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第5話 メイン4人、始動!
第5話・4 メイン4人、遊ぶ!
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休日の、きらきらとした時間がゆっくりと動き出していた。
4人が立ち寄ったのは、若者向けのセレクトショップ。
カジュアルな服から上品なワンピース、男性向けのシャツやアウターまでが整然と並ぶフロアに、ラショウの目が輝く。
「わぁ……可愛いのたくさんある……」
ラックに手を伸ばし、ひとつひとつ素材やデザインを確かめるように見ている。
アシュラも無造作にジャケットを手に取り、値札を一瞥したあと、レイラの方へ振り返った。
「レイラ、欲しいものあったら遠慮無く言っていいんだからな」
優しい笑顔。
それを見て、レイラは思わず立ち止まる。
「えっ……あ、うん……でも、まだ何が似合うのかとか、よくわからなくて……」
「そっか。だったら……一緒に選ぼうか。今日は皆で楽しむ日なんだから」
アシュラのまっすぐな声に、レイラは小さく頷いた。
「……ありがとう。アシュ」
「ふふ、こちらこそ」
リルは店の奥でフード付きの黒パーカーを手に取っている。
「お前、いつもそんなのばっかだな」
と、アシュラが笑いながら声をかけると、リルは少しだけ口元を歪めた。
「落ち着くんだよ。……黒ってさ」
「それはそれで、リルくんらしいかも」
ラショウがそっとフォローを入れ、レイラも「うん、似合ってると思う」と笑った。
──賑やかで、優しい時間。
「じゃあ、ちょっと試着してみるね」
ラショウが両手に数着のワンピースやブラウスを抱えて試着室へ向かう。
「レイラこれどう? 似合いそうだぞ」
アシュラが手にしたのは、シンプルで落ち着いた色合いのパーカーと、シルエットの細いジーンズ。
「えっ……う、うん。着てみようかな」
レイラがドキドキしながら試着室に入っていく。
一方その頃──。
リルは店内の片隅で、やたらと主張の強いサングラスや謎のアニマル柄パーカーが陳列されたバラエティコーナーに迷い込んでいた。
「……何だこれ……」
豹柄の帽子、キラキラしたサングラス、そして『男前強化セット』と書かれたパッケージ。
「おい、リル、何して──」
リルの手元を見て、アシュラが吹き出す。
「ぶっ……それは似合わねえって」
「うっせぇ」
しかしリルはそのままサングラスをかけて振り向き──。
「どう?」
と一言。
「ふふ……似合ってると言えば似合ってるけど……」
「あははっ、リルくんそれ可愛い!」
ラショウが笑いながら戻ってきて、着替え終わったレイラも笑ってしまう。
「リル、それ……めちゃくちゃ怪しい人みたい」
「……オレは静かに服選びたいだけなんだが……」
サングラスを外しながら、リルは心底面倒くさそうに呟いた。
──だが、そんなやり取りすらも、どこかあたたかくて。
4人の笑い声が、フロアに溶け込んでいくのだった。
◇
買い物をひと通り終えた4人は、フードコートに移動した。
広々とした空間には様々なジャンルの店舗が並び、どこからともなく美味しそうな香りが漂ってくる。
「……どこも美味そうだな……どれにしよう」
アシュラが目を細めて見渡す。
「ね、迷っちゃうよね」
メニューを見比べながら、ふふっと笑うラショウ。
「オレは……やっぱ、肉」
リルは迷い無くステーキ丼の看板へ視線を向けていた。
「……昨日あんなに食べたのに……?」
レイラが呆れ気味に言うと、「昨日は昨日」と当然のように返される。
そしてそのレイラはメニューを見ながら「うーん……オムライスかな……でもラーメンも捨てがたい……」と本気で悩んでいた。アシュラが「どっちも頼めば?」と笑う。
「食べきれないってば!」
そんなやり取りをしつつ、それぞれ好きなものを注文して、4人は窓際の席に並んで座った。
