気は一切ない。
けれどこのノートには、クラリスが長年記録し続けてきた「観察と皮肉」が、びっしり詰まっていた。
(人は他人を値踏みするけれど、自分が見られているとは思っていないのよね)
ページをめくると、整った文字が並んでいる。
【対象】伯爵令嬢ルディナ
【行為】授業中に「地味ね」と三回囁きながら袖を引っ張る
【結果】自作の恋文が教師に見つかり、校内掲示板にて公開処分
【現状】ざまぁ確認済✔
【一言】袖を引くより、自分の人生を引き締めた方がよろしいかと
クラリスは、喉の奥で小さく笑った。
声には出さない。ただ、目が少しだけ愉快そうに細められる。
それは復讐ではない。
自分の「目」で見たことを淡々と記すだけ。
そんな記録の中、ひときわ大きく囲まれた名前がある。
【対象】レオンハルト=セレフィア殿下
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【結果】新婚約者の振る舞い、貴族社会で早速不評。国王陛下の眉も動く
【現状】ざまぁ発動進行中
【一言】王冠より重いのは、民の視線ですのよ
くすり、と笑いが漏れた。
その瞬間、扉がノックされた。
「クラリス嬢、失礼いたします。……第二王子殿下が、お見えです」
一瞬、ペンが止まる。
クラリスはノートをすっと閉じ、留め具を音も立てずに留めると、いつもの穏やかな顔に戻った。
「お通しして。お茶の支度もお願いいたします」
彼女は椅子から立ち上がり、ゆっくりと身なりを整えた。
静かに呼吸を整えながら、心の中でノートの最後のページを思い出す。
そこにはまだ、白紙の行がいくつも残っている。
その余白を埋めるのは、今この瞬間から始まる「新しい物語」。
──私を笑った人たちへ。
最後に笑うのは、最後まで立っていた者ですわよ?
クラリスは扉に向かって歩き出した。
そして、その先に待つ「第二王子」と「隣国」へと、運命のページが静かに開かれていくのだった。
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