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しおりを挟む「……そんな難しいお顔しなくてもいいのですよ閣下。」
あぁ……
心配させてしまいましたか。
無意識に眉間に力が入っていたみたいだ。
「そうです。肩の力を抜いて下さい。」
「…………」
「閣下自身、ゆっくりお考えになればいいと思います。」
私はアログナに視線を向ける。
「それに、魔王様は無理強いしたりしないお方だと思いますし。そうでしょう?」
「……そうだと思います。」
彼は優しいから。
「なら、今答えを探そうと慌てずとも良いのです。魔王様には更にこれからも待たせたって、さ程変わらない筈。彼の方は魔族なのですから。」
「…………」
そうはいうが……
私は俯きながら考える。
そう、魔王様は魔族……
種族が違う
私と彼の生きる時間が違う
彼が長く生きる人生の中で、私が1番とは限らないのでは?
今はそうかもしれない……
ただ魔力の相性が良いのかも知れない……
心だって、時が経つと変化するだろう
私と王太子との関係のように
だが、今後私以上の存在が現ればどうなるか……
人族の結婚とは違い、一度でも番うとニ度と解消できないらしい
それを、私にするには……彼に負担になるのでは?
私の存在が足枷に――
「ディオン宰相閣下。また、深く難しく考えておられるでしょ。」
「あはは……、つい。」
アログナは心配そうに私を見つめる。
「……不安になるようでしたら、私の方から魔王様に何かお伝えしましょうか?」
「いえ、いいです。」
そして、お互いに沈黙が流れる。
「……そうだ、私にいい考えがあります。」
「……?」
突然、彼女は持ってきた荷物の中からある物を取り出す。
それは、手のひらサイズの石だった。
「それは……魔法石ですか?」
「そうです。ただし、魔力がない空の石ですが。」
そう言いながら、彼女は石を私に手渡す。
「……もしかして。」
「そうです。この石に閣下の魔力を込めて下さいませんか?人間は我々のような相性を察知する能力を保持しておりません。あ、決して見下してないですからね!これで、魔王様との相性を閣下が直に確認すればよいのです。……ですが、今持ってるのが1つだけなので、魔王様の石は後で用意することになりますが……。」
私は空の石に自身の魔力を注ぎ込む。
すると、石が緑色に変化した。
「……でしたら、お願いがあります。この石を神殿に預けて下さいませんか?」
「……え?……もしかして、他の方と相性確認をするおつもりですか?」
「ええ。そのつもりです。」
「で、ですが、魔王様とはどうするのです?相性確認はしないのですか?」
「それは、また今度お願いしたいと思います。」
「では何故?」
「それと、今度注ぐ魔王様の魔石も神殿の方に預けて下さいませんか?」
彼女は私の瞳の中を覗くかのように、じーっと静かに私を観察する。
「……何かお考えがあるのですね。分かりました。でしたら、2つとも同時に神殿にお預けになられてはどうでしょうか?」
「いえ、早いに越したことありませんから。」
「…………」
彼女は暫く考え事をしてから話し出した。
「…………こうなるとは思ってなかったので言っていませんでしたが……お伝えしますね。……本当は魔王様がお伝えすると申していたのですが……。」
アログナは静かに語りだす。
「閣下の血は魔力で生きていけるように変化した血になりましたが、あくまで血のみ。身体はほぼそのままなのですよ。今のお身体は以前と違い、体内を循環している豊富な魔力が失くなる……つまり、魔法を使用し急激に魔力を失うとなる[魔力欠乏症]を発症しやすいお身体になりました。最悪死にます。」
……それは尚更番う相手が私では、魔王様にとって厄介ではないか。
「血液内の魔力を減らすことは?少しずつでも。」
「いえ……難しいでしょう。閣下のお身体は1度死にかけたからなのか、魔力を保持する器が欠けた状態になってしまわれました。今は魔王様の魔力の力技で欠けた部位を補っているような状況です。器を治すなら人種を変えるぐらいの変化がないと……。人族のままでしたら食事はもちろんのこと、これからは毎週最低でも1度魔力をある程度は摂取しなければなりません。」
そんな……
それは困る
彼には迷惑をかけたくない
「……自力でどうにかします。」
「一応お伝えしますが、提供者は魔王様のほうがお身体に馴染みがいいです。今までそうでしたから。」
そうと彼女は言ってるが、そんな高頻度は彼の負担でしかない。
私は彼のお荷物にはなりたくはない。
今までそう努力したのだから。
「他の魔力の相性がいい相手を探します……。できれば領地内で発見できたらよいのですが……。最悪他国でも構いません。相手には悪いですが、こちらに来てもらい私と同棲してもらうようお願いしたいと思います。」
彼の負担となるぐらいなら……
そのまま、同棲した相手と番えばいい。
「っつ」
何故か胸がズキっとした。
確認のため、痛みがあった自身の心臓のあたりを触ってみる。
所詮、事故の後遺症だろう。
「……そこまでして、彼の方から離れたいのですか?」
アログナは今にも泣きそうな顔で言う。
何故なのだろう……
「ええ……、そうですね。」
「考え直すことは……」
「今のところ、ないですね。」
すると悲しそうな彼女が何かを決心したのか、突然やる気に満ちた表情をした。
「…………そうですか、ではこの石は神殿の方にお届けしますね。今度の診察では、2人分の石も持ってまいります。」
「はい、お願いします。」
「……くれぐれも深く考えすぎないで下さいませ。」
そう言いながら、彼女は机の上に広げた荷物をバックにしまい立ち上がる。
そして、扉の前で立ち止まって後ろを振り向く。
「では、お大事に……。」
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