トレーの上には、オムライス、パスタ、ステーキ丼、うどん、ドリンク、ポテト……にぎやかで食欲をそそるラインナップが揃っている。
「いただきまーす」
4人の声が重なって、箸が、フォークが動き出す。賑やかなフードコートの片隅で、ひとときの休息。
◇
食後に立ち寄ったのは、モール内にある大規模なゲームセンター。
煌びやかな照明、電子音、クレーンゲームの中に揺れるぬいぐるみたち。
入口すぐには、派手なプリクラコーナーが並んでいた。
「プリクラ! 皆で撮ろうよ!」
ラショウが声を上げ、振り返る。
「プリクラ……なんて、撮ったことない……恥ずかしいかも……」
そう言いながらも、レイラの目は明らかにキラキラしていた。
「オレ、写真とか嫌なんだけど」
リルは渋い顔をするが、有無を言わさず隣からアシュラが肩を抱くようにして連れ込んでいく。
「いいからいいから。こういうのは勢いだ」
「ちょっ……やめ──」
──シャッター、パシャ。
暫くして出来上がったシール紙を確認した4人。
「……ぶっ……、あっはははははは!!」
アシュラが腹を抱えて笑い転げる。
そこに映っていたのは、まるで別人のような顔のリル。
メイクばっちり、目は星のようにキラキラ、唇はぷるぷるの桜色。
プリクラのあの過剰な加工の一番の餌食になっていた。
「アハっ……くくく……っ、無理無理無理……!! ぁはははははッ……!!!」
手を叩いて大笑い。
そこには『美形で気高い当主様』の姿は無く、『友達の加工された顔を見て涙流して笑う様子のおかしい美形』の姿だけがあった。
「オレの顔で笑うなよ……」
頭を抱えるリル。
「でも、面白かったね」
ラショウが笑って、レイラもこくこくと頷いた。
「……すごかった……これはこれで、記念に……」
◇
奥に進むと、巨大なクレーンゲームの並ぶエリアに。
狙うは、同じシリーズで展開された、色違いが可愛い動物マスコット。
「ここに引っ掛けられそうな隙間が……」
「この重心……こっちから狙うべき」
「待って、アームの開き、角度が……」
「動きに癖がある……タイミングはこの辺か……」
真剣な表情で、誰よりも集中していた4人は、まさに戦士の顔つき。
ひとつ、またひとつ。
4人で色違いのぬいぐるみを無事に獲得すると、レイラは目を細めて喜びを顕にした。
「可愛い……! 大切にする……!」
ラショウも「お揃い、嬉しいな」と微笑む。
リルは「ま、こういうのも悪くねぇか」と呟きながら自分の景品をそっと鞄にしまった。
──束の間の日常は、きらめく光のなかに溶けていった。
クレーンゲームの熱気がようやく収まり、4人は軽く休憩することに。
「ちょっと、煙草吸ってくる」
リルがポケットに手を突っ込みながら喫煙所へと向かう。
ラショウは少し入り組んだ通路を見て「ひとりで大丈夫?」と声をかけるが、リルは手を軽く振るだけで歩き去っていった。
──そして喫煙所。
ガラス張りのスペースに入り、リルが煙草を取り出した──その時だった。
「……おう。奇遇だな」
耳に入ったのは嫌というほど聞き慣れた、怠そうな声。
リルが「えっ?」と振り返ると、そこには同じく煙草を口に咥えたセセラの姿。
「ぅわ……! マジか……なんでいるんだよ」
「こっちの台詞だ」
「……偶然ってこえーな……つーか、プライベートでまで顔合わせたくねぇんだけど」
「はっ、そう言うなよ。俺も今日はたまたまこっちに来てただけだ」
「……ラルトさんと?」
「……な、……バカ言うんじゃねえ」
リルが煙草に火を点ける横で、気まずそうにセセラも煙をふっと吐き出す。
「……で、リルは誰と来てんだ」
「アシュラたちと」
「……あぁ」
一瞬、沈黙。
「……なあゲーセンあったろ、プリクラとか撮れば?」
「…………もう撮った」
茶化したつもりのセセラだったが、リルのその無愛想な返答の瞬間──。
「ぎゃはははははは!!」
