鈍感宰相は寡黙な魔王様に付き従う

みけみけみっみ!

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 クレランスが逃げるように退出した流れにそって、他のメンバーもゾロゾロと退出していった後、セオドアが言った通り魔王様が私を甲斐甲斐しく介護してくださった。
 
 具体的には、消化にいいスープを食べる際ひと口ずつ口元に運んでくれたのだ。
 彼に何度も大丈夫だ、構わないと申してみても、何故かスプーンを私に無言で私の口元に突き出し、決してスプーンを手放さなかった。
 結局彼の圧に耐え切れなかった私は、最後まで食べ切った。
 
 そして今、食事を食べ終えたらタイミングよく女性獣人の医者が部屋に入室してきた。
 
 
「レンダリル王アルファス陛下。それに初めましてですね、ディオン宰相閣下殿。私は医者をしております山羊族のアログナと申します。閣下、本日は無事に回復されたこと誠におめでとうございます。」

 
 私より一回り年上のような彼女は、山羊族特有の横棒のような瞳を持ち、少し後ろに曲がった薄茶色い角がこめかみから生えていた。
 彼女はお辞儀をした後、三つ編みで一括りにした茶色く長い髪が胸元にだらーんと落ちてきたのが邪魔だったのか、手で後ろに髪を払いのけ移動させる仕草をする。

 私はベッドから立ち上がって挨拶をしようとすると、彼女と魔王様からすぐさま止められた。

「ストップ!あなたは患者さん。まだあまり動かないで下さいね。」

 私は言われた通り元いた場所に戻る。
 そしたら、魔王様が掛け布団を綺麗に掛け直してくれた。
 
 
「では、ここから失礼します。初めてまして。そして、ありがとうございます。……もしかして、貴方が今まで私を診てくださった方なのですか?」 

 
 アログナは私の質問に対し、優しく微笑む。

 
「はい。正しくは、閣下を診る医者メンバーのうちの1人ですけどね。私は閣下のご様態が回復したという知らせをききまして、こうして急いで飛んで来ました。……うふふ。私が1番早くお会いできたようですね。」

 
 アログナは1番早く来たことが嬉しかったのか、機嫌良く鼻歌を歌いながら医療道具をテーブルに置いていく。

 
「それは……大変お世話になりました。」

 
 私は素直に感謝を述べる。
 
 私なんかに数人がかりで対応してくれたのか……
 心配してくれる人がいるというのは未だに慣れませんね。
 私自身はあの時諦めていたというのに……
 皆に迷惑をかけてしまった罪悪感よりも、不意に胸の中から湧き出てきた、仲間から大事にされていた喜びよりを噛み締めてしまう。

 
「…………」
 

 魔王は、話は後でにしろ、さっさと仕事してくれ、と言わんばかりな表情でアログナをジト目で見つめる。

 
「あはは。催促されていることだし、早速診させていただきますね。」

 
 そう言いながら、彼女は私に近付いた。

 
「失礼しますねー。」
 

 彼女は私の脈を測ったり、貧血かどうか調べるため目元を観察したりした。
 そして、持参した医療魔道具を使ってさらに細かく色々と調べていく。

 しばらくして、彼女は仕事中の真剣な表情とは違って急に微笑みかけてきた。
 一通り調べ終わったのだろう。


「だいたい問題はなく、健康ですよ。長い間寝ていたためか、筋肉が多少落ちていますが、魔力を今まで以上に接種できれば元に戻ると思います。……あれだけ重体だったのに、よく頑張りましたね。」

 
 そう言って、彼女はウルッと涙を瞳に溜めて私たちには泣いていることが見えないように、そっと背を向ける。

 だが、わたしは少し気になったことがある。

 
「あの、魔力を摂取するとは?今まで以上に?魔力はどうやって摂取するのですか?……純魔石を粉砕して粉を飲む……とかですか?」


 純魔石とは、人工的に作られた魔力石とは違い魔力溜まりが発生した場所に自然とつくられる石のことだ。
 濃い魔力溜まりほど含まれる魔力と石の輝きが増す。
 だが、そういう場所には高レベルの魔物も生息しているため、石の価値は凄く、オークションでは高値が付く。
 
 もしかして、そんなものを用意させてしまったのか?
 私は少し青褪める。


「え?純魔石?違いますよー。やだ、ビックリしちゃった。でも、その発想面白いですね。今度それ研究してみようかしら……。」

 
 彼女は新しい目標ができて楽しそうにあれこれ考え事をする。

 
「違うなら、どうやって――」
 

 そのとき、ベッドの隣で大人しく椅子に座っていた魔王様が突然私の手に自身の手を重ねてきた。

 
「…………」


 その様子を見ていたアログナは思考を戻し魔王に質問する。


「……もしかして、まだお伝えしてないのですか?」

 
 それが図星だったようで、彼は視線を重ねる手の方に向ける。

 
「あぁ……」

 
 アログナは困った表情をする。

 
「えーっと、私が代わりにお伝えしますね。……いいですか?」


 すると、彼は今度は私と目を合わせないように顔を別の方に向けた。
 手はお互い重ねたままで。
 表情は角度的に見えないが、何故か耳や首が赤くなっている。
 しかも、彼の手からドキドキと心拍数が上がっているのが触れていてわかる。
 
 
「お願いする……」


 ……今から一体、何を聞かされるのだろうか……
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