広くない喫煙所に響く、炸裂したような笑い声。
「え~マジ!? お前が!? なあどんくらい加工された!? ぶフフフッ」
「…………」
リルは顔を顰めたまま睨むが、セセラの笑いはしばらく止まらなかった。
「はー、はー……、今度見せろ。絶対だぞ」
「ぜってぇ見せねぇ……」
──そんなやり取りをしていると。
「……おや? ……リル?」
透明なガラス越しに、見覚えのある幼い少女の姿──シエリ。
プライベートな所長の登場に、ふたりは喫煙所から退室する。
「……シエリ先生までいるのかよ」
セセラとシエリは、どうやら施設の用事で近くまで来ていたらしい。
「フフフ、本当に偶然だね」
シエリはリルの前で、小さな手を腰に当てながら笑う。
「珍しく、息抜きってやつさ」
「シエリ先生もそんなことするんだな……」
リルが少し驚いたように呟くと、隣でセセラは口角を上げた。
「たまには必要だろ。先生だって、たまにはアイス食って笑ったりすんだ」
「……それは知らなかった」
「で? お前ら何してたんだ?」
「……アシュラたちと買い物。今は皆近くで待ってる」
「そりゃまた仲がよろしいですこと」
「レイラも一緒かな?」
シエリが聞くと、リルは小さく頷く。
「ああ。……あいつ、こういうとこ初めてらしい」
「フフッ、じゃあ楽しんでいるだろうね」
その様子に目を細めたシエリが「じゃあ、もう行きなさいな」と手を振る。
「施設に戻ったら報告してもらおうかな?」
「……はいはい」
◇
喫煙所から出て皆と合流するリル。4人のもとに戻ってきたその顔に、アシュラが尋ねた。
「お、早かったな。誰かいた?」
「……いや、まぁ……」
レイラが「おかえり」と笑顔を向けると、リルは一瞬目をそらし「……ああ」とだけ返した。
「じゃあ……そろそろ、分かれて行動しない?」
ラショウの提案に、アシュラも頷く。
「いいな。それぞれ見たい店も違うだろうし」
「じゃ、女子チームは私とレイラちゃん。男子はリルくんと兄様ね」
「……マジか」
リルはややげんなりした顔をしたが、もう決定事項のように皆は動き出していた。
──こうして、ショッピングモールの休日は後半戦に突入していく。
◇
「レイラちゃん、何か気になるお店ある?」
歩きながら、レイラに優しい声で問いかけるラショウ。
「うーん……見た目だけでも可愛いお店とか、入ってみたいかも」
「ふふ、じゃあこっち、アクセサリーとか雑貨のお店が並んでるよ」
ふたりは腕を組むように並んで歩き、ファンシーな色合いの明るい店舗へと足を踏み入れる。
小さなヘアピンや動物型のポーチ、香り付きの文具やカラフルな雑貨が所狭しと並んでいる空間。
「わ……可愛い……」
レイラの頬がゆるむ。
「これとか似合いそう。あ、こっちは?」
ラショウは楽しそうにレイラに小物を当てては、鏡の前であれこれ試してくれる。
「……こんな風に誰かと買い物するの、初めてかもしれない」
レイラが少し照れくさそうに呟くと、ラショウはふんわりと微笑んだ。
「嬉しいな。レイラちゃんと一緒にいられるの、私も楽しいよ」
「うん……ありがとう。ラショウ」
ほんの短いやり取りなのに、心がじんわりあたたまる。
──その後もふたりは服やコスメ、ぬいぐるみなどを見て回りながら、時折笑い声を交わしていた。
人混みの中、それでもまるで世界にふたりしかいないような──。
そんな穏やかで特別な時間が、ゆっくりと流れていった。
──その一方、リルとアシュラ。
「……で、どこ行くの」
リルが気怠げに問いかける。
「とりあえず服でも覗いてみるか。お前、最近服選んでないだろ」
「また服屋? 別に、困ってねえよ」
「まあまあ。せっかくなんだから、たまには楽しもうぜ」
アシュラの朗らかなトーンに、リルは何も言わずに肩をすくめた。
ふたりはメンズファッションが揃うフロアへと足を運ぶ。
「お前、最近着てるの黒ばっかだな」
「落ち着くんだよ。……って、何回言わせんだ」
「だったら、黒でも素材とか形で変化つけてみるのもアリだろ?」
そう言って、アシュラはリルに向かって黒のジャケットを差し出す。
「……あ? ……まぁ、悪くねえかも」
素直じゃないリルの反応に、アシュラは笑った。
「なに笑ってんだ」
「いや、お前がちゃんと悩んでるのが新鮮で」
「……うるせ」
並んで歩きながら、時折無言になり、またぽつりぽつりと会話が続く。
──沈黙が気まずくならないのは、長年の付き合いの証。
リルがふと、小物雑貨のコーナーでキーホルダーに目を止めた。
「これ、ラショウ好きそう」
「お。じゃあ買ってやれば?」
「……いや、別に、そういうんじゃ……」
「あっ、じゃあ俺が買って渡しとくわ」
「おい……!」
アシュラはニヤリと笑いながらレジに向かう。
「ったく……」
リルは小さくため息をつきながらも、どこか安心したようにその背中を見ていた。
彼らの時間もまた、静かで、確かな絆が感じられるひとときだった。
◇
そしてレイラとラショウ。
雑貨屋を出たところで、ふたりはひと息ついていた。
「ね、さっきのお店、また今度も行こうね」
「うん、ぜひ……」
と、その時。
「ねぇねぇ、そこのキミたち、今ヒマしてる?」
突如、ラフな服装の屈強な男グループがふたりの前に現れた。
──ナンパだ。展開としては、ベタすぎる。
「可愛いじゃん。俺らとさ、ちょっと外でお茶でもしようよ?」
「えっ……?」
目を丸くするレイラ。突然の出来事に戸惑いを隠せない。
「ごめんなさい、私たち一緒に来ている人がいますので……」
ラショウは微笑を浮かべつつ、慣れた様子で丁寧に断ろうとする。
だが──。
「いいじゃんいいじゃん、ちょっとくらいさ。ね?」
「つか可愛くね? 俺らのこと悪くないっしょ?」
あからさまに距離を詰めてくる男たち。
「やっ、ちょっと──!」
レイラの腕が強引に引かれる。
「すみません、それは困ります……っ」
ラショウの声が低くなるが、男たちは聞く耳を持たない。
──その瞬間。
「おい」
鋭い声が背後から飛んできた。
その声の主──リルが歩いてきて、男たちの腕をパシンと弾く。
「ッ……な、なんだよテメェ」
「……マジでやめとけよ」
リルの目は細く光り、低く唸るような声音。
そしてその横から、アシュラがゆっくり歩いて現れた。
「何か問題でも?」
その微笑と完璧すぎる顔立ちに、男たちは一瞬言葉を失う。
「ちっ……なんだよ、行こうぜ」
舌打ちと共に、男たちはその場から去っていった。
「……大丈夫だった? 怖かったな」
アシュラはレイラに優しく声をかける。
「う、うん……ちょっと、びっくりしただけ……」
「わりぃ、遅れた」
リルが短く謝ると、ラショウはふっと微笑んだ。
「ありがとう、ふたりとも。すごく……かっこよかった」
──空気が少しだけ張り詰め、そして静かに、再び日常へと戻っていく。
ナンパ騒動も落ち着き、4人は連れ立ってショッピングモールの出入口へと歩いていた。
夕焼けが窓ガラスに滲み、オレンジ色の光が長く4人の影を伸ばしていく。
「今日は、色んなことがあったね」
ラショウがそう呟くと、誰もが無言で頷いた。
「……楽しかったけど、なんか、ちょっとドキドキしっぱなしだった」
レイラは満足気な表情で、小さく答える。
「だな。騒がしい日だった」
ぼそっと返すリル。だが、その口調はどこか柔らかかった。
「でも──」
アシュラはふと立ち止まり、振り返る。
「こうやって、4人で普通に一日を過ごすのって……案外、すごく貴重な時間だった気がする」
「……うん」
レイラは目を細め、静かに頷いた。
「また行こうね。次はどこがいいかな」
ラショウが微笑むと、リルは苦笑しながらも「……もうちょい落ち着いたとこがいい」と返す。
「それでも、来るんだろ?」
アシュラのからかい混じりの声に、リルは無言で手をポケットに突っ込み、歩き出した。
──そうして4人の影が並ぶ。
温かな余韻を残したまま、夕暮れの街を背に、静かに駐車場へと向かうのだった。
第5話 完
4人が立ち寄ったのは、若者向けのセレクトショップ。
カジュアルな服から上品なワンピース、男性向けのシャツやアウターまでが整然と並ぶフロアに、ラショウの目が輝く。
「わぁ……可愛いのたくさんある……」
ラックに手を伸ばし、ひとつひとつ素材やデザインを確かめるように見ている。
アシュラも無造作にジャケットを手に取り、値札を一瞥したあと、レイラの方へ振り返った。
「レイラ、欲しいものあったら遠慮無く言っていいんだからな」
優しい笑顔。
それを見て、レイラは思わず立ち止まる。
「えっ……あ、うん……でも、まだ何が似合うのかとか、よくわからなくて……」
「そっか。だったら……一緒に選ぼうか。今日は皆で楽しむ日なんだから」
アシュラのまっすぐな声に、レイラは小さく頷いた。
「……ありがとう。アシュ」
「ふふ、こちらこそ」
リルは店の奥でフード付きの黒パーカーを手に取っている。
「お前、いつもそんなのばっかだな」
と、アシュラが笑いながら声をかけると、リルは少しだけ口元を歪めた。
「落ち着くんだよ。……黒ってさ」
「それはそれで、リルくんらしいかも」
ラショウがそっとフォローを入れ、レイラも「うん、似合ってると思う」と笑った。
──賑やかで、優しい時間。
「じゃあ、ちょっと試着してみるね」
ラショウが両手に数着のワンピースやブラウスを抱えて試着室へ向かう。
「レイラこれどう? 似合いそうだぞ」
アシュラが手にしたのは、シンプルで落ち着いた色合いのパーカーと、シルエットの細いジーンズ。
「えっ……う、うん。着てみようかな」
レイラがドキドキしながら試着室に入っていく。
一方その頃──。
リルは店内の片隅で、やたらと主張の強いサングラスや謎のアニマル柄パーカーが陳列されたバラエティコーナーに迷い込んでいた。
「……何だこれ……」
豹柄の帽子、キラキラしたサングラス、そして『男前強化セット』と書かれたパッケージ。
「おい、リル、何して──」
リルの手元を見て、アシュラが吹き出す。
「ぶっ……それは似合わねえって」
「うっせぇ」
しかしリルはそのままサングラスをかけて振り向き──。
「どう?」
と一言。
「ふふ……似合ってると言えば似合ってるけど……」
「あははっ、リルくんそれ可愛い!」
ラショウが笑いながら戻ってきて、着替え終わったレイラも笑ってしまう。
「リル、それ……めちゃくちゃ怪しい人みたい」
「……オレは静かに服選びたいだけなんだが……」
サングラスを外しながら、リルは心底面倒くさそうに呟いた。
──だが、そんなやり取りすらも、どこかあたたかくて。
4人の笑い声が、フロアに溶け込んでいくのだった。
◇
買い物をひと通り終えた4人は、フードコートに移動した。
広々とした空間には様々なジャンルの店舗が並び、どこからともなく美味しそうな香りが漂ってくる。
「……どこも美味そうだな……どれにしよう」
アシュラが目を細めて見渡す。
「ね、迷っちゃうよね」
メニューを見比べながら、ふふっと笑うラショウ。
「オレは……やっぱ、肉」
リルは迷い無くステーキ丼の看板へ視線を向けていた。
「……昨日あんなに食べたのに……?」
レイラが呆れ気味に言うと、「昨日は昨日」と当然のように返される。
そしてそのレイラはメニューを見ながら「うーん……オムライスかな……でもラーメンも捨てがたい……」と本気で悩んでいた。アシュラが「どっちも頼めば?」と笑う。
「食べきれないってば!」
そんなやり取りをしつつ、それぞれ好きなものを注文して、4人は窓際の席に並んで座った。
トレーの上には、オムライス、パスタ、ステーキ丼、うどん、ドリンク、ポテト……にぎやかで食欲をそそるラインナップが揃っている。
「いただきまーす」
4人の声が重なって、箸が、フォークが動き出す。賑やかなフードコートの片隅で、ひとときの休息。
◇
食後に立ち寄ったのは、モール内にある大規模なゲームセンター。
煌びやかな照明、電子音、クレーンゲームの中に揺れるぬいぐるみたち。
入口すぐには、派手なプリクラコーナーが並んでいた。
「プリクラ! 皆で撮ろうよ!」
ラショウが声を上げ、振り返る。
「プリクラ……なんて、撮ったことない……恥ずかしいかも……」
そう言いながらも、レイラの目は明らかにキラキラしていた。
「オレ、写真とか嫌なんだけど」
リルは渋い顔をするが、有無を言わさず隣からアシュラが肩を抱くようにして連れ込んでいく。
「いいからいいから。こういうのは勢いだ」
「ちょっ……やめ──」
──シャッター、パシャ。
暫くして出来上がったシール紙を確認した4人。
「……ぶっ……、あっはははははは!!」
アシュラが腹を抱えて笑い転げる。
そこに映っていたのは、まるで別人のような顔のリル。
メイクばっちり、目は星のようにキラキラ、唇はぷるぷるの桜色。
プリクラのあの過剰な加工の一番の餌食になっていた。
「アハっ……くくく……っ、無理無理無理……!! ぁはははははッ……!!!」
手を叩いて大笑い。
そこには『美形で気高い当主様』の姿は無く、『友達の加工された顔を見て涙流して笑う様子のおかしい美形』の姿だけがあった。
「オレの顔で笑うなよ……」
頭を抱えるリル。
「でも、面白かったね」
ラショウが笑って、レイラもこくこくと頷いた。
「……すごかった……これはこれで、記念に……」
◇
奥に進むと、巨大なクレーンゲームの並ぶエリアに。
狙うは、同じシリーズで展開された、色違いが可愛い動物マスコット。
「ここに引っ掛けられそうな隙間が……」
「この重心……こっちから狙うべき」
「待って、アームの開き、角度が……」
「動きに癖がある……タイミングはこの辺か……」
真剣な表情で、誰よりも集中していた4人は、まさに戦士の顔つき。
ひとつ、またひとつ。
4人で色違いのぬいぐるみを無事に獲得すると、レイラは目を細めて喜びを顕にした。
「可愛い……! 大切にする……!」
ラショウも「お揃い、嬉しいな」と微笑む。
リルは「ま、こういうのも悪くねぇか」と呟きながら自分の景品をそっと鞄にしまった。
──束の間の日常は、きらめく光のなかに溶けていった。
クレーンゲームの熱気がようやく収まり、4人は軽く休憩することに。
「ちょっと、煙草吸ってくる」
リルがポケットに手を突っ込みながら喫煙所へと向かう。
ラショウは少し入り組んだ通路を見て「ひとりで大丈夫?」と声をかけるが、リルは手を軽く振るだけで歩き去っていった。
──そして喫煙所。
ガラス張りのスペースに入り、リルが煙草を取り出した──その時だった。
「……おう。奇遇だな」
耳に入ったのは嫌というほど聞き慣れた、怠そうな声。
リルが「えっ?」と振り返ると、そこには同じく煙草を口に咥えたセセラの姿。
「ぅわ……! マジか……なんでいるんだよ」
「こっちの台詞だ」
「……偶然ってこえーな……つーか、プライベートでまで顔合わせたくねぇんだけど」
「はっ、そう言うなよ。俺も今日はたまたまこっちに来てただけだ」
「……ラルトさんと?」
「……な、……バカ言うんじゃねえ」
リルが煙草に火を点ける横で、気まずそうにセセラも煙をふっと吐き出す。
「……で、リルは誰と来てんだ」
「アシュラたちと」
「……あぁ」
一瞬、沈黙。
「……なあゲーセンあったろ、プリクラとか撮れば?」
「…………もう撮った」
茶化したつもりのセセラだったが、リルのその無愛想な返答の瞬間──。
「ぎゃはははははは!!」
広くない喫煙所に響く、炸裂したような笑い声。
「え~マジ!? お前が!? なあどんくらい加工された!? ぶフフフッ」
「…………」
リルは顔を顰めたまま睨むが、セセラの笑いはしばらく止まらなかった。
「はー、はー……、今度見せろ。絶対だぞ」
「ぜってぇ見せねぇ……」
──そんなやり取りをしていると。
「……おや? ……リル?」
透明なガラス越しに、見覚えのある幼い少女の姿──シエリ。
プライベートな所長の登場に、ふたりは喫煙所から退室する。
「……シエリ先生までいるのかよ」
セセラとシエリは、どうやら施設の用事で近くまで来ていたらしい。
「フフフ、本当に偶然だね」
シエリはリルの前で、小さな手を腰に当てながら笑う。
「珍しく、息抜きってやつさ」
「シエリ先生もそんなことするんだな……」
リルが少し驚いたように呟くと、隣でセセラは口角を上げた。
「たまには必要だろ。先生だって、たまにはアイス食って笑ったりすんだ」
「……それは知らなかった」
「で? お前ら何してたんだ?」
「……アシュラたちと買い物。今は皆近くで待ってる」
「そりゃまた仲がよろしいですこと」
「レイラも一緒かな?」
シエリが聞くと、リルは小さく頷く。
「ああ。……あいつ、こういうとこ初めてらしい」
「フフッ、じゃあ楽しんでいるだろうね」
その様子に目を細めたシエリが「じゃあ、もう行きなさいな」と手を振る。
「施設に戻ったら報告してもらおうかな?」
「……はいはい」
◇
喫煙所から出て皆と合流するリル。4人のもとに戻ってきたその顔に、アシュラが尋ねた。
「お、早かったな。誰かいた?」
「……いや、まぁ……」
レイラが「おかえり」と笑顔を向けると、リルは一瞬目をそらし「……ああ」とだけ返した。
「じゃあ……そろそろ、分かれて行動しない?」
ラショウの提案に、アシュラも頷く。
「いいな。それぞれ見たい店も違うだろうし」
「じゃ、女子チームは私とレイラちゃん。男子はリルくんと兄様ね」
「……マジか」
リルはややげんなりした顔をしたが、もう決定事項のように皆は動き出していた。
──こうして、ショッピングモールの休日は後半戦に突入していく。
◇
「レイラちゃん、何か気になるお店ある?」
歩きながら、レイラに優しい声で問いかけるラショウ。
「うーん……見た目だけでも可愛いお店とか、入ってみたいかも」
「ふふ、じゃあこっち、アクセサリーとか雑貨のお店が並んでるよ」
ふたりは腕を組むように並んで歩き、ファンシーな色合いの明るい店舗へと足を踏み入れる。
小さなヘアピンや動物型のポーチ、香り付きの文具やカラフルな雑貨が所狭しと並んでいる空間。
「わ……可愛い……」
レイラの頬がゆるむ。
「これとか似合いそう。あ、こっちは?」
ラショウは楽しそうにレイラに小物を当てては、鏡の前であれこれ試してくれる。
「……こんな風に誰かと買い物するの、初めてかもしれない」
レイラが少し照れくさそうに呟くと、ラショウはふんわりと微笑んだ。
「嬉しいな。レイラちゃんと一緒にいられるの、私も楽しいよ」
「うん……ありがとう。ラショウ」
ほんの短いやり取りなのに、心がじんわりあたたまる。
──その後もふたりは服やコスメ、ぬいぐるみなどを見て回りながら、時折笑い声を交わしていた。
人混みの中、それでもまるで世界にふたりしかいないような──。
そんな穏やかで特別な時間が、ゆっくりと流れていった。
──その一方、リルとアシュラ。
「……で、どこ行くの」
リルが気怠げに問いかける。
「とりあえず服でも覗いてみるか。お前、最近服選んでないだろ」
「また服屋? 別に、困ってねえよ」
「まあまあ。せっかくなんだから、たまには楽しもうぜ」
アシュラの朗らかなトーンに、リルは何も言わずに肩をすくめた。
ふたりはメンズファッションが揃うフロアへと足を運ぶ。
「お前、最近着てるの黒ばっかだな」
「落ち着くんだよ。……って、何回言わせんだ」
「だったら、黒でも素材とか形で変化つけてみるのもアリだろ?」
そう言って、アシュラはリルに向かって黒のジャケットを差し出す。
「……あ? ……まぁ、悪くねえかも」
素直じゃないリルの反応に、アシュラは笑った。
「なに笑ってんだ」
「いや、お前がちゃんと悩んでるのが新鮮で」
「……うるせ」
並んで歩きながら、時折無言になり、またぽつりぽつりと会話が続く。
──沈黙が気まずくならないのは、長年の付き合いの証。
リルがふと、小物雑貨のコーナーでキーホルダーに目を止めた。
「これ、ラショウ好きそう」
「お。じゃあ買ってやれば?」
「……いや、別に、そういうんじゃ……」
「あっ、じゃあ俺が買って渡しとくわ」
「おい……!」
アシュラはニヤリと笑いながらレジに向かう。
「ったく……」
リルは小さくため息をつきながらも、どこか安心したようにその背中を見ていた。
彼らの時間もまた、静かで、確かな絆が感じられるひとときだった。
◇
そしてレイラとラショウ。
雑貨屋を出たところで、ふたりはひと息ついていた。
「ね、さっきのお店、また今度も行こうね」
「うん、ぜひ……」
と、その時。
「ねぇねぇ、そこのキミたち、今ヒマしてる?」
突如、ラフな服装の屈強な男グループがふたりの前に現れた。
──ナンパだ。展開としては、ベタすぎる。
「可愛いじゃん。俺らとさ、ちょっと外でお茶でもしようよ?」
「えっ……?」
目を丸くするレイラ。突然の出来事に戸惑いを隠せない。
「ごめんなさい、私たち一緒に来ている人がいますので……」
ラショウは微笑を浮かべつつ、慣れた様子で丁寧に断ろうとする。
だが──。
「いいじゃんいいじゃん、ちょっとくらいさ。ね?」
「つか可愛くね? 俺らのこと悪くないっしょ?」
あからさまに距離を詰めてくる男たち。
「やっ、ちょっと──!」
レイラの腕が強引に引かれる。
「すみません、それは困ります……っ」
ラショウの声が低くなるが、男たちは聞く耳を持たない。
──その瞬間。
「おい」
鋭い声が背後から飛んできた。
その声の主──リルが歩いてきて、男たちの腕をパシンと弾く。
「ッ……な、なんだよテメェ」
「……マジでやめとけよ」
リルの目は細く光り、低く唸るような声音。
そしてその横から、アシュラがゆっくり歩いて現れた。
「何か問題でも?」
その微笑と完璧すぎる顔立ちに、男たちは一瞬言葉を失う。
「ちっ……なんだよ、行こうぜ」
舌打ちと共に、男たちはその場から去っていった。
「……大丈夫だった? 怖かったな」
アシュラはレイラに優しく声をかける。
「う、うん……ちょっと、びっくりしただけ……」
「わりぃ、遅れた」
リルが短く謝ると、ラショウはふっと微笑んだ。
「ありがとう、ふたりとも。すごく……かっこよかった」
──空気が少しだけ張り詰め、そして静かに、再び日常へと戻っていく。
ナンパ騒動も落ち着き、4人は連れ立ってショッピングモールの出入口へと歩いていた。
夕焼けが窓ガラスに滲み、オレンジ色の光が長く4人の影を伸ばしていく。
「今日は、色んなことがあったね」
ラショウがそう呟くと、誰もが無言で頷いた。
「……楽しかったけど、なんか、ちょっとドキドキしっぱなしだった」
レイラは満足気な表情で、小さく答える。
「だな。騒がしい日だった」
ぼそっと返すリル。だが、その口調はどこか柔らかかった。
「でも──」
アシュラはふと立ち止まり、振り返る。
「こうやって、4人で普通に一日を過ごすのって……案外、すごく貴重な時間だった気がする」
「……うん」
レイラは目を細め、静かに頷いた。
「また行こうね。次はどこがいいかな」
ラショウが微笑むと、リルは苦笑しながらも「……もうちょい落ち着いたとこがいい」と返す。
「それでも、来るんだろ?」
アシュラのからかい混じりの声に、リルは無言で手をポケットに突っ込み、歩き出した。
──そうして4人の影が並ぶ。
温かな余韻を残したまま、夕暮れの街を背に、静かに駐車場へと向かうのだった。
第5話 完